マイホームの季節

薄曇りの月曜日。

頬に感じる春風はまだまだ冷たい弥生三月の朝、

ベランダから見える電線に一羽のカラスが止まっています。

ん?くちばしに何かくわえています。朝ごはん?

いや、違う、あれは枯れた草か木の枝。

そうか、カラスも春のマイーホームシーズン、なのですね。

カラスは春から夏にかけて繁殖期をむかえるのですが、

3月から4月はまさに巣作りの季節。

巣材になるような材料を求めて飛び回り、

卵を産みヒナを育てる巣をせっせと作るのがちょうど今頃。

外側は小枝や木片、または硬くて頑丈な素材を、

内側には羽毛や藁などのような柔らかい素材を利用して

居心地の良いスイートホーム作りに専念するのであります。

巣の材料も自然界にないものも賢く貪欲に利用、

最近では針金ハンガーを使った頑丈な巣も珍しくないそうですが、

今朝、目撃したカラスがくわえていたのは枯れた草のようなソフト素材。

おそらく外装工事は終了、内装にとりかかかっているものとみられます。

毎年、カラスの子育て時期には

ナーバスになった親ガラスの威嚇や攻撃に悩まされますが、

冷たい春風をものともせず、せっせせっせとマイホーム素材を運ぶ姿には

いじらしい親心を感じてしまいます。

マイホーム工事に忙しいカラスが干し草くわえて飛び去った後も

ベランダ周りには次から次と色々な野鳥たちがやってきて

ピーチク、チュンチュン、賑やかな朝の合唱を聞かせてくれます。

どんより曇った弥生の空の下、

鳥たちの世界も新年度の準備で大忙しなのでしょう。

ちなみにカラスは年中いる鳥なので、

それだけでは俳句の季語になりませんが、

季節を感じさせる言葉と合わせると、いくつかの季語が存在します。

春は「鴉の巣」、夏は「鴉の子」、冬は「寒烏」、新年は「初鴉」などなど。

鶯などに比べると、カラスに関する俳句はめっきり少ないものですが、

そう、春はマイホーム、「鴉の巣」で一句詠めるわけですね。

俳句歳時記で見つけた春の一句。

巣鴉を ゆさぶってをる 樵夫(きこり)かな 

                    大須賀 乙字

カラスの巣がある木をゆさぶるなんて、

カラスも危ない、いやいや、ゆさぶるきこりさんが、も~っと危ない。

情景を思い浮かべると、ちょっと冷や冷やする、春の一句であります。

カラスと人間の距離間にまだ余裕があったのんびりした時代だったのか。

春のマイホームシーズン、人間界だって何かと忙しい。

一羽のカラスにぼんやりかまけている場合じゃなかった、

さてさて、お掃除さっと済ませて、さあ、新しい1週間の始まりだ。

(写真は)

大倉山シャンツエの白いジャンプ台が

冬の名残をとどめる弥生三月の曇り空。

同じ曇りでも春の空は明るいライトグレー。

冬のチャコールグレーとはだいぶ違う。

月曜日が曇りでも、気持ちは明るい。

春の力って、すごいね。