時を駆ける

ご近所楽園「伊江島」への日帰り旅を決行した夏の沖縄旅4日目。

無事に那覇に戻り、南国の夜を楽しもうと繰り出したのが

久茂地にあるクラフトビール専門のビアバー「麦 BAKU」。

落ち着いて居心地の良い雰囲気、

気さくで親しみやすいお人柄のマスター、

そしてカウンターの向こうダイレクトビアサーバーが整然と並ぶ圧巻の光景。

喉も乾いた、お腹もすいた、期待度は200%。

さあ、飲む準備は万端(笑)。

沖縄県内はもちろん、日本全国、更にはベルギー、イギリス、アメリカなどなど、

日本中、世界中から取り寄せられた高品質の生きたクラフトビールが

最高の状態で提供されるビール好きにとっては天国のようなお店。

常時20種類以上の選りすぐりのビールが揃い、徹底した品質管理、温度管理、

更には炭酸濃度まで微調整された至極の一杯を求めて

この小さなお店に県外から訪れる常連客も多いと聞きます。

そんなマスター渾身の手書きのメニューをまずは眺めるものの、

「ひょえ~、どれもこれも気になる~、飲みたい~、決められない~」。

あまりに種類が多すぎて、軽いパニック状態(笑)。

「えっとぉ、とりあえず、ちょっとずつ色々飲んでみます?

100mlずつ3種類試せるテイスティングセットがありますから」。

カウンターの向こうからマスターが優しく助け舟を出してくれた。

ほっ、良かった。プレミアビールの海で飲む前に溺れるところだった(笑)。

「はい!そうします!んじゃ、まずは、沖縄のクラフトビール3種類で!」。

元気にオーダーしたのは

「ニヘデビール」と「宮古島地ビール」と「沖縄ブルーイング」。

わぁ・・・それぞれに微妙に異なる美しい黄金色をしています。

沖縄生まれ、沖縄育ちのビールでもこんなに個性が違うのですね。

まずは「ニヘデビール(ソフト)」。

本島南部の南城市玉城にある全国名水百選にも選ばれた

「垣花樋川(かきのはなひーじゃー)を源とする地下水で作られた地ビール。

2009年のインターナショナル・ビア・カップで金賞を受賞するなど、

沖縄県内のクラフトビールの先駆け的存在であり、

同時に今や沖縄を代表する地ビールとも言えます。

生きた酵母を濾過しない下面発酵のエールビールで

中でもソフトタイプは淡白ですっきりした味わいということなので、

まずは一杯目にオーダーしてみました。

明るい黄金色が南部の美しい海と太陽を思い出させます。

んぐっ・・・ごくっ・・・うっわぁ~、爽やか、すっきり、気持ちいい喉越し。

同時に元気な酵母、健やかな麦、清冽な水・・・素材の旨さが際立ちます。

これがビール本来の豊かな風味なのね~。

「ありがとう~!」。

大きな声でお礼が言いたくなった。

それもそのはず。

ニヘデビールの語源は「にふぇーでーびる」。

沖縄の方言で「ありがとう」を意味する言葉なのでした。

黄金色の美酒を生み出してくれた豊かな素材や生きた酵母菌、

それらを育んだ大いなる自然と製造者たちのたゆまぬ努力とこだわり。

出来上がったビールを幼子をあやすかのように大切に取り扱い、

最高、最適の状態で目の前に提供してくれるプロの技。

この一杯に関わったすべてに「にふぇーでーびる」です。

続く2番バッターは「宮古島地ビール」。

宮古島マイクロブルワリーで作られています。

抜群に美しい海に囲まれた宮古島特有の隆起珊瑚でろ過された、

ミネラル分たっぷりの地下水を使用した地ビール。

その名も「コーラルエール」をいただきました。

う~ん、先ほどのニヘデのソフトとはまた違った味わい。

まろやかで穀物の甘みをほのかに感じます。

ああ。麦の恵みをいただいているんだな~と実感する一杯。

そして3番手は「沖縄ブルーイング IPA」。

読谷村の嘉手納基地近くにできた新しいマイクロブルワリーで

場所柄かアメリカのクラフトビールの潮流を感じる力強い味わい。

「IPA」とはインディアン・ペールエールの略で

イギリスからインドへビールを船で運ぶ際、品質を保持するため、

ホップを増やして苦味を強めたとかいう逸話から名づけられた、

ガツンと苦味のある男性的な魅力のあるエールビール。

女子的には3番手に飲むのがちょうど良いかも。

うふふ、沖縄クラフトビール手始めの三番勝負、打順は完璧でした。

え~っと、次の三種類は何にしようかなぁ~?

ちっこいビール魂に火が付いてしまいました(笑)。

「でもぉ、あんまり量はたくさん飲めないんだよね~、悔しい~」なんて呟く私に

マスターが素敵なことを教えてくれました。

「いいんですよ、ゆっくり、じっくり、味わって下さいね。

クラフトビールは生きているからグラスに注がれた後も熟成しているんです。

冷えた一口目、グラス半分くらいの時、温度が上がったグラスの底あたり。

どんどん、香りや風味が変わっていくのを楽しんでみて下さい。

ワインのように、生きたビールはアロマが開いていくんですよ」。

知らなかったぁ。

酵母が生きているクラフトビールは

時を楽しむお酒でもあったのですね。

キンキンに冷やして、ガンガンがぶ飲みするだけが、ビールじゃないんだ。

居心地のいいビアバーで

カウンター越しの会話や地元の人たちのお喋りをBGMに

濃密にふけゆく南国の夜のひとときを

黄金色の一杯とともに過ごす。

麦の一滴は

グラスの中で時を駆ける。

(写真は)

沖縄クラフトビールが勢ぞろい。

左から「ニヘデビール(ソフト)」

「宮古島地ビール(コーラルエール)」

「沖縄ブルーイング IPA」

三者三様の味わいと喉越しと旨さがありました。

そうそう、「麦 BAKU」特製のフィッシュ&チップスも美味だった。

クラフトビールでマリネしたキャットフィッシュを

こんがり揚げたボリュームある一品。

この晩・・・カロリーは・・・忘れることにした(笑)