ゆりのお弁当箱

「ラクうま弁当」「定番おかず入門」などなど

女性雑誌の4月号は美味しそうなお弁当特集が花盛りです。

春はお弁当の季節。

4月は新生活とともに通勤・通学弁当がスタート、お花見弁当も楽しみですが、

3月のお弁当は、ちょっと切ない。

卒業を前に、定年を前に、最後のお弁当をかみしめる季節でもあります。

この季節になると、ふと思い出すのが赤い小さなお弁当箱。

幼稚園の時に使っていた小判型の赤いアルマイトのお弁当箱、

その蓋には可愛いユリの花が描かれていた。

いつものおかずはあまり覚えていないのですが、

春のお彼岸も近づいたこの季節、

お昼に蓋を開けると、小さなおはぎが二つ詰められていたことだけは

妙にくっきりと覚えています。

ぱかっと赤いユリの花のお弁当箱を開けると、

目に飛び込んできたのは、薄緑色・・・いや薄い黄土色・・・の物体。

そう小豆のおはぎではなく、

その日母が入れてくれたのは、きなこのおはぎでした。

作りたてのきなこのおはぎは香ばしくて美味しいものですが、

朝詰められて、お昼どきまで蓋をされていたそれは、すっかり湿っていて、

きなこはぺとぺと、きれいなはずの浅緑色は悲しい黄土色に。

3月のお弁当は、ちょっと切なかった。

きっと「あの子はきなこ餅が大好きだから」「園の卒業も近いから」と、

母はわざわざ、きなこのおはぎを詰めてくれたのでしょう。

子供心にそこまで思い至らなくても、

せっかくの真心が「ぺとぺと」になってしまったことが、悲しかった。

しかも、記憶では、確かお弁当箱に入っていたのがおはぎだけで(笑)

しょっぱいおかずが欲しかったことも覚えている。

本当におかずなしだったかどうか、人間の記憶なんて、あてになりませんが、

赤いユリのお弁当箱→湿ったきなこおはぎ→ぼんやり甘かった→切なかった

→それは、3月だった。

この思い出チャートは半世紀も経とうというのに堅固なのであります。

思い出はディテールに宿る。

3月。

最後のお弁当は作る人、食べる人の記憶のアルバムにどんな風に残るのでしょう。

あの、赤いユリのお弁当箱は、持ち主の成長とともに、

いつのまにか、私の前から姿を消していました。

でも、記憶のアルバムには、くっきりとそのデティールが刻まれている。

そうだ。

おいしかったよ。

きなこおはぎ。

(写真は)

季節の行事、ご先祖さまの行事には重箱が大活躍の沖縄。

市場の荒物屋さんの一角も大小各種の重箱がずらり。

重箱の数だけ、家族の笑顔があるんだな。

雪が溶けたら、

卵焼きに、鮭のおむすびに、菜の花おひたしなど重箱に詰めて

北国の春を探しに野にでかけよう。

春弁当の季節が待ち遠しい。