センチメンタル・ドーナツ

いくつになっても懐かしい。

丸くて甘くて穴があいたドーナツ、

大人を子供に戻してしまう魔法のおやつ。

一口頬張ると、なぜだか、少し泣きたくなる。

センチメンタル・ドーナツ。

プチドライブで訪れた札幌郊外の人気店「ふわもち邸」。

昨日はカフェで頂いたベーグルサンドをご紹介しましたが、

このお店のもうひとつのご自慢がザ・ふわもちなドーナッツ。

卵色の壁が可愛い3階建ての建物の1階のショップで

ふっくらキュートなドーナツを買うことができます。

みるく、ごまあんこ、シナモン、さくさくショコラ、豆乳きなこ、

紅茶オレンジ、クランベリーカスタード、抹茶オレオなどなど

ずらりと並んだラインアップに舞い上がってしまいます。

ベーグルサンド完食でお腹はぱんぱんなのに、

どれにしようか、真剣に品定め、甘党の本能は怖ろしい(笑)。

まずは一番シンプルな「みるく」と「シナモン」、

そして夫のリクエストの「アップルシナモン」をチョイス。

ホントにお腹いっぱいなのに、「ひとつだけ半分こする?」と

帰りの車の中でドーナツの袋をゴソゴソ、夫を共犯に引き込む。

甘い誘惑には二人で負けましょう。

ではでは「シナモン」を半分に割って、早速試食。

ふわん・・・半分に割った瞬間の手ごたえがすでに優しい。

助手席でさっそく、パクリ。

おおお・・・まさに正真正銘ふわふわ&もちもちな食感。

まるで赤ちゃんの柔らかいほっぺみたい。

ふわふわにとろけ、もちもちに感動、鼻をくすぐるシナモンの香り。

あまりに優しい味わいに泣きたくなってくる(笑)。

いったいどんな秘密が隠されているのでしょうか。

どうやら生地は道産小麦をベースに北海道産の牛乳をたっぷり使用、

これが魅惑の「ふわふわ」感に、

そして北海道産のじゃがいもを加えることで「もちもち」感を出しているとか。

へぇ~、道産じゃがいもが誘惑の「もちもち」の秘訣だったんだ。

道産子のキッチンにいつでも待機している身近な食材、

もちもちドーナッツの材料になるのね~。

じゃがいもは、エラい。

子供の頃、ドーナツは、仕事を持ち忙しい母が

たまに作ってくれた、貴重な「手作りおやつ」だった。

オーブンも電子レンジもない時代、

台所の卵と牛乳、小麦粉さえあれば作れる昭和のおやつ。

「ね、穴開けてね!まぁ~るくして、ちっちゃな穴開けてね!」。

生地をこねる母のそばにひっついて幼い私は連呼したものだ。

「わかった、わかったから、油はねるとあぶないから、、気をつけて」、

はしゃぐ子供を制しながら、母はがんばって作ってくれたけど、

我が家の手作りドーナツは残念ながら、

絵本やお店みたいな穴あきドーナッツにはならなかった。

生地が柔らかすぎて丸いリングにならなかったり、

膨らみすぎて、穴が消滅したり。

それに家で揚げたドーナツの表面はなんだかツルツルしていて

仕上げのお砂糖をまぶそうにもうまくひっつかない。

製菓用のグラニュー糖なんかじゃなく、ごく普通の白砂糖、

それが所々ぺとっとひっついていたり、はげていたりのまだら状態。

時に芯まで揚がっていなかったり、反対にちょっと焦げちゃったり。

しかも最初から最後まで油のそばにひっついていたせいで、

肝心の食べる段になって、胸やけを起こしていたこともあったなぁ。

そう、家のドーナツの思い出といえば実は残念な記憶ばかり。

料理上手な母だったが、お菓子作りに専念できる時間の余裕はなかったのだ。

だけど、芯まで揚がってなくても、ちょっと焦げていても、お砂糖がまだらでも

ふだん忙しい母が台所にいて、おやつを作ってくれることが何より幸せだった。

いつもは天ぷらを揚げる鍋から甘い匂いがしてくる、特別な時間だった。

お店みたいな穴あきドーナツじゃなくても、

世界でいちばんおいしいドーナツだった。

ケーキのようにリッチなドーナツ、

ふわふわもちもちな優しいドーナツ、

NY仕込みの本格派ドーナツ、

形も材料もトッピングもとびきりのドーナツを味わうたびに、

子供の頃のちょっとできそこないのドーナッツを思い出す。

どこにも売っていない精一杯のおやつだった。

ドーナツを食べるたび、いつも少しだけ、切なくなる。

(写真は)

赤ちゃんのほっぺみたいなふわもち邸のドーナツ。

それは優しい味がします。

まずは「みるく」か「シナモン」で

生地の美味しさを確かめてみて~。

優しい気持ちになるおやつです。