烏賊と衣替え
窓を開けたら夏の匂いした。
眩しい朝日に照らされた緑の葉には生命力がたくましく漲る。
もう、初夏じゃない。
はっきりと夏だ。
きょうの札幌の予想最高気温は25度。
空は真っ青に晴れ渡り、夏の訪れを高らかに謳っているようです。
札幌っ子が衣替えの目安とする北海道神宮祭も昨日で終わり、
夏の衣に替えるには絶好の日和となりそうです。
でんすけスイカにらいでんスイカ、夏の果物の出荷も始まり、
胃袋も衣替えです。
ご近所スーパーの魚売り場にも夏の便りが。
函館産のぴっかぴかのスルメイカが入荷していました。
道南に夏の訪れを告げるスルメイカ漁が今月1日に解禁、
ここ2年ほど不漁が続いていましたが、
今年は日本海側の来遊が早く漁模様も良いとのこと。
店先に並んだイカは小ぶりながら鮮度は抜群、迷わず手に取りました。
さあ、どうお料理しましょうか。
夜の海を抒情的に照らす漁火。
「烏賊釣り」は夏の季語にもなっていますが、
先頭バッターがこのスルメイカ、その後ヤリイカ、真イカと続きます。
夏の初めに獲れるスルメイカは小ぶりで身も薄く、
函館名物「イカソーメン」は
この走りのスルメイカが一番とこだわる地元っ子も多いと聞きます。
しかし、素人の包丁ではあの極細仕立ては難しそう・・・。
イカを前に悩む目線の向こうに立派な太ももが、いやいや、大根が(笑)。
そうだ!「イカ大根」にしよう。
実はスルメイカは焼いたり煮たりすることで旨みがぐんと増すのです。
小さなイカは身も柔らかいだろうし、これは美味しいイカ大根になりそう。
早速、野菜売り場で立派な大根1本を買い足して、いそいそ家路へ。
さあ、「イカ大根」調理スタート。
可愛いイカちゃんは鮮度抜群、ワタもするすると抜ける。
胴はちょっと太めの輪切りに、ゲソは半分に切って、
お醤油、酒、味醂にほんの少々のキビ糖、たっぷりの生姜の薄切りを加え、
まずはイカをさっと煮たら、硬くならないようにいったん取り出します。
あとは半月に切った大根を入れてことこと、ことこと。
旨みが染み込んだ煮汁で大根が鼈甲色に煮上がったら、
イカをお鍋に戻して、大根と味をなじませ、出来上がり。
本当は一日置いたあたりが一番食べ頃とされますが、
そんな殺生な(笑)、この魅惑的な匂い、食べずにいられましょうか。
大らかなやちむんの大皿に盛り付けて、
いったっだきまぁ~す!
ひゃあ~、美味しい!絶品!
自分で作った料理を絶賛するのもいかがと思いますが、
美味い物はしょうーがない(笑)。
夏の初めのスルメイカはあくまで柔らかく、噛めば濃い旨みが口中を満たし、
艶々と飴色に炊きあがった大根の美味さといったら。
冷え冷えのビールが進む進む、
「もうさ、この甘じょっぱい煮汁もさ、
真っ白いごはんにかけたくなっちゃうくらいだねぇ~」、
向かいの夫とはしたない誘惑にかられるほど、旨い。
居酒屋の暖簾を出したくなるほどの「イカ大根」でありました(自画自賛)。
日本人におなじみの海の幸イカには
各地で色々な呼び名や方言がありますが、
夏の初めのまだこぶりなものは市場では「バライカ」、
初夏に関東周辺で獲れる小さな若いイカは「麦イカ」というそうです。
獲れる時期と麦の収穫期が同じであることからついた呼び名とか。
じゃあ、6月のイカも薔薇の時季だから「薔薇イカ」・・・
なわけはありませんが(笑)、
海の幸と季節の移ろいを重ねる繊細な感覚って、ほんといいですよね。
烏賊を詠み込んだ素敵な一句を見つけました。
「生烏賊や 世は白妙に ころもがえ」(森川許六)
スルメイカはますます美味く、
夏服を着た女たちが美しい季節がやってきました。
(写真は)
居酒屋「のりちゃん」開店したくなる一品(笑)。
6月の衣替え烏賊を使った「イカ大根」。
大根はもちろん、鼈甲色になった生姜までも美味し。
ヤングなイカ見かけたら、また作ろうっと。

