ニース魂

テロワール、という言葉があります。
フランス語で「terroir」、土地や地球を意味する「terre」から派生した言葉で、
ワインなどの農産物が生産される土地特有の土壌、気候、地形などの自然環境や、
地域が持つ歴史や文化、人々の技術などが総合的に作用し、
その産品の個性や品質を決定づける要素を指します。


先週末、沖縄から帰省した息子夫婦を迎えての家族ディナーでも
この「テロワール」を体感いたしました。
ワイン好きの息子のために、余市ドライブでゲットしておいたこちら、
北斗市の「Due Punti Vinyard(ドゥエ プンティ ヴィンヤード)}の
「Spumante Kerner 2024-aki-」も、まさにテロワールを物語るワインです。

イタリア語で「2点」を意味し、「品質最優先」と「広い視野で」というワイン造りを目指すワイナリーが
そのボトルのエチケットに「aki」と記したスプマンテ、であります。
そうです、余市の安芸農園産のケルナーを使っている証。
夏に農園をお訪ねした際に安芸さんが「『aki』とか『A系』と書かれていたらウチの葡萄です」と仰っていましたが、
超人気でめったにお目にかかれない稀少ワインを余市の中根酒店で見つけたうちの一本なのですよ。

生き生きとした泡の心地よさと洋ナシ、桃、グレープフルーツのようなフレッシュな酸味、
ほんおわずかな塩味とライムの皮のようなきれいな後味・・・
余市の豊かな緑と青い海と機嫌のよい太陽の光が凝縮されたようなスプマンテ、
まさに「terroir」を感じる味わいにうっとりしました。

そして前菜「Entree」とのマリアージュも最高。
温かな前菜は「Pissaladie're(ピサラディエール)」。
南フランスのプロヴァンス地方・ニースで愛される郷土料理で。
ピザに似た見た目の、玉ねぎのタルト、もしくは玉ねぎのパイ、であります。


薄く伸ばした生地に飴色に炒めた玉ねぎとアンチョビ、ブラックオリーブを乗せた「ピサラディエール」。
ニースの言葉で塩漬けの魚を意味する「Pissala」に由来していて、ピザに似ているからではないらしい。
今回は冷凍パイシートを使用、北海道産玉ねぎをじっくり炒め、飴色になったらアンチョビも加え、
パイシートの上にのせて、アンチョビとブラックオリーブを飾ってオーブンで焼き上げました。

これが、まあ、絶品!玉ねぎの甘みとアンチョビの塩気と旨みとサクサクパイ、ほっぺが落ちる。
美食の街南仏ニースでは「キュイジーヌ・ニッサルド」という認定制度によって、
地元食材や地域の料理を文化財の一つで大切に守っていて、「ピサラディエール」も
認定を受けたお店では伝統的なレシピを守ることが必須とされているそうです。

玉ねぎの炒め方、玉ねぎの層の厚み、アンチョビの選び方、オリーブの種類など細部に渡り、
「本物のピサラディエールには絶対にトマトが入っていてはならない」とされています。
実はニースは1860年まではイタリアのサルディーニャ王国領で、ピサラディエールの起源は
イタリアともされ、サルディーニャ王国があったリグーニア州ではトマトが入ったものもあるらしく、
多分、きっと、そのあたりの事情から「本物にはトマトが入らない」宣言となっているのかもしれませんね。

ニースが大切に守る郷土料理「ピサラディエール」は、いつでも、どこでも、楽しまれているソウルフード。
パン屋さんやお総菜屋さんに並んでいて、軽食やおやつとして食べられ、レストランの前菜の定番でもあり、
もちろん家庭料理としても良く作られているそうです。ニースっ子にとっては子どものころから親しんだ味、
おばあちゃんが作ってくれた郷土料理だったりと、まさにニースをテロワールを体現したお料理なのですね。

じっくり甘く炒めた玉ねぎの香りは、
どこか、懐かしく、郷愁をそそります。
ニースっ子でなくても、ニースが恋しくなる?
「ピサラディエール」には、ニース魂が詰まっている。

☆☆☆本日10月8日(水)HBC「HBC今日ドキッ!」にコメンテーターとして出演させていただきます。
どんな話題に出会えるのか、今日もわくわくドキドキで行ってきまーす!