だいずうまい一杯
朝淹れたての温かいコーヒーが美味しい。
素足でいると指先が少しひんやりする。
桜並木のてっぺんの葉っぱが2、3枚赤く色づいている。
夕餉どき、どこからか秋刀魚を焼く匂いが漂ってきた。
ああ・・・夏がゆく、小さな秋の気配がする。
朝から小雨模様の札幌、
今日の予想最高気温は23度と平年よりかなり低め。
那覇は31度、宮古島は30度の予想、季節が一個違うな~。
あの青い夏空を思い出し、再び「夏の沖縄旅」7日目リポート続けましょう。
那覇ステイからJTAで宮古島へと飛んだ1泊2日の「旅中旅」。
伊良部大橋開通でひとつながりになった、
宮古島、伊良部島、下地島、池間島、来間島を2日間でアイランズ・ドライブ、
夕方5時発の那覇へ帰る飛行機の時間まで宮古島を満喫中。
宮古島を去る前に何としても食さねばならない「宮古そば」。
当てにならないナビよりも頼りになったのは
ホスピタリティー200%の宮古の少年たちでした。。
放課後の自転車少年たちに道順を教えてもらって、
レンタカーは無事にやってきました「こじゃそば」。
昭和7年創業、80年以上の歴史と伝統を大切に守り続けてきた老舗、
「古謝そば屋」さんであります。
おお~、何と趣のある佇まい。
緑のお庭に囲まれた赤瓦の古民家カフェ風の建物が素敵。
木をふんだんに使った店内は天井が高く、大きくとった窓からは
バナナやグアバ、フクギ、ハイビスカスにブーゲンビリアなど
元気に育つ南国の草花がゆったり眺められる作りになっていて
お洒落でいながら、どこか昔懐かしい居心地の良い空間。
そば一杯食べにきたのに、ついつい長居をしてしまいそう。
「あ~、お腹すいた~」。
南国の緑と鮮やかな花が咲くお庭がよく見える窓際の席に座り、
さっそくメニューを眺めます。
「宮古そば」「ソーキそば」「てびちそば」「なかみそば」「野菜そば」、
う~ん、どれも美味しそうで迷いますが、
お?色々ついてきそうなセットメニューがありますぞ。
てなわけで「そばセット」を注文。
宮古そば、じゅーしー、日替わりおかず、もずく、お飲み物がついて750円。
旅人が泣いて喜ぶコスパメニュー。
とっくにお昼どきを過ぎていますが、次から次とお客さんがやってきて
広い店内はほぼ満席状態、創業80年の老舗は現役繁盛店。
「ソーキひとつぅ!」注文を伝える店員さんの声と
地元の人たちの宮古言葉が高い天井に心地よく吸いこまれていく。
はじめて訪れたのに、どこか懐かしく、ほんと長居したくなる。
島の子供たちに「こじゃそば」と呼ばれ、親しまれているわけだよね。
「はい、そばセットです!」。
宮古そばにじゅーしー、今日のおかずは人参シリシリ。
これはボリュームたっぷり、女性なら2人でシェアしても十分な量があります。
さて、注目は、本場宮古島でいただく「宮古そば」。
本島の沖縄そばとは特徴を異にするという宮古のソウルフード。
何が違うって、まず麺が違う。
宮古そばの麺は本島に比べると微妙に細く、ちぢれのない平麺。
細身ではありますが、結構コシがあって、心地よい噛みごたえがあります。
その麺が透けてみえるほど澄んだスープはあっさりしながら深い滋味が。
細い麺がこの澄んだスープによく絡んで、これは、旨い。これはやばい(笑)。
最後までしっかり飲めるスープ、ついつい食べ過ぎてしまいそうだ。
「『こじゃそば』、だいず(宮古方言=すっごく)美味いさぁ!」
道案内してくれた少年たちに心の中で伝えるのでありました。
そしてもうひとつの注目ポイント、
お肉にかまぼこといった具は、ふ~む、ちゃんと麺の上に載っている。
「麺と麺の間に具が隠れている」という有名な宮古そばの伝統は
今では本場でもあまりお目にかかれないと聞いていましたが、
この老舗も例外ではないようです。
宮古空港で買ったディープな地元本によれば、
「麺の間に具を隠す」といった伝統のルーツは実に多くの諸説があるらしい。
「昔は兄弟が多かったから、具の多い少ないでケンカしないように、
親が気を使って(笑)麺の間に隠した」説。
「その昔役人が来た時に年貢を多く納めずにすむよう、具を隠して、
ウチはこんなにヒンスーヤー(貧しい家)ですよ~とアピールした」説。
「宮古のそば屋は女性が切り盛りすることが多かったので、
そばの見た目を気にせず、小さな子供でもお手伝いできるように
麺の間に具を隠した」説などなど。
どれももっともで、どれも本当に思える宮古そばの謎の真相。
そしてどれも宮古の暮らしの歴史を感じさせるエピソードばかりだ。
昭和7年に手打ちそばの食堂として始まった「古謝そば」。
お店のHPによれば「こじゃそば」にも歴史あり。
太平洋戦争によって宮古島も激戦地となり、台湾に疎開しますが、
昭和21年、古謝一家が宮古島に戻ってくると家は焼失、
そばを作る機械も軍を介して売り払われていました。
1年後、人手に渡っていたそばの機械を友人のつてで買い戻すことができ、
なんとかそば屋を再開しますが、肝心の原料である小麦粉が足りない。
戦後しばらくは出来上がったそば麺を
各家庭に配給される小麦粉と交換することでまかなっていたそうです。
こうして宮古の人々の絆によって復興した「こじゃそば」は
昭和28年には繁華街の下里に支店を開店、
いちはやくジュークボックスも取り入れ、
当時の宮古のトレンドスポットとして大層な賑わいだったそうです。
だいず(すっごく)美味い一杯の宮古そばに歴史あり。
南国の緑が美しいお庭に囲まれた赤瓦の古民家カフェ風の店内で
しばし、宮古の歴史に思いを馳せる遅い昼ごはん。
澄んだスープと細くてコシのある麺が特徴の宮古そば。
昔はそばにありついた島の子供たちは
食べる前にまっさきに麺を箸で起こして、具の数や大小を確認、
それから安堵して、麺をすすったものだそうです。
ほほえましい光景がふと瞼に浮かびます。
宮古そば。
歴史も味わいたい、だいずうまい一杯です。
(写真は)
島を離れても無性に食べたくなる宮古そば。
旅人も島の風景とともに
この味を懐かしく思い出すに違いない。
窓から立派なバナナの木が見えたっけなぁ。
初めてなのに懐かしい「こじゃそば」。
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