氷上の剣豪

もう日の丸とか、国民の期待など背負うな。

浅田真央よ、

最後は「恋人のために飛べ!」

最後は「自分にために飛べ!」

今週号の週刊ポストと週刊現代の見出しです。

奇しくも同じようなメッセージを送っていました。

誰のためでもない、浅田真央選手、あなたのために飛んでほしい。

こだわり続けたトリプルアクセルを。

いよいよ日本時間の今夜、フィギュアスケート女子SPを前に、

日本中が同じ気持ちでしょう。

なぜ日本人はトリプルアクセルに魅せられるのか。

今朝の朝日新聞のオピニオン欄のテーマは「トリプルアクセルと日本人」。

唯一前向きで踏み切る三回転半のジャンプ。

その最高難度ももちろんですが、もうひとつの理由がありました。

文芸評論家の末國善巳さんが指摘するのが「必殺技を愛する国民性」です。

たとえば「大菩薩峠」机竜之介の「音無しの構え」、

眠狂四郎の「円月殺法」のように時代小説には必殺技がつきもの。

スポーツの世界でも王貞治の「一本足打法」に野茂英雄の「トルネード投法」、

荒川静香の「イナバウアー」と枚挙にいとまがない。

星飛遊馬の「消える魔球」を筆頭にスポ根漫画に「必殺技」は欠かせません。

ことほどさように日本人は昔から「必殺技」がお好き。

真央スマイルと努力を続けるひたむきさと大好きな「必殺技」と、

なるほど、私たちが浅田真央選手から目を離せないわけであります。

苦悩の人生、紆余曲折、運命のライバルがあって、

最後は血と汗と涙で磨いた「必殺技」で主人公が決戦に勝つ。

やんややんやの大喝采。日本人の大好きな展開です。

確かに、キム・ヨナという強烈なライバル・キャラも存在するし、

私たちの大好きなお話展開に欠かせない要素が詰まっています。

愛らしい真央ちゃんに、剣豪のストーリー性を知らず知らずに重ねている。

そりゃあ、彼女の背中も重くなろうというもの。反省反省。

「真央ちゃんと玉三郎が似ている」という増田明美さんの意見にも一票。

寝具の広告写真で並ぶ二人の2ショット、

卵型の美しいお顔、鍛錬された肉体、柔らかな微笑み、

「なんだか、良く似ているな~」と私も感じていましたが、

ともに透明感があり、まっすぐにその道を進む求道者としての生き方が

アスリートの眼から見ても二人はぴったりと重なるそうです。

舞台の上を音もなく進む玉三郎さんの足さばきは

確かに氷上を滑らかに滑るフィギュアスケーターの軌跡に通じています。

「努力と必殺技」が大好きだからこそ、

トリプルアクセルに魅せられるのは、国民の勝手(笑)

時代小説の剣豪はいつも背中に孤独を背負っている。

氷上の舞台でたった一人で戦うのは、浅田真央選手。

必殺技は、努力を重ねたあなたのためにある。

誰のためでもない、あなたのために、

自由に、高く、鋭く、軽やかに、飛んで下さい。

美しい氷上の剣豪に、

ただ、私たちは、見惚れるだけです。

(写真は)

極寒の湖を思わせるような群青のお皿。

実は南国生まれ。

沖縄読谷村の大嶺工房で見つけたお気に入りの一枚です。

ブルーチーズに蜂蜜と枝つき干し葡萄。

たったそれだけの前菜も「必殺技」に見せてくれる魔法のお皿。

食器棚のトリプルアクセル。