おやつ始め

さあ仕事始めの月曜日です。

お正月気分も昨日まで、今日からいつもの毎日が始まります。

いつもの通勤バッグにお土産の紙袋を持って出勤、

そんな姿が電車や駅のホームで見られそうですね。

職場ではそれぞれの故郷のお菓子を囲んでおやつ始めでしょうか。

Uターンラッシュで賑わう新千歳空港も

手に手に北海道のお菓子がぎっしり入った紙袋を下げた人々が

搭乗口に長い行列を作っていました。

保安検査の大きな機械の前でいったん列が止まるあたりには

もうひとつの小さな列が寄り添っています。

お正月を故郷で過ごした家族を見送る人が作る小さな列。

搭乗口の向こうに消えるぎりぎりの瞬間まで

人混みに見え隠れする姿を背伸びして見送る姿。

つま先立ちして精一杯手を振る姿。

その多くは母親かお祖母ちゃんか圧倒的に女性で、

男性はその後ろでかすかに首を伸ばし、小さく手を振る。

お父さんという生き物は見送りが、苦手だ。

淋しさを認めるのは、得意じゃない。

お正月の間に見逃していたドラマを連続して一気に観ました。

「かすていら」。

さだまさし原作のこのドラマは昭和30年代の長崎が舞台。

貧しいながらも寄り添って生きる家族の姿が温かく描かれています。

戦争と原爆を生き抜き、家族を持ったものの、

戦後の混乱期、仕事を失い、売血してまで家族を養おうとする父親。

どんなに貧しい暮らしでも息子の才能を信じ、

親戚に借金してまでもバイオリンを続けさせようとする母親。

そんな父母の姿を見て、東京でのバイオリンの勉強をためらう息子。

子供の未来のためなら、自分がひもじくたって何とかする。

昭和の親なら誰でも同じだった。

そんな家族をそっと見守ってきたのが「かすていら」だった。

仕事にありついた父が土産に抱えてきたカステラの箱、

お客さんが持ってきた桐箱入りのカステラ、

少年が東京行きの汽車の中で涙をこらえながら食べたのも

同級生が餞別にくれたカステラの耳だった。

いつも、そばに、カステラがあった。

小学校を卒業したばかりで東京へ一人旅立つ息子。

しかし父は見送りのホームに現れませんでした。

「お父さんは、やっぱり怒っているんだろうか。

お父さんは、来なかった」。

しょっぱい思いでカステラをかみしめる少年の耳に

「頑張れ~~~!」

開け放した車窓の向こうから声が聞える。

「まさし がんばれ」

でっかな墨文字が目に飛び込んできた。

春の田舎道に手作りの大きな木の看板が立っている。

その傍らにはじっと腕組みして汽車を見守る父の姿。

駅のホームになんて、行けやしない。

見送りは苦手な不器用な、昭和のお父さんです。

そういえば重松清の「とんぼ」のお父さん、ヤスも同じだった。

東京に進学する一人息子を駅には見送らず

沿道からぶっきらぼうに汽車を見送っていたっけ。

まったく、昭和のお父さんたちは、めんどくさい(笑)。

素直に駅のホームに行けばいいものを。

どうせ手を振るなら、さっさと振ればいいものを。

照れ屋というのは、

可愛いものだ。

故郷に色々な思いを残しながら、いつもの毎日に戻った息子や娘たちも

おみやげのお菓子など手に提げて、仕事始めの電車に乗る1月6日。

職場の休憩時間には日本全国あちらこちらの郷土菓子が並ぶのだろう。

そのひとつひとつに照れ屋の父親や涙もろい母親の姿が透けて見える。

さあ、故郷への思いを胸の奥に大事にしまって

いつもの月曜日の始まりです。

(写真は)

郷土菓子沖縄県代表「くんぺん」

鉄板の「ちんすこう」も美味しいけれど、

琉球王朝時代からの伝統菓子「くんぺん」もおすすめ。

ピーナッツと胡麻をたっぷり練り込んだ餡が香ばしい。

さんぴん茶によく合います。