皐月の襲

残雪と芽吹き

白梅と紅梅

桜と八重桜

そして新緑と藤色

皐月の襲

さあ、今日から五月、皐月です。

今年の5月1日は立春から数えて88日目「八十八夜」にあたります。

昔から「八十八夜の別れ霜」と言われ、気候が安定するようになり、

作物に被害を与える遅霜の心配もなくなることから、

農作業に本腰を入れる日の目安とされてきました。

八十八夜=新茶のイメージがありますが、茶畑だけでなく、

田んぼも畑も牧場もそれぞれ本格的に農作業GO!の季節なのですね。

今朝のラジオでは「そろそろデントコーンの播種が始まります」と

酪農家さんからのメッセージが紹介されていました。

北海道の八十八夜らしい風景が目に浮かびます。

我が家前の桜並木はほぼ散って葉桜になるなか、

遅咲きの濃いピンクの八重桜が満開になっています。

桜の季節が終わると新緑がますます濃く美しくなり、

札幌はライラック、そして藤の花の季節へと移りゆきます。

季節の移ろいにつれて、自然の色も映りゆく。

大河ドラマ「光る君へ」では登場人物の美しい十二単が話題になっていますが、

平安朝の人々は何枚もの衣装を重ねた装いに四季折々の自然を映そうとしました。

「襲(かさね)の色目」と呼ばれる配色です。

幾重にも重ねた装束の襟、袖口、裾にあらわれる流れるような色の調和、

わずかにのぞく表と裏の配色、薄絹を通した光の透過が織りなす微妙な色調。

はっきり、きっぱり、ワントーンで色を主張せずに

季節ごとに咲き競う花の色や木の葉の色合いを楽しむ「襲の色目」は

平安ファッションの美学を象徴しています。

日本の伝統色のバイブル「日本の色辞典」をひもとくと

当時の代表的な「襲の色目」の配色が紹介されていました。

春夏秋冬、季節ごとの「襲の色目」は実に美しく、

四季折々の美しい風景をそのまま写し取っています。

春。透き通る白い薄絹に淡い緑を重ねた「襲の色目」は

初春の残雪と芽吹き始めた淡い緑の木の芽を思わせ、

ピンクの濃淡を重ねたそれは白梅と紅梅を見るようだし、

桜色の濃淡は早咲と遅咲きの八重桜を表しているかのようです。

そして新緑のような淡い緑と濃い緑を合わせたもの、

さらに木の葉の緑に藤の花を思わせる薄紫を合わせた「襲の色目」、

そして紫の濃淡を重ねた色目はまるで札幌のライラックと

我が家のご近所の藤棚の藤色を表わしていようにも見えてきます。

「襲の色目」で大切なのは「匂い」。

この場合の「匂い」とは、色が映え、美しく、華やかさ、香り、

そして光までを含んで気高いことを意味するのだそうです。

濃い色と淡い色を対比させたり、同色の濃淡などを駆使して

美しい四季折々の自然の移ろいを装いで表すテク、

平安ファッション、すごい。

八十八夜。季節は晩春から初夏へと移りゆく季節ですが、

北海道は夏のような陽気になったり、急に冷え込んだり、

洋服選びに頭を悩ませる頃ではありますが、

そうだ、平安人の美意識、襲の色目にならって、

しばし、重ね着ファッションで5月を楽しんでくのも、いとおかし。

皐月の襲。

令和人も楽しみまする。

(写真は)

晩春をお菓子に映す

季節の上生菓子

おぼろげな色使い

襲の色目っぽい