幻の豚
南国の
豊かな
食文化を
支えてきた
幻の豚
雪の札幌から冬の翁縄旅の思い出を綴っています。
昨年のクリスマス休暇に訪れた4泊5日の沖縄旅、最後の晩餐編。
那覇から離島への船が出発する泊港からほど近い住宅街に
一見お洒落ねなビストロ風のお店があります。
それが「あぐん茶」。
与論島出身のオーナーが素潜りで獲った新鮮な魚(いまいゆ)が自慢。
カウンターには青や赤、縞々などカラフルなお魚が並んでいて、
よ~く見ると銛で仕留めた痕があったりして、その鮮度を物語ります。
ちなみに「あぐんちゃ」とは与論島の言葉で「ともだち」という意味。
上品で居心地がよい居酒屋といった雰囲気で予約必至の人気店ですが、
クリスマスイブの比較的早い時間帯だったせいか、幸い当日予約でOK。
まずはオリオンビールで乾杯!目の前の色鮮やかなお魚たちに感謝して、
本日のお刺し身盛り合わせに舌鼓。オレンジ色に色づいた、冬ならではの
完熟シークヮーサーを絞り、沖縄のお塩(マース)で戴くともう絶品。
さらにこの日穫れたばかりの縞々のお魚、
(すみません、また名前メモしてなくて、わかりません・・・)を
沖縄らしいマース煮に仕立てていただきました。
マース煮とは鮮魚を塩と泡盛だけでさっと煮たてる沖縄料理。
もともとはうみんちゅたちが獲れたての魚を船上で調理した漁師飯。
イタリアのアクアパッッアとよく似ていますが、
沖縄のマース煮はさらにシンプル、魚の味をダイレクトに感じられます。
一緒に煮た島豆腐が、また、たまらなく美味しい。
やっぱり、あぐん茶、何度訪れても外れなし、何を食べても美味しい。
今回は確か3度目の訪問ですが、魚だけでなくお肉もイケるの。
続いてやってきたのが「炙りアグーのサラダ」
えぅ!?全然、サラダじゃない!
たっぷりの生野菜の上にどっかーん!と分厚いアグー豚の炙り肉が載っている。
もはや、主役級のごちそうサラダです。
う~ん、香ばしい匂いにそそられて、さっそくパクリ!
うわ、柔らか!甘い!旨い!
さすが、アグー豚。
アグーは沖縄県の貴重な豚。
14世紀、今から600年前に中国(当時の明)からもたらされ、
琉球の食文化を支えてきた島豚となりましたが、沖縄戦の影響で激減。
さらに戦後、アメリカから大型で発育の早い西洋品種が大量に導入され、
小型で発育が遅いアグーの頭数はさらに減り、西洋品種との交配も進み、
アグーは絶滅したかと思われていました。
しかし、1981年に名護博物館がアグーの全県調査を行ったところ、
約30頭が確認され、そのうちの18頭が県立北部農林高校に集められ、
およそ10年かけて雑種化を取り除くための戻し交配が行われました。
さらに遺伝子調査による選抜を行い2011年に「沖縄アグー豚証明規定
(旧:琉球在来種アグー証明規定」を設け、戦前に近い形質を備えた豚を
「沖縄アグー豚」として定義されたのです。
もう「幻の豚」と思われていたアグー豚は
沖縄の人々の熱い思いによって、奇跡の復活を遂げたのでした。
現在流通している「沖縄アグーブランド豚」は雄の「沖縄アグー豚」と
雌の「沖縄アグー豚」や「西洋豚」を交配して生まれた豚です。
肉質は霜降りで食味が良く、脂肪融点が高く口の中でとろけ、
香りがよくてジューシーで風味豊かで、しっとりジューシー、
煮ても焼いても旨みが逃げない沖縄アグー豚。
炙りアグーサラダも、最高の味わいでありました。
豚は鳴き声以外は全部食べると言われる沖縄の豚文化。
沖縄風角煮の「ラフテー」、豚足を尾付け「テビチ」、
コリコリした「ミミガー(耳皮」、内臓を丁寧に下処理した「中味汁」
沖縄そばにも豚肉は欠かせません。
戦後、焦土と化した沖縄は県民の努力で復興を遂げてきました。
失われた誇り、文化、歴史、暮らしを、必死で取り戻してきたのです。
幻の豚もたくさんの人々のあきらめない心がつながって復活しました。
幻を、現実に。
アグー豚を味わう。
沖縄の底力を感じる。
(写真は)
「あぐんちゃ」の
「炙りアグーのサラダ」
主役級のごちそうサラダ


