けものみち

初夏の「ボイラーさん」との別れに続いて、

またまた惜別の夏となりました。

マンションの我が家はリフォーム適齢期に突入、

昨日から、長年の懸案事項だった床・カーテン・結露防止工事など

3日間ほどの内装工事に入りました。

苦楽を共にした「絨毯さん」「レースカーテンさん」などとお別れです。

フローリング全盛時代の中、珍しく絨毯仕様のマンション、

息子が小さな頃は食べこぼしのお掃除も大変、

牛乳などこぼされた日には運命を呪いたくなりましたが(笑)、

足に当たる優しく温かい感触が懐かしい「茶の間」感覚で、

結構気に入っていました。

チョロ松の息子がソファから転げ落ちても、たんこぶできないし(笑)。

おはよう、いただきます、ごちそうさま、いってらっしゃい・・・

19年家族3人に踏みしめられてきたリビングの絨毯。

一筋の白い道ができています。

テーブルの一番キッチン寄りの私の椅子からキッチンまでの導線。

その部分の傷みが最も激しく、

絨毯の毛足が擦り切れて、地肌?が見えそうなくらいになっている。

まるで、けものみち。

密林が踏みしだかれてできる一筋の道。

リビングテーブルとキッチンを結ぶこの道を何万回往復したことだろうか。

浮き浮きと料理の皿を運んだこともあれば、

「どうしてこうなるの」「何でうまくいかないの」「なぜ言うこと聞かないの」、

家事や育児や生活や仕事やさまざまな壁にぶつかり、苛立ち、

頭に角を生やした「けもの」になっていた日も決して少なくない。

そうだ。

これは、確かに、我が家のけものみちだ。

新品のぴかぴかの家族も

年月ともに、あちこちひび割れ、擦り切れ、

時に修復する気力さえなくなることだってある。

でも、今、白い絨毯のけものみちを見て、思う。

ひび割れ、擦り切れも、全部ひっくるめて家族の歴史の積み重ね。

何もない大地を、家族で踏みしめてできた一筋の道は

ただ、いとおしい。

軽いステップで踏まれる日もあれば、

どすどすと憤懣やるかたなく踏みつけられる日もあっただろう。

黙って、家族の歴史を床から支えてくれた「絨毯さん」、

ありがとう。

お疲れさま。

白いけものみちをそっと撫でて、お別れする。

まもなくふかふかの毛足の新しい絨毯とバトンタッチする

ガサガサの感触。

しっかり、

素足に刻みつけておこう。

もうすぐ内装工事の職人さんたちがやってくる。

飲み物でも冷やしておかなくちゃ。

テーブルから立ちあがり、

キッチンへ向かう。

いとおしい「けものみち」を踏みしめて。

(写真は)

琉球王朝時代から600年もの間、

人々に踏みしめられてきた「金城石畳道」。

城下町から首里城へと続く250mほどの琉球石灰岩を敷き詰めた石畳道は

奇跡的に戦火を免れ、

道沿いに並ぶ赤瓦の民家、近世前の石垣とともに、

古の王朝時代の面影を今に伝える。

観光客で賑わう首里城から歩いて10分ほどの距離でありながら、

静謐な別世界。

ぜひ足を伸ばしてみて下さい。

踏みしめてみて下さい。

国王が迎賓館「識名園」へ向かう経路であり、

琉球王朝のお役人たちの通勤路であり、

士族の生活道路であり、

子供たちの遊び場であり、

おじいおばあのゆくいどころ(休憩所)であった石畳道。

600年の琉球の人々の息遣いが聞こえてきます。