甘い水

甘露・・・。

ひと匙すくった後に浮かんだのはこの二文字。

久しぶりに満塁ホームランのおやつでございました。

安政元年創業という150余年続くお茶の老舗、

京都宇治の中村藤吉本店の「生茶ゼリイ」でございます。

札幌のデパ地下で3月末まで限定販売されているのですが、

毎日入荷とともに売り切れという超人気スイーツ。

昨日の午後、通りかかるとガラスケースにまだ並んでいるのを発見。

早速「生抹茶ゼリイ」と「生焙じ茶ゼリイ」をひとつずつゲット。

濃いお抹茶色のショッピングバッグがまたお洒落。

丸に十字の屋号「まると」も美しく、持ち帰る時間までが楽しくなります。

やるなぁ。中村藤吉はん。

おやつには遅すぎる夕刻、

抹茶ゼリイと焙じ茶ゼリイを夫ととりかえっこしながら、頂く。

ひと匙すくうと・・・

おお・・・極限まで柔らかく仕上げたゼリイがふるふる震える。

ほんのわずかの刺激で液体に戻ってしまいそうな臨界点ぎりぎりの食感。

その雅なエロティシズムは源氏物語の一場面のようではありませぬか。

やばいね。生茶ゼリイ。

抹茶と焙じ茶の香りの素晴らしさはさすが老舗の茶舗。

おちょぼ口サイズの小さな白玉と柔らかな甘さの小豆あんが

お茶の香りにそっと優しく寄り添っています。

そして、もうひとつ、何が美味しいって、「お水」が美味い。

お茶を淹れ、ゼリイを固める「お水」そのものが美味しいのです。

お水の甘さを感じるゼリイ。

宇治のお水は、甘露甘露、なのでありました。

お店の栞に載っていた地図を見ると、

甘露の源である宇治川のほとりに本店が佇み、

さらに宇治川に沿って角を曲がると平等院店が。平等院店・・・。

さらっと書きましたが、世界遺産が支店の名前って、さすが京都でございます。

確かに平等院店の斜め向かいにあるは、世界遺産の平等院。

宇治橋を渡った向こうには同じく世界遺産の宇治上神社。

なんと雅なロケーションで育まれたゼリイでありましょうか。

甘露なのもむべなるべし。

1000年の昔、紫式部が源氏物語の最後の舞台に選んだ宇治は

平安貴族にとっては祈りと癒しの地でありました。

とうとうと流れる宇治川から立ち上る朝霧が適度な湿度をもたらし、

お茶の栽培にふさわしいと足利義光が茶園を作るように命じたのが

宇治茶のはじまりとされています。

中の島から向こうに渡る橋の名前は朝霧橋。

甘露なお茶を育んだ朝霧の潤いは

平安美女の美肌にも貢献していたことでしょう。

ひと匙のゼリイから1000年の都へ思いを馳せる。

お菓子の栞は、旅のパンフレット。

おやつは、心の小旅行でもあります。

(写真は)

お向かいさんが世界遺産という

中村藤吉本店の「生抹茶ゼリイ」と「生焙じ茶ゼリイ」。

どちらもおすすめ。

誰かとシェアするか、

一人でダブルするか。

ま、カロリーは控えめ、だしね(笑)