あたらしいまち

夏の朝。

開け放した窓から爽やかな空気が通り抜けていく。

すっきりと青い空にはさっとひと筆はいたような夏の白い雲。

きょうも暑くなりそうだ。

元気をいっぱい蓄えた朝日に挨拶をすませたら、

夏の沖縄旅のリポートを続けましょう。

旅の5日目は巨大ショッピングモール開業で注目される本島中部へ。

北中城村に4月25日オープンした「イオンモール 沖縄ライカム」。

太平洋を望む広大な高台に出現した超メガ級複合商業施設は

南国らしいリゾート感があふれ、オープンエアな作りが開放的。

ショッピング、グルメ、エンタメまで1日中楽しめる仕掛けが満載、

1階エントランスの美ら海水族館のようなアクアリウムも見事だし、

沖縄のお酒が勢ぞろいするリカーショップでは

離島の珍しいお酒を眺めているだけで旅気分が味わえました。

ぐるりとひと巡りするだけであっという間に時間が過ぎてしまい、

さあて、そろそろおいとましましょうか、

その前に、と立ち寄った洗面所へ向かう通路に

何枚かの白黒写真のパネルが飾られていました。

ん~?なだらかな丘陵で体格の良い男性たちがなにやら楽しんでいる様子。

手にしているのは・・・ゴルフクラブ?

もしかして、ここって、もとはゴルフ場だったの?

写真の説明書きに書いてありました。

この沖縄ライカムが建っている土地は

かつてのキャンプ瑞慶覧泡瀬ゴルフ場だったのでした。

泡瀬ゴルフ場は、戦時下、米軍が強制的に接収した旧比嘉集落に作られました。

白黒写真に写っているゴルファーは米軍将校たちなのかもしれません。

太平洋を望む丘陵につくられた美しいゴルフコースは2010年7月に返還され、

この広大な跡地を返還地全体で街づくりをしていこうと始まった計画が

「北中城村アワセ土地区画整理事業」。

イオンモール開業はその一環であり、華やかな第一楽章。

今後、「バランスの取れた、世界一のコンパクトシティー」を目指し、

病院や住宅、公園の造成が計画されています。

そう、新しいショッピングセンターのまん前で建設中だったのは

計画の中の大病院の建物なのでした。

本島中部は那覇や首里エリア、南部や北部に比べると

これまで観光客も素通りしがちでしたが、

この「あたらしいまち」の巨大プロジェクトは

中部圏経済の大きな起爆剤となりそうです。

この泡瀬ゴルフ場跡地は沖縄自動車道の北中城ICと沖縄南ICにも近く、

アクセスにも恵まれ、広域からの集客も期待できます。

地元北中城村は世界遺産の「中城城跡」や国の重要文化財「中村家住宅」など

歴史的、文化的な観光スポットも多く、こうした集客拠点ができることで、

ひと、もの、活気の流れが大きく変わることが期待されています。

「まち」が生まれようとしている。その胎動を直に感じました。

しかし、ひとつだけ、謎が残っています。

目印の交差点やモールの名前にもなっている「ライカム」って?

なんとも不思議な響きを持つ言葉。いきなりカタカナだし・・・。

英語?日本語?沖縄の言葉?

実は、「ライカム」とは「Rycom」=「Ryukyu command」の略語。

かつてこの周辺エリアにおかれていた琉球米軍司令部の通称でありました。

米軍統治時代、この辺りは重要な場所だったのです。

イオンモール沖縄ライカムの公式HPにも由来が書かれていました。

「ライカム交差点」「ライカム坂」などの地名が今も残り、

沖縄の人々に広く浸透し、知られていることから、

ショッピングモールにも「ライカム」の名がつけられたということです。

「言葉」に「歴史」あり。

本島中部に生まれつつある「あたらしいまち」。

交差点や坂道や巨大モールの名に残る「ライカム」という言葉。

ちょっと不思議な響きには

沖縄が歩んできた歴史が織り込まれていました。

旅することは、知ること。

旅は最高の師であります。

(写真は)

シーサーの競演。

沖縄県内のアーティストたちが競作した

個性あふれるシーサーたちが見送ってくれました。

「ライカム」に生まれつつあるあたらしいまちのコンセプトは

「観光 健康 環境 防災」の3Kプラスワン。

大きな病院に多目的アリーナ、マンションも建設予定。

開発終了後の県全体の経済効果は242億円にのぼるそうです。

現在進行形のまちづくりを体感し、ライカム交差点を過ぎて、

さあ、330号線を那覇へと戻りましょう。