雨に濡れても
晩夏の雨が降り続いた昨日、
バサッ・・・何か黒い影が我が家のベランダに。
そっと窓に近づいてみると、
手すりの端っこに雨に濡れそぼった1羽のカラスが止まっています。
一瞬、ドキッとしたものの、
威圧するような猛々しさはなく、どこか心細げに見える小さな体。
あれ・・・もしかして・・・キミは?
6月27日付の「巣立ちの朝」に登場した
巣立てない子ガラス君(ちゃん?)ではないでしょうか。
もっとよく観察しようと窓辺に近づく気配を察したのか、
そのカラスはバサリと飛び立ったのですが、
飛び方に大した勢いはなく、少し下の電線に飛び移っただけ。
かなり強い雨が降り続いているのに、そこから動かずにじ~っとしている。
ん?動かないんじゃなくて、動けないのか?
ガァ~、ガァ~、ガァ~!
その推理を裏付けるかのように、
どこからか数羽のカラスが集まってきました。
びっしょりと雨に濡れて電線にとまったままの例のカラスの周りを飛びまわり、
近くの建物の屋上に降り立つと、そこからまた、ガァ~、ガァ~、ガァ~。
その鳴き声は平時でなはい逼迫感が漂っています。
そう、6月27日の朝を思わせる鳴き方。
巣立ちの時期を迎えたものの、上手に飛べずに、
地面をぴょんぴょん歩くしかできない子ガラスを
親ガラスが必死に周りを威嚇しながら、見守ってあの朝の鳴き方と同じなのです。
あれから2カ月弱も経つのに、これはどういうことでしょう。
そういえば、思い出しました。
数日前、車を運転中、歩道をひょこひょこ歩くカラスがいたっけ。
車が近づいていっても飛びたたないので、こちらが避けて通ったのですが、
そのあともひょこひょこ車道から桜並木の根元に移動する様子が
バックミラーに写っていた。
場所はちょうど今止まっている電線のそばだった。
あの子カラスか。
君はまだ飛べていなかったのか。
電線に止まったまま、雨に濡れる子ガラス。
いつも地面にいるわけではないから、まったく飛べないわけではないのだろうが、
青年カラスとして自立生活を営むのに十分な飛翔能力が
まだ育っていないのか、それとも備わっていないのか。
観察する限り、自由自在に飛び回ることがどうやら難しそうなことは確かだ。
しかし、あの朝と同じように親は手を貸してやることはできない。
ただ、尋常ではない鳴き声と飛び方で、周りを威嚇し、
同時に励ますことしかできないのだ。
「雨は冷たくないか」「もうちょっとだけ頑張れ」
「少しずつでいいから飛んでみろ」
ガァ~、ガァ~、ガァ~・・・。
晩夏の雨の中にこだまする切羽詰まったカラスの鳴き声が
だんだんそんな風に聞こえてくる。
普通ならちょっと迷惑な騒音なのに、
何だか、切なくなってきた。
マンションが立ち並ぶ住宅街で目撃した厳しい自然の摂理。
いくら黒い羽根がぽそぽそに濡れそぼる姿が可哀そうでも
親カラスはもちろん、ましてや人間の私なんて、どうにもできない。
しかも人間には人間のスケジュールがあって、
いつまでもベランダにはりついて観察しているわけにもいかない。
出かける支度をして、出がけに再び外を見ると、
電線から子ガラスの姿は消えていた。
勇気を振り絞って飛び立ち、
どこか安全なねぐらにたどりつけたのだろうか。
雨に濡れても、生き続ける。
雨に濡れても、見守るしかない。
これからひと雨ごとに秋へと近づく晩夏の雨。
飛べない子カラスの親の心中はいかばかりだろうか。
ヒト科の親も何だか切ない夏の終わりの出来事であります。
がんばれ、子カラス。
(写真は)
冷たい晩夏の雨に濡れる1羽のカラス。
飛ばないのか、
飛べないのか。
もはや親戚のおばちゃんのように心配になる。
風邪ひいてないかい?

