ふちゅくるびん
小さなお饅頭やフランスパン一切れも
愛する沖縄の焼き物「やちむん」のお皿に載せると
一気に生命力が増すような気がします。
器の上の食べ物がお喋りしそうに見えてくるから不思議。
その魅力はどこから来るのでしょう。
終盤を迎えた初秋の沖縄旅。
那覇の浮島通りで島野菜ごはんのランチを楽しんだ後は
賑やかな市場の通りをぶらぶらしながら、
壺屋やちむん通りまでやってきました。
ひめゆり通りへ抜けるなだらかな曲線を描く通りの両側には
やちむんのお店が軒を連ね、焼き物好きには最高の散歩道。
那覇市内では比較的戦争の被害が少なかった壺屋界隈は
「南ヌ窯」や「東ヌ窯」など
焼き物にかかわる文化財がたくさん残っています。
よし、今回こそ、訪ねてみましょう、あの博物館を。
お買い物に時間を取られたり、行こうと思ったら閉館時間だったり、
なかなかご縁がなかった「壺屋焼物博物館」です。
古代まで遡るやちむんの歴史から技法、制作工程など
わかりやすく展示された館内をじっくりと見て回ります。
ここでしかお目にかかれない古陶の数々も展示されていて、
思わず足が止まり、時間を忘れて見入ってしまいました。
琉球王である尚家の紋、三つ巴が入った美しい赤絵の碗や
人間国宝金城次郎作の力強いイッチン魚紋大皿などなど。
そんな歴史的な逸品に隠れるように
小さな小さな壺がひっそりとちんまりと展示されていました。
「フチュクルビン」という名の小さな泡盛つぼ。
手のひらにすっぽり収まる可愛い壷は
祖先へのお土産として死者のふところに入れて埋葬したものだそうです。
何と温かい弔いの方法でしょうか。
ご先祖さまの元へ旅立つ死者へ、お土産まで持たせてあげる心配り。
それもご先祖様の大好物の泡盛の壺とは
お酒大好きな沖縄らしい手土産センス(笑)。
そういえば亡くなった父の納棺の際も
三途の川を渡る時の船賃など持たせたりしたのを覚えていますが、
そうだった~、ご先祖様へのお土産までは気づかなかったな~。
甘党の家系だから、お汁粉用のお椀でも入れてあげれば良かった?
近頃、書店でもやたらと「手土産本」を見かけますが、
ハイセンスな手土産は数あれど、
ご先祖様への手土産までは、達人とて思いつかないだろう。
まいった、まいった。素敵過ぎるよ。
「フチュクルビン」。
漢字で書くと「懐瓶」。
立冬過ぎて、寒さが沁みる季節。
かじかんだ指先もふところの温もりが溶かしてくれる。
ふちゅくるの温かさを教えてくれた小さな小さな泡盛壺。
壺屋の博物館の片隅にひっそりと展示されています。
お買い物ついでに寄ってみて下さい。
(写真は)
展示品は撮影できないので、博物館の外観を。
初秋の午後の日差しをうけて
なだらかな曲線を描く壺屋やちむん通り。
戦火をまぬかれた数少ない場所です。
おおらかな曲線に古の琉球を感じます。



