十勝のセゴビア風
白い使者、この冬はお早いご到着です。
昨日12日、網走で「流氷初日」を観測。
平年と同じだった昨年に比べて9日早く、
肉眼で真っ白な流氷帯が確認されました。
オホーツク海が最も美しく輝く季節が到来です。
遠い遠い北のアムール川で生まれた氷の塊が
長い長い旅を経て毎年1月頃にオホーツク海に姿を見せ、やがて接岸、
海は真っ白い流氷に埋め尽くされ、波音の消えた沈黙の季節が
春が近づく海明けのその日まで続きます。
流氷は不思議な魅力に満ちています。
海を流れてきた氷なのに、しょっぱくないし、
遠目で見る真っ白なのに、近くで眺めると幻想的なブルーグリーンに見える。
どれも科学的に合理的に説明のつく現象ですが、
文系の感性はただただそのロマンチックさに圧倒されます。
流氷が接岸した真っ白な海岸に一度立ってみて下さい。
波の音がまったく聞こえない無音の白い世界は
どこか遠い星の異空間に瞬間移動したような感覚になります。
氷点下に閉ざされた白いファンタジーワールド、
自然が作りだした入場パスポートのいらない最高のテーマパークです。
北海道は広いな。凄いな。そして美味しいな。
オホーツクの流氷も感激ですが、
お正月の食卓でいい仕事をしてくれた十勝の力も称賛を送りたい。
それは、おいしいおいしい「とかちマッシュ」。
ばんえい競馬の故郷、十勝の恵みを受けて栽培された
絶品の道産子マッシュルームです。
今回のお正月は冷え冷えのカヴァとともに
少量多品種をちまちまつまめるタパス&ピンチョスがテーマ。
色々作ったレシピの中でも、特に人気だったのが
「マッシュルームのセゴビア風」。
可愛いマッシュルームのかさのなかに
にんにくや生ハムのみじん切りを詰めて、パン粉やオリーブオイルをかけて
オーブンで焼いたスペイン料理の人気タパス。
年末の買い出しにでかけたご近所スーパーに
それは見事な「とまちマッシュ」が入荷、
雪のように美しいホワイトと野性味あふれるブラウンの2色。
オーブンで加熱するので力強いブラウンをチョイスしました。
丁寧にぺティナイフの先で軸をくりぬいて、軽く塩コショウ、
そ~っと詰め物をかさの中に載せて、生のタイムを香り付けに。
耐熱皿に仲良く並べ、パン粉とオリーブオイルをかけて
オーブンで7,8分、美味しそうに焼けたら出来上がり。
熱々の「マッシュルームのセゴビア風」を
ふーふー言いながら、ぽんと一口でつまむ。
じゅわ~、口に中に美味しさが弾けていく。う、うま~い!
ニンニクと生ハムとオリーブオイルとタイムの香りに負けない、
マッシュルームの実力がひときわ際立つ一品。
この料理は主役のマッシュルームの出来で決まる。
一番の功労者は「とかちマッシュ」だ。
マッシュルームと言えば懐かしのナポリタンスパゲッティに入っているような
味もそっけもないほぼ主張ゼロのぴらぴらの薄切りキノコを想像しますが、
「とまちマッシュ」はまったくの別物。
大体、そのサイズからしてたくましい。
大粒のイチゴ「あまおう」くらいの大きさはある。
だからオーブン焼きしても情けなく縮こまる心配がない。
そして何と言ってもたくましい風味が素晴らしい。
おおぶりのマッシュルームをかみしめると元気な大地の香りが広がる。
17世紀にフランスで始まったマッシュルームの栽培には
麦藁の馬の敷き藁から作ったたい肥が最適とされていました。
日本国内では入手しにくい麦藁ですが、
十勝には自慢のばんえい競馬があります。
「とかちマッシュ」はばんえい競馬の厩舎からでる敷き藁を利用した
最高のたい肥で育てられた本場の美味しさを実現したマッシュルーム。
しかも十勝平野の冷涼な気候と豊かな清流がもたらすおいしい水、
マッシュルーム栽培には絶好の条件を兼ね備えているのであります。
じゃがいもにタラにタコにとかちマッシュなどなど、
北海道には美味しいスペイン料理に欠かせない食材が実に豊富。
年末年始とちまちまとタパスを作りながら
情熱の国スペインとと北海道の共通性を強く実感しました。
「なんもなんもさ~」という、大雑把というか、大らかな道産子気質と
「オ・ラ~」なスペインのラテン気質もどこか似ているのかもしれません。
本場スペインの料理人も
「とかちマッシュ」を目にしたら、腕が鳴ることでしょう。
キッチンで確かな北海道プライドを実感した年末年始。
北海道は、やっぱり、おいしい!
(写真は)
「とかちマッシュ」が主役の
「マッシュルームのセゴビア風」。
作り方は難しくありませんが、
マッシュルームの軸をちまちまくりぬくには
けっこうな忍耐と繊細さが要求されます。
大らかそうに見えるスペイン人も意外に細やかなのねと再認識。
お互いの料理を作ることで相互理解も深まります。

