二十四の季節

2026年1月2日の朝です。
札幌は真っ白な雪景色、白い花が天上から降り続けています。
今年は午年、白馬が天を駆けているのでしょうか。
お正月には「白」がよく似合います。


「ゆり根の甘煮いくら添え」
お正月の食卓のスターターを飾りました。
白いゆり根といくらの赤、紅白がおめでたい祝い膳に花を添えてくれます。
伝統的な和食のおせちもカクテルグラスに盛り付けるとまた趣がかわりますね。

年末に長沼町の農家さんからそれは立派なゆり根が送られてきましたので、
敬意を表して主役級の一品に仕立ててみました。
丁寧に一片ずつはがして、昆布と鰹節の一番だしに、酒、味醂、少々の醤油と三温糖を加え
紙蓋をして崩れないように弱火で煮含めました。

冷めたらカクテルグラスに盛り付けていくらをトッピング。
デリケートなゆり根の甘煮は小さなスプーンでいただきます。
ほろ・・・とろ・・・・う~ん、滋味深いゆり根の甘さといくらの塩味が絶妙。
なんといいましょうか・・・そうだ、こういう味わいこそ「はんなり」と呼ぶべきでしょうか。

実は北海道はゆり根王国。
国内のゆり根のおよそ99%を北海道で生産しています。
安定的にゆり根を生産するには、冷涼で湿度の低い気候と長期輪作が可能は広い土地が必要で
主に真狩村をはじめとした後志地方や上川、十勝地方などで栽培されています。


長沼町から送られてきたゆり根さんたち。
子どものこぶしよりも大きなゆり根がおがくずのお布団にくるまれています。
ゆり根は万葉集に登場するほど日本になじみ深い存在ですが、食用になったのは江戸時代から。
北海道で食用のゆり根が作付けされるようになったのは大正初期のこと。

現在主流になっている「白銀」という品種も、
もともとは北海道に自生していた「コオニユリ」から選抜・交配を繰り返し、作り出したものだそうです。
ゆり根の栽培は非常に大変。なんと食卓に上るまで6年もの歳月がかかるのです。
畑に種球を植え付けるまでに3年、植え付けてからさらに3年の月日が必要とされ、
しかも畑を毎年お引越しをし、一度植えた畑には最低でも7年は戻ってこられません。
長期輪作が可能な広い土地が条件となる所以です。

ゆり根は文字通り、食用に適したゆりの球根(麟茎)。
花びらのような鱗片が重なったものが鱗茎で、花を咲かせるための養分が蓄えられているため
栄養豊富で昔から漢方薬としても用いられています。花弁のように重なり合っていることから
「年を重ねる」「和合」に通じるとされ、吉祥の象徴とされ、お正月のおせちにも使われるのですね。

畑をお引越ししながら6年かけて豊かに大きく育ち食卓に上るゆり根。
小さな種球がお正月のおめでたいお料理となるまで4つの季節を6回過ごすのです。
春夏秋冬4×6=24、
二十四の季節の記憶が、白いゆり根に蓄えられているのです。

桜咲く春、眩しい夏、色づく秋、雪降る冬。
ひどく寒い春や、暑すぎる夏、紅葉が遅い秋、ドカ雪の冬もあったかもしれない。
どんな二十四の季節を見てきましたか?北海道の四季は美しいですか?
お正月の食卓にのぼったゆり根にそっと問いかける2026年でした。