瞼の鰻重
田舎から出てきた老いた両親を東京見物に連れていく。
昼ごはんに息子が選んだのは下町の老舗の鰻屋さん。
なかなか注文した鰻重は出てこない。
間の持てない時間が
頑固な父と頼りない息子のぎくしゃくした関係を物語る。
小津安二郎監督の不朽の名作「東京物語」を
敬愛をこめて山田洋二監督がリメイクした作品「東京家族」。
録画を昨夜、観ました。
泣けました。
温かい涙がじんわり。
映画ファンの間では論評も色々あったようですが、
親って、子供って、こうだよな~と思うシーンがたくさんありました。
年老いた両親が瀬戸内の田舎から、
東京の子供たちの暮らしを見に上京してきたという設定は変わらず、
山田作品では頼りない次男、妻夫木聡が東京見物に連れていきます。
昼時の鰻屋で不器用な父親がぽつりと問う。
「今、なにしとる」
「鰻重が来るのを待ってるだけさ」と茶化す息子。
「真面目に答えんさい」苦笑しながら隣の母親が肩を軽く叩く。
舞台美術の仕事だとざっくり説明する息子に父がつぶやく。
「それで食うていけるんか、おまえは」。
親は我が子をいつまでたっても心配し、
子はそんな親の心配が煩わしい。
「・・・だから、苦手なんだよ、親父は・・・」と思った時に
ようやく鰻重が運ばれてくる。
ぎくしゃくした会話を振り払うように、
息子が蓋を開けて、箸をつけようとしたとたんに、携帯電話が鳴る。
仕事先からの電話に出るため、席をはずした息子。
残された父と母と三つの鰻重。
「さあ、食べましょう」。
ぽっかり空いた会話の隙間を埋めるように
母親はあけっぱなしになっていた息子の鰻重の蓋をそっと器に戻し、
それから、ゆっくりと自分の蓋を開けるのでした。
母親という生き物は・・・。
電話が終わるまでに冷めてしまうといけないからと鰻重のふたをそっとしめる。
父子喧嘩のような気まずい状況でも、
子供には少しでも温かい、少しでも美味しいものを食べさせたい。
母性を鰻重で表現した一秒ほどの名場面。
戻ってきた息子は蓋のことなど何も気づかず感じずに
さっきのぎくしゃく気分を飲み込むように、鰻重をかっ込むのですが、
まあ、親の心子知らずで結構、子供なんてそんなもの。
ただ母親は、本能的に息子の鰻重の蓋をしめるだけ。
その自然な仕草に、何だか泣けてきた。
今は母となった自分も、
子としてどれほど鰻重の蓋をあけっぱなしにしてきたことか。
後悔と感謝を繰り返しながら、人は大人になっていくのだ。
ああ、瞼の鰻重。
親孝行に東京見物でもと思いたったら、
お昼は葛飾柴又の「蒲焼 川千家」あたりはいかがでしょう。
鰻重のシーンのロケ現場だそうです。
江戸時代から帝釈天への参拝客が詰めかけた老舗。
開店5分で満席になるほどの人気とか。
待ち時間に親子喧嘩はおすすめしませんが(笑)。
☆本日1月28日(火)のUHB「さあ!トークだよ」の特集テーマは
「○○すぎる大人たち」
昼間から○○・・・!遥かなる○○をめざすスゴイ大人などなど、
○○すぎる大人たちが続々登場!
刺激、されますよ~!ぜひご覧くださいね♪
(写真は)
沖縄で親孝行のごはんにもおすすめ、
安里の名店「うりずん」の名物「どぅる天」。
田芋を椎茸、豚肉などを加えて練りあげた伝統料理「ドゥルワカシー」を
コロッケ風に丸めて揚げたオリジナル料理。
ほっこり&ねっちりの食感と
田芋にさまざまな食材の旨みがコラボした豊かな味。
クセになります。

