夜のお花見会

夜に咲き、朝に花を落とす。

ひと晩しか咲かないサガリバナの季節。

宮古島の夏の「夜のお花見会」は幻想的な美しさに満ちていました。

南国の自然が生み出す奇跡にしばし陶然。

サガリバナ・・・苦労して逢いに来たかいがありました・・・。

夏の沖縄旅6日目はステイ先の那覇から早朝のJTAで宮古島へ。

伊良部大橋開通で5つの島がひとつながりになった宮古島を起点に

レンタカーで伊良部島、下地島、池間島を一気にアイランズ・ドライブ。

島の中心部平良の人気居酒屋「さんご家」で島ごはんを堪能、

「リッコ」の絶品ジェラ―トを楽しみながら、夜の深まりを待ち、

いよいよ、宮古ナイト「秘密の計画」、

南国の神秘の花「サガリバナ」を観賞する「夜のお花見会」へ。

「添道(そえどう)サガリバナ」。

宮古島平良の郊外に広がるサガリバナの群生地は

地元の宮古島環境クラブが保護、植樹するなどして環境保全されています。

6月下旬から7月上旬の開花シーズンには「夜のお花見会」が開催、

特に去年からはライトアアップもされて、

観光客も懐中電灯なしで楽しめるようになりました。

まるで私の「旅中旅」に合わせて咲いてくれたようで、

運命すら勝手に(笑)感じる。

しかし、問題は、「添道サガリバナ群生地」へのアクセス。

地図を見ても人家の途絶えた郊外のはずれ・・・というか目印がない。

ホテルのスタッフも「聞いているのですが、まだ行ったことがなくて・・・」と

ネットで調べた情報をプリントアウトしてくれたのですが、

ありがと、それ、私もチェックしてあるのよね~、

つまりアクセスに関する確かな情報がほとんどないってことで・・・

大丈夫か、会えるのか、サガリバナ。

「あの、これからサガリバナ見に行こうと思うんですけど、場所わかります?」

ダメもとで「さんご家」でお勘定してくれた女性スタッフに聞いてみたところ、

「あ、キレイですっ、すっごくキレイですよ!ぜひ行って下さい!

添道、私の地元に近いんですよね」。

「えっ!本当?道順わかります?」、さっそくガソゴソ地図を広げる。

「え~っと、う~んと・・・目印がね~」

「ないんですよね~?」

「まあ・・・ええ・・・ねぇ(苦笑)」。

とにかく、手持ちの情報を総合した結果、

S建設コンサルタント会社までたどりけば、ほどなく看板があるそうで・・・。

サガリバナを求めて、インディ・ジョーンズ気分でレンタカー発進。

平良のネオンが遠ざかる・・・家々がまばらになる・・・不安・・・。

お?ちょっと大きめの建物が見えた。目印の建設コンサル会社だ。

ネット情報と根拠のない勘だけを頼りにそろそろと進む。

すでに周りは真っ暗、両側は畑なのか、茂みなのか、

判別不能な島の細い道をおどおど走るうちに・・・

「サガリバナ」!

ヘッドライトに照らされた小さな小さな看板を発見!

ほぇ~、良かったぁ~、どうやら、目指す方向は間違っていなかった。

真っ暗な島の夜道におとぎ話のようにぽつりぽつりと現れる看板を頼りに

ぐるぐる、ぐるぐる、どこをどう走ったかわからないが、

いつの間にやら、夜のお花見会へ向かう他の車が増えてきた。

ホタルのように連なるテールランプについていくと・・・

夜の闇にいきなり車、人の行列、誘導するライトの灯りがまたたいた。

真っ暗闇のなか、

「添道サガリバナ 夜のお花見会」の大きな看板が浮かび上がっている。

オリオン生もあきらめて(笑)、時間調整して、島の夜道を冒険ドライブして、

やってきました、運命のサガリバナにいよいよ対面です。

スタッフに誘導され、細い道に設置された駐車スペースに縦列駐車、

どこからやってきたのか、驚くほどの人の行列に続いて、

いざ、夜のお花見会へ。

宮古島の漆黒の夜。

おとぎ話のような灯りが点々と連なっている。

ふわり・・・何・・・?なんなの・・・?この甘い匂いは・・・?

姿よりも先に神秘の花の幻想的な香りが鼻腔をくすぐる。

次の瞬間、目の前に、この世の奇跡が、咲いていた。

薄いピンク色の花びらが夜空に開く花火のようだ。

亜熱帯の緑の森に美しい花火が花房となって幾つも幾つも揺れている。

これが・・・サガリバナ。

あなたに出逢うために、私はここまで来た。

あまりの感動に、言葉を失う。

夏の夜、夕闇とともに芳香を放ちながら美しい花を咲かせ、

夜明けには惜しげなく花びらを散らせ、

あたり一面が花のじゅうたんになるという。

たったひと晩しか咲かない神秘の花。

なぜ、あなたは、そんな切なすぎる咲き方を選ぶのか。

「それは命を次の世代につなぐためなんですよ」。

サガリバナガイドを務める宮古島環境クラブのスタッフが教えてくれました。

夜に飛ぶある種の蛾に受粉してしてもらうため、

真夜中にかけて甘い匂いを放ちながら花を咲かせるのだそうです。

南国の夜、わが身の力を振り絞って花を咲かせ、次の世代に命をつなぎ、

夜明けとともに、ぽとりと、花を落とすサガリバナ。

切なくも美しい自然が紡ぐ物語。

添道には300本ほどの白やピンクのサガリバナが

ファンタジーのように美しい花のトンネルを作りだしています。

本来は懐中電灯がなければ見られなかった花の姿も

ライトアップのおかげで夜のお花見が実現、写真撮影もばっちり。

「このサガリバナは自生しているものなんですか?」とガイドさんに聞くと

「いえ、この奥の方で自生しているサガリバナを保全、保護し、

その種子から育てた苗木を一本ずつ植樹して並木道を作っているんです」。

夜のお花見会は自然と人のコラボレーションだったのですね。

本来はマングローブ後背地に分布するというサガリバナ。

実は自生している添道サガリバナの由来は謎。

ここは古島西岸クゥーラ(小浦)の河口から3キロ上流に位置し、標高20m。

河口付近に広がるマングローブ林からは距離があります。

3㎞先の海岸や河口にあった果実(種子)が津波で運ばれ定着したのか、

それとも人が植えたのか・・・?

まだわかっていないそうです。

宮古島の夏。

夜にしか咲かない神秘の花。

サガリバナには「謎」がつきまとう。

何もかもわからないからこそ、

人はあなたに魅せられる。

ふふっ・・・。

甘い匂いの花房から

ひそやかな笑い声が聞えたような気がした。

南の島の一夜限りのファンタジーに酔いしれた。

(写真は)

「サガリバナ(Barringtonia racemosa)」。

真夜中に微笑む謎の美女のようだ。

宮古島の夏の真夜中、

迷いながらでも添道めざして下さい。

誘惑される価値のある美しい花。