ごめんねダイソン
やはり・・・とうとう・・・その時がやってきたのね・・・。
長年愛用してきた掃除機がとうとう天寿を迎えたようです。
お疲れさま。
愛しのダイソン。
去年の大晦日、料理番として手が離せないので、
夫に掃除機をかけてもらっていた時のことでした。
いつも通り、頼もしい運転音をブンブンたてながら
いつも通り、「変わらぬ吸引力」を見せてくれていた、
我が家のダイソンDC12animalproくん、
寝室、息子の部屋、リビングと進んできたあたりで、ぴたっ。
突然その動きを止めてしまったのです。
本体を見れば、平常運転を示すグリーンランプがレッドに。
これって、緊急事態ってこと?
ダイソンの本体にはこの運転ランプのそばに
親切に連絡先の電話番号が書かれているのですが、
何せ大晦日、一応かけてみたものの、やはり留守電状態。
修理するにしても何にしてもお正月明けを待つしかありません。
電源を入れ直すと、はっと意識を取り戻したように再び動き出しますが、
また少しすると、「やっぱりダメ、無理」って感じで赤ランプ。
だましだまし、使いながら年を越しましたが、
我が家のダイソンくんに
何か致命的なことが起こっているのは疑いありません。
覚悟を決めて、松の内も明けた昨日8日、
再度、本体に書かれたサポートセンターに電話してみました。
ウチのダイソンくんの症状を説明したところ、
モーター本体の故障の可能性が高いこと、
直せることができるが、それなりの修理代がかかること、
既に10年使用してきている家電なので、
また不具合起こすことも考えられるし、
その際の部品調達が難しくなってくること、などなど
電話の向こうの男子オペレーターがわかりやすく説明してくれます。
なるほどね・・・。
予想していたけど・・・やっぱりね・・・。
でも、修理代金かかっても直るんなら、直して使おうか・・・。
そう、心が傾きかけた時、彼が明るい声でこう付け加えた。
「もうひとつのご提案として、下取り買い替えという方法もございます」。
ウチの老兵ダイソンくんを引き取ってもらって、
新しい後継機種に買い換えるということ。
肝心の値段を聞けば、修理代金よりは高いものの、
新品買い替えを予想してチェックしていた値段よりはお得な価格設定。
何と心憎い「もうひとつのご提案」でありましょうか。
むむむ・・・ぐらり・・・。心が反対に傾く音が聞えた(笑)。
と、いうわけで、
我が家にはまもなく新しいダイソンくんが宅配されてくることになりました。
この新人くんを使用して納得できれば
8日以内に古いダイソンくんを集配業者さんに引き渡すんだそうです。
もうすぐ、キミとお別れのときがくるんだね。
ありがとう。本当に本当にお疲れさま。
愛しのダイソンくん。
思えば我が家にキミがやってきたのは、かれこれ10年前。
絨毯の多いマンションのため、何はなくても吸引力が肝心。
それまで何度も「吸引力抜群」とかいう
色々なメーカーの掃除機を購入してきましたが、
どれもこれも、すぐに故障したり、謳い文句ほどの吸引力がなかったり。
ほとほと困っていたところに、耳にしたのが主婦憧れのダイソンの噂。
家電量販店の店頭で目にした実物のキミの姿といったら。
デザインも哲学も我が道をゆくオリジナリティにノックアウトされ、一目惚れ、
予算オーバーではありましたが、えいやっと購入決定。
そう、10年前、私はキミに確かに恋しちゃったのでありました。
あれから10年。
来る日も来る日も文句ひとつ言わずに働いてくれたキミ。
キミと過ごした日々が走馬灯のように蘇ってくる。
息子はやんちゃ盛り、友達もいっぱい遊びにやってきた。
細かなポテチの屑もクッキーのかけらも、
サッカーシューズからこぼれ落ちたグラウンドの砂も乾いた泥も、
ただ黙ってブインブインとそれは気持ちよく吸いとってくれた。
知らず知らずに日々の暮らしの中でたまっていく埃や澱。
毎朝の掃除の度、たくましいキミの運転音を聞きながら、
すっきりキレイになっていくリビングの絨毯を見ていると、
心の中のそうしたものも一緒にす~っとキレイに掃除されていくようだった。
そうだ、キミは優秀な掃除機であり、
主婦範子にとっては物言わぬ優秀なカウンセラーでもあったのだ。
本当にお世話になりました。
ありがとう。
「掃除機ね~、買い替えることにした。
直せるみたいだけど、修理代もかかるし、部品も今後なくなっていくし、
今、新しいの買えば、後10年働いてくれるし」。
私の事後報告を聞いた夫が一言。
「10年後って、僕が○○才かぁ~。僕が故障しちゃってるかも」
「えっと~、夫の買い替えはきかないので、せいぜい部品大事にしてください!」(笑)。
笑いながら切り返しながら、心のどこかがチクリと痛んだ。
納戸でひっそりと引き取られるその日を待つダイソン。
ごめんね。直したら、まだ使えたのにね・・・・。
ごめんね。
毎日の暮らしを黙って支えてくれる家電たち。
ボイラーも掃除機も機械であって、主婦にとっては単なる機械じゃない。
長年の付き合いのうちになにがしかの人格が宿るものなのだ。
出会いと別れの度に、心が揺れるものなのだ。
10年間働いた老兵ダイソンくんのボディを
キレイなタオルを絞ってそっと拭く。
埃を吸いとってばかりのキミの埃をぬぐうこともなかったね。
別れの時になってはじめて気づくなんて。
冬の底でパープルボディのキミに別れを告げる。
ごめんねダイソン。
(写真は)
我が家の老兵は非公開(笑)。
代わりに、長年の働きに報いて
ねぎらいのミネストローネの写真を。
ブックスカフェのそれはブルックリンっぽい味がした。
じっくり煮込んだスープのように
長い付き合いだったね。
パープルのキミのこと、忘れないよ。

