朝刊と田園
6月最初の月曜日。
今朝も爽やかな青空に眩しい朝日が輝いています
朝刊を取りに行ったついでにマンションをぐるりとひとめぐり。
外に出た瞬間に芳しい水無月の匂いがしました。
どこまでも青い空とどこまでも鮮やかな緑の見事なコントラスト。
この季節の札幌は世界中に自慢したい美しさ。
イギリスの貴族の皆さまにもご満足いただけるに違いない。
世界中をとりこにした大ヒット英国ドラマ
「ダウントン・アビー~華麗なる英国貴族の館」、観てます?
日曜夜にNHK総合で放送されていますが、ちょっとはまります。
英国貴族の暮らしぶりが実にリアルに描かれていて
ざっくり言えば「英国貴族版鬼渡」というところか。
貴族も使用人も含めた愛憎劇を仔細に描き出していて実に人間くさい。
ゴージャスな邸宅の裏も表もよ~く見えてきます。
舞台は20世紀初頭、イギリスが近代化に向けて動き始めていた時代。
イギリスの田園地帯にある大邸宅
「ダウントン・アビー」の当主グランサム伯爵のもとに
タイタニック号沈没の悲報がもたらされたところからドラマは始まります。
彼の爵位を継ぐはずだった長女の婚約者である甥が死亡、
代わりに相続人として表れたのは中産階級の青年マシューだった。
莫大な財産と誇りをかけての人間ドラマ、ももちろん面白いのですが、
興味そそられるのが本物の貴族の暮らしっぷりであります。
第一話はお屋敷の朝の場面から幕を開けます。
朝早くから使用人たちが起きだし、分厚いカーテンを開け、
暖炉に火を入れ、明かりを灯し、厨房では慌ただしく朝食の準備、
食堂には一部の隙もなくリネンとカトラリーがセットされていきます。
執事を筆頭に家政婦長、料理長、従者、侍女、メイド、下僕、厨房メイド等が
それぞれの持ち場で流れるように仕事をこなしていく光景は
まるでオーケストラが壮大な交響曲を奏でるかのよう。
早朝から大勢の使用人たちが大邸宅で働く姿に圧倒されると同時に
一方、まだ眠りについている貴族たちは働かず消費することで
こうした雇用を生み出してきたことを実感します。
象徴的な場面がありました。
執事が下僕に「新聞はまだか」と催促した後、こう言い付けます。
「アイロンを用意しておけ」。
ふ~ん、朝からアイロンかけもこなすのか・・・と思っていたら、
しばらく後の場面で、あ~びっくり!
ちょっと遅れて届いた朝刊を下僕が丁寧にアイロンをかけていたのです。
新聞にアイロンをかける!?
なぜ?
「こうしてアイロンでインクを乾かしておかないと
旦那様の指が真っ黒になってしまうからな」。
ひょえ~、執事さん、これが貴族の暮らしってやつなんですね。
現代の印刷技術では配達したての新聞で指が汚れることなどありえませんが、
時は今世紀初頭のイギリス、
朝刊のインクの乾きは確かにいまいちだったことでしょう。
伯爵の朝の食卓にぱりっとアイロンのかかった新聞を用意しておくことは
邸宅に働く者たちにとって、いつもの大事な仕事のひとつだった。
消費することで雇用を生む、かぁ。
降ってわいたような相続人話に戸惑うマシューの職業は弁護士。
招かれたダウントン・アビーでの食事の席で
貴族のレディーたちは優雅にフォークを操りながら
「え、弁護士?、まあ・・働いていらっしゃるの・・・」
と無邪気な毒を吐きます。
ああ、20世紀初頭のイギリスに生まれなくて良かった。
汗して働いた後にくい~っと飲み干す冷えっ冷えのビールの喉越し、
一緒に働いた仲間たちと「お疲れ~っ」と乾杯する喜びを知ってしまった
21世紀の労働者はダウントン・アビーでは暮らしていかれない。
テレビのこちら側で観賞する側で良かった(笑)。
誰かがアイロンをかけた新聞を読む。
誰かが読む新聞にアイロンをかける。
長い年月、この相互関係が成立していた時代に
「近代化」という地殻変動が地層深くから、静かに、確実に訪れるであろうことを
誰よりもはっきりと予感していたのは、
毎朝、指が汚れることない朝刊を開いていた伯爵その人だったのかも。
記事で目にした豪華客船とともに沈んでいくのは
働かないことで雇用を生み出すこの前近代的なシステムだということを
誰よりも彼が知っていたのかもしれない。
英国貴族版鬼渡「ダウントン・アビー」、
人間くさい20世紀の歴史ドラマとしても見ごたえがあります。
マンションの新聞受けに
今朝もぱりっと皴ひとつない朝刊が届いています。
決して下僕がアイロンをかけてはいません。
21世紀の、新聞です。
(写真は)
イギリスの貴族の館・・・のような
素敵なゲストハウスで行われたウェディングパーティーのデザート♪
ウェディングケーキのピースが幸せをお裾わけ。
本物の貴族の結婚式ってどんなだろう。
ご祝儀って、おいくらぐらい包むの?
田園の別荘一軒くらいが相場?なんて(笑)

