みだくなすな女王さま

「みだくなす」から女王様になったフルーツ。

果物王国、山形が誇るシンデラレラ・フルーツ、

その名は「ラ・フランス」。

果物は「見た目」じゃない。

大学時代の友人が「ちょっと早いお歳暮ね♪」と

故郷、山形自慢の逸品果物を送ってくれました。

平たいダンボール箱を開けると・・・

おおお~!でかっ!何と立派な「ラ・フランス」でありましょう。

グレープフルーツほどもある緑色した大玉の果実が

整然と並んでいるではありませんか。

スーパーの果物売り場にはまず並ばない特級品、

高級料亭あたりに恭しく納められるハイレベルなお梨さま。

あ~楽しみ楽しみ。

緑の梨がとろける甘さ、夢見心地の芳香を放つ「食べ頃」まで

クリスマスを心待ちにする子供のように

「追熟」していく様子を大事に大事に見守りましょう。

毎日毎日、そっと緑色の肌をなでながら・・・。

だって、この果物の女王さま、

「見た目」では完熟の度合いもわからない、

ちょっと引っ込み思案なシンデラレラ・フルーツなのです。

今でこそ、果物の女王と言われる「ラ・フランス」ですが、

その昔は「みだくなす」というあだ名をつけられていました。

「みだくなす」とは山形の方言で「見たくなし」、

つまり「みばえが悪く、かっこ悪いもの」という意味。

緑色の肌に薄茶色のそばかすを散らしたような果皮、

ゴツゴツとして、いささか不格好なフォルムから

日本に持ち込まれた当初は

かなり可哀そうな名前で呼ばれていたのです。

1864年、フランスのクロード・ブランシュが発見し、

そのおいしさから「我が国を代表する果物」として

「ラ・フランス」と名付けられた品種は

明治36年に日本に、山形県には大正初期に入ってきましたが、

その「みだくなす」と栽培に手間がかかることから

当初は主力品種の「受粉樹」として植えられたのでした。

つまり、あくまで受粉を促す裏方、日蔭者(涙)として、

パートレットの畑に細々と植えられていた「みだくなす」。

ぼろを着せられ働かされていたシンデラレラのよう。

しかし、昭和40年ごろから缶詰用のパートレットから

生のフルーツへと需要が移り変わり、

「ラ・フランス」の秘めたるポテンシャルに一躍脚光が。

陶然となる芳香、とろける甘さ、したたる果汁・・・

ぼろを脱いだ「みだくなす」は果物界の女王として君臨、

今や高級フルーツの代名詞となりました。

まさにシンデレラ・フルーツ物語。

「ラ・フランス」に初めて出会ったのが

バブル真っ只中の超高級寿司店のカウンター。

板前さんが紫の風呂敷に座らせていた武骨な果物を手に取り、

「日に日に熟れて食べ頃にはとんでもなくいい香りになるんですよ、

見た目は悪いですけど」と見せてくれたのを覚えています。

バブリーな思い出(笑)と「みだくなす」よ。

「ラ・フランス」は別名「バター・ペア」とも呼ばれます。

特有の芳香ととろける果肉、滴る果汁・・・

バターのような梨、という別名も納得。

祖国を代表する名前を付けられながら、

異国日本では「みだくなす」と呼ばれ、

今や女王さまとして君臨するシンデレラ・フルーツ。

あなたが辿った波瀾万丈物語を追想しながら

めくるめく「追熟」の時をゆっくりと待ちましょう。

人は見た目が?割とか言うけど、

果物は、見た目、じゃない、よね。

(写真は)

「みだくなす」から女王さまへ。

早く美味しくなぁ~れ・・・♪

もういくつ寝ると、食べ頃かな~。