春の海
3月最後の週末。
朝の空を見上げる。
真っ白な雲と青い春の空のコントラストが心に沁みる。
空が青い、それだけ、幸せを感じる。

ご近所スーパーの魚売り場にも春が届いていた。
きらきら輝く鱗が活きの良さを物語っている。
北海道産の鰊だ。
そうだ、春告げ魚だ。

そのまま塩焼きできるように頭とお腹は処理されていて、価格もお手頃、魚屋さん、ありがとう。
背に少し切り目を入れて、沖縄のおいしい塩を振り、グリルへ。
最新のガスコンロは専用の蓋つきココット容器でそれはきれいにお魚が焼けるのよね。
賢い魚焼きグリルにも、ありがとう。
こんがり、ふっくら焼けた旬の鰊の塩焼き。
熱々を味わうのに夢中で、写真を撮るのも忘れていた(笑)
気がつけば、夫のお皿も私のお皿も、それが見事な骨格標本だけが残されていた。
ことほどさように、春の鰊は格別です。
春、産卵のために北海道沿岸にやってくる鰊。
かつては100万トン近くの漁獲量があり、鰊で財を成した「鰊御殿」が立ち並ぶほどの賑わいでした。
昭和30年以降、ぱたりと姿が消え、幻の魚となりつつありましたが、稚魚放流などの取り組みが続けられ、
徐々に水揚げ量が回復、この時季になると魚屋さんの店先でコンスタントに見かけるようになりました。
春を告げる魚が、ちゃんとこの季節に姿を見せてくれた。
毎年、鰊を見かけると、ぱたりと獲れなくなった長い空白期間の記憶があるだけに、本当にほっとします。
さらに、今年の春は、格別にその思いを強く感じるのです。
だって、物価高が、止まらない。
「値上げ連鎖 警戒」という朝刊の見出しに深くうなづく朝。
イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けて原油などの供給不安が北海道に大きな影を落としています。
農業の現場で農機具の燃料、肥料、包装資材とどれもが中東情勢と密接に結びつき、じわじわコスト高が続く。
軽油、ガソリン価格が跳ね上がる物流の影響は深刻、小売業界も仕入れ値、包装資材の上昇が価格に響く。
生産地、輸送、小売りで積みあがったコストは商品の値札に現れ、消費者にのしかかる。
長く続く物価高、買い物も工夫して選んでいるつもりですが、
それでも、最近は特にレジでの合計金額に、ほんとにびっくり驚くことが多い。
イラン情勢を受けてとうとう1ドル160円突破のニュースに、お買い物するのは怖くなるほどだ。
あらゆるモノを輸入に頼る日本、原油高騰は暮らしの根幹を揺さぶる。
だからこそ、春、北海道の海までやってきてくれた旬の魚を味わえることは、
とんでもなく幸せなことなんだとしみじみ思った。
北海道の近くの海で水揚げされた旬の魚が食卓に上ることに心から感謝した。
春告げ魚がやってきた、春の海を思う。
春告げ魚も、春の海も、春の季語だ。
冬の荒々しさが去り、日差しの中でのどかに波打つ「春の海」。
与謝蕪村のあの一句を思いだす。
「春の海終日のたりのたりかな」
心はね、のたりのたりと、おおらかでいたい春なのだった。

