ありがとしゃも
うららかな春の夕暮れ。
年度末、月末、週末が重なった昨日の金曜日は
夫婦そろって知人との食事会におでかけしました。
ちょっと隠れ家的な場所にあるお店をめざしてぷらりぷらり。
頬に当る柔らかな春風が心地よく、
お腹もちょうどよい具合に空いてきました。
うふふ、準備万端。
伺ったのは鶏料理の「直(じき)」の新店。
我が家からも近い本店に比べると店内は広く、
まず厨房と焼き場を囲む大きなカウンターが目に入ります。
奥の落ち着いたテーブル席に座り、まずはビールで乾杯。
くぅ~!旨いっ!
春本番だ。ビールが旨い(笑)。
「ほんと、お久しぶり~!」再会した笑顔が揃い、
和やかな春の宴の幕が開くのでありました。
ここは北海道でも珍しい近江軍鶏を食べさせてくれるお店。
滋賀から空輸で軍鶏を仕入れ、お店で一羽一羽さばいているので、
新鮮なお肉を堪能することができます。
寒い冬には濃厚な水炊きも人気ですが、
春の宴、まずは美しい前菜から始まりました。
鰆に帆立、蛍烏賊、小女子に筍など旬の味覚が
おちょぼ口サイズで盛り付けられています。
「お、この春3匹目のほたるいか」。夫の一言に思わず苦笑。
確かにね、お誕生日のお祝いの前菜でも食べたけどね、
蕗と一緒にさ、確かに、2匹。
ちいさな蛍烏賊をいちいちカウントする人も珍しい(笑)。
楽しいお喋りは盛り上がり、グラスは空き、ビールから赤ワインへ。
さあ、次々と焼きたての近江軍鶏の焼き鳥軍団が運ばれてきました。
じっくり炭火で炙られたももや胸の「正肉」、
「ねっく」と呼ばれる首肉、
部位によって味わい、風味、食感が全く違ことに驚きます。
「こちら、せぎも、でございます」と供された部位は初体験。
せぎも・・・?
「?」マークの私たちにお店のスタッフの女性が
くるりと背中を向けて、やおら、腰の上あたりをさすりはじめました。
「えっとぉ~、せぎもは、ここら辺にある内臓ですね」。
体を張ったプレゼンをありがとうございます。
どうらや「せぎも」とは「せ肝」、つまり腎臓のことらしい。
串に刺さった様子は赤みを帯びたお肉のように見えますが、
胴骨から手間をかけてはずさなければならず、
しかも少ししか取れない希少部位。
確かに。腎臓は、私たちの背中の方にありますもんねぇ(笑)。
羽二重のような白肌の「ささみ」はやや霜降りの焼き加減が絶妙、
かすかに効かせたハーブによって奥深い味わいがする「つくね」など
さまざまな工夫と丁寧な仕事によって
近江軍鶏の力強いお肉の魅力がストレートに伝わってきます。
「そして、さがりになります」。
さがり?「さがりって・・・あのさがり?横隔膜、ですか?」
「はい、横隔膜です」。
焼き肉ではポピュラーな「さがり」ですが、
軍鶏の「さがり」は、これまた初体験。
がらスープにする胴がらについている膜状の部位で
左右一対で一羽からごくわずかしかとれない希少品だとか。
きめ細かで歯ごたえのある食感、独特の旨さがあります。
う~ん、軍鶏を食べ尽くす春の宵。
「部位によって肉質も色も全然違うもんですね~」と嘆息した私に
お向かいのドクター氏がお皿の上の焼き鳥を指してさらりとこう仰った。
「ですね~、こっちは横紋筋で、こっちは平滑筋ですからね(笑)」。
さすが職業柄、筋肉の見分け方がプロフェッショナル(笑)。
もも肉や胸肉は横紋筋、せ肝は平滑筋ってわけですな。
ふむふむ、医学的、解剖学的に焼き鳥を楽しめたのも、初体験(笑)。
みんなで食べると、胃袋が大きくなるのか、
〆の近江軍鶏の絶品親子丼までしっかり食べた上に、
デザートの蕎麦アイスクリームもぺろり。
春の宴はぱんぱんのお腹と共に笑顔で再会を約束、お開きとなりました。
美味しかったです。ごちそうさま。
近江生まれの軍鶏に心からの敬意と感謝を。
ありがと。
(写真は)
ランチの人気メニューにもなっている
近江軍鶏の絶品とろとろ親子丼。
お米は美唄のおぼろづき、
お肉は滋賀直送の120日飼育の鶏。
オレンジ色に輝く卵の力が凄い。
濃厚で甘くてまるでウニを食べているかのよう。
そう、これはウニ丼を彷彿とさせる魔性の親子丼だ~。

