パリの夜明け

立春です。

氷点下であろうと、流氷が近づこうと、暦の上では「春」。

日本の季節は、たくましい。春が立つと書いて立春。

誰が何と言ってもすっくと「立つ」。

さあ、雪と寒さもあとひと月だ。

凍える風に向かって、前を向いて、歩いていこう。

と、自分に言い聞かせる真冬日の立春であります。

そして明日からはさっぽろ雪まつり。

雪像も完成、幹線道路を中心にきれいに除雪され、おもてなし準備はOK。

いつにもまして、街中には色々な国の人々が行きかっています。

昨日のお昼頃も中心部を若い外国人男性の二人連れが

片手に盛ったパンをかじりながら、雪の街を闊歩していました。

わが子が歩き食べすれば「お行儀悪い!」と叱るところですが、

ブラウンの髪をした颯爽とした長身が同じことをすると

不思議と画になり、許せてしまうのは、えこひいきか(笑)。

「パンの歴史が長いからかしら~」などと思いつつ、

彼の手元のパンを見て、ちょっとにんまり。

それはハンバーガーでもホットドッグでもバゲットでもベーグルでもない。

大きなメロンパン。

日本が世界に誇る純国産菓子パンであります。

旅先の日本でみかけたメロン風のパンをたまたま買ったのか、

札幌在住ですでにお気に入りのパンなのかはわかりませんが、

ふだん着の日本を好きになってくれたのだと思うと、ちょっと嬉しい風景でした。

あんパンにクリームパン、ジャムパン。

日本生まれの菓子パンは、欧米にはない「具材を包む」スタイルが特徴。

あんこをつつみこむ饅頭文化の影響が色濃い国産菓子パンもなかでも

メロンパンは異彩を放っています。

何も入っていないパンの上にクッキー生地を載せて焼くという斬新な製法。

個性的なヴィジュアルがハイカラ果物だったメロンに似ているからと

名前が後からついてきたという経緯もユニーク。

また京都や広島など西日本では「サンライズ」という別名まであるのが面白い。

表面の模様が昇る朝日に見立てたらしい。

おっと、思い出しました。

メロンパン、サンライズ、そしてもうひとつの名前がありました。

それは「ムロン・ド・パリ」。

多分、フランス語で「パリのメロン」てな意味でありましょう。

学生時代、アルバイトをしていた某有名パン屋さんでは

正真正銘のメロンパンにアラン・ドロン的な(笑)フランス風ネームを

真面目につけていたような記憶があります。

フランス仕込みのバゲットやクロワッサンと並んだ「ムロン・ド・パリ」は

銀座のデパ地下の店先でちょっとおすましして見えたものです。

メロンパンは別名サンライズ。

ということは「サンライズ・ド・パリ」(英仏混合ですが)でもあるわけだ。

意味は「パリの夜明け」。

何だか、パリ時代のヘミングウェイが名付け親っぽくってカッコいい。

小さな村の商店でも手に入る国民的菓子パンは意外に国際派。

花の巴里と誰もが憧れた時代、

細長いバゲットを小脇に抱えて、シャンゼリゼ通りを歩くのが夢だった。

そしていくつもの春を通り過ぎて、

雪の札幌をパリジャン(?)が

「ムロン・ド・パリ」またの名を「パリの夜明け」をかじりながら、散策する。

Oh~♪ メロンパ~ン♪

日本生まれの菓子パンも、立派な食の遺産であります。

(写真は)

JR札幌駅にお目見えしたアイヌの長老「エカシ」像。

弓を持ったエカシが札幌を訪れたお客さまを歓迎する舞を躍るデザインです。

アイヌの彫刻家が先人の顔を思い浮かべながら彫りました。

ようこそ、北海道へ。

力強いエカシの声が聞えてくるようだ。