劇場へ行こう

自分の住む街に劇場がある。

それはとても素敵で、とても贅沢なこと。

いつもの地下鉄に乗り、エントランスでチケットを渡し、

クロークにコートを預け、重厚な扉の向こうへ一歩足を踏み入れると

そこには非日常の時間と空間が待っている。

たとえば19世紀のパリ・オペラ座だったり、

果てしなく広がるアフリカの草原だったり、

底抜けに明るい陽光あふれる地中海だったり、

貧しさと富が背中合わせに同居する南米のパリ、ブエノスアイレスだったり。

劇団四季の専用劇場「北海道四季劇場」が開場から3年半、

きょうで上演1000回を達成します。

こけら落としの「エビータ」に続いて「ライオン・キング」「赤毛のアン」

「マンマ・ミーア」「美女と野獣」そして現在上演中の「オペラ座の怪人」と

これまでに6つのミュージカルが上演され、およそ70万人のファンが

非日常の素敵な贅沢を楽しみました。

今朝の北海道新聞には上演1000回記念特集の全面記事が掲載され、

長年の四季ファンの一人として私もその魅力を語らせて頂きました。

華麗な舞台写真とともに自分の写真が掲載されるだけでもう恐縮。

エビータやファントムとある意味「共演」を果たしました(笑)。

インタビュー記事の中でもお話しましたが、

劇団四季の舞台との出会いは多感な少女時代にさかのぼります。

北海道にまだミュージカル専用劇場などなかった昭和50年代の故郷室蘭。

市の文化センターで上演された演劇「エクウス」が最初でした。

ピーター・シェーファーによる戯曲は6頭の馬の目をつぶした10代の少年と

精神科医の対話による前衛的な心理劇で主演は若き市村正親さん。

高校生だった私には正直難解なストーリーでしたが、

無機質な装置が置かれた舞台の張りつめた空気に圧倒された記憶があります。

その舞台の上で全裸の少年がまるで飛翔するかのように

馬の目をつくシーンには衝撃的な感動を覚えました。

客席の向こうには「ここ」とは違う世界が広がっている。

舞台の魅力にはまった瞬間かもしれません。

製鉄業で賑わっていた当時の室蘭は「文化」を振興させる経済力があり、

北海道の地方都市にありながら、ボリショイ・バレエや劇団四季など

市民は本物の舞台芸術に触れる機会に恵まれていたのです。

バレリーナなど少女漫画の世界でしか知らなかった少女は

目の前で優雅に踊るオデット姫や白鳥たちの美しい姿にためいきをつき、

そして同時に彼女たちのしなやか足が動くたびに

「カツン、カツン、カッ、カッ・・・」。

舞台からかすかに聴こえてくるトゥ・シューズがたてる音に

また別の感動を覚えたものです。

この世のものとは思えない美しい動きは

生身の人間の鍛錬によって生み出されるんだ。

少女時代に舞台芸術を生で感じた喜びは人生の宝物です。

そんな昭和が過ぎ平成へ。

2011年札幌にミュージカル専用劇場ができました。

自分の住む街に常設の劇場がある。

ロングラン公演で一流のミュージカル作品がいつでも観られる。

これは本当に幸せなこと。

おかげで、あの頃家計をやりくりしながら

子供たちに本物の舞台を惜しげなく見せてくれた母とともに

北海道四季劇場の「ライオン・キング」を観劇、

ちょっとだけ恩返しができました。

何かの記念日に劇場へ行って舞台芸術を楽しむ。

これってかなり素敵なことです。

いつもより少しだけお洒落をして、

劇場に向かう途中で、舞台の前に軽くアペリティフを楽しんだり、

舞台がはねた後に少し遅いディナーを予約しておいたり。

アフリカの大地や19世紀のパリ・オペラ座の雰囲気に浸った余韻まで

とことん楽しみ尽そうではありませんか。

我がまちに常設の劇場がある。

それは文化を楽しむ成熟した都市である証。

パリやロンドンやNYや東京に負けてないってこと。

北海道四季劇場を抱えるエリア

創成川イーストがブロードウェイに肩を並べる日が来るかも♪

上演1000回の日の楽しい夢想です。

(写真は)

劇場に向かう道にこんなカフェがあったら素敵だなぁ~。

銀座から日比谷へ抜ける小道に昔からあるお店。

オープンカフェの先駆けか。

舞台の前の待ち合わせでも

パンフを見ながら余韻に浸るのも

劇場文化を盛り上げるにはこうした周辺文化が欠かせない。

もっと欲しいな、札幌のオープンカフェ♪