追憶ぼたんえび
ああ・・・、
口の中で・・・とろける・・・甘み&ぷりぷり感。
もはや天国レベルの美味さだ。
旬のボタンエビにノックダウンの春。
三月生まれの私、
昨日土曜日は少し早めのバースデーランチにおでかけ。
フレンチ、イタリアン、スペイン料理もいいけれど、
お魚の美味しい春だし、気軽にわいわいも楽しいし、ってことで、
今年は「ご近所で評判の回転寿司」に決定。うふふ。
息子も遠くに離れて以来、ご無沙汰だった間に
徒歩圏内に大人気のお店もできましたしね~。
さあ、小雪まじりのちょっと冷たい春風のなか、いざ、出陣!
しかしめざす回転寿司店は超人気でいつも満席、
ましてや週末のお昼どき、相当待つのかな~と案じましたが、
いやはやホントに便利な時代です。
「スマホで事前受付ができちゃうよ~」と知人から聞きつけ、
家を出ると同時に早速、サクサク操作、「65番」ゲット。
本日のスポンサー、実家の母(ありがとう!)と合流し、
夫と母と私の3人、円山界隈を歩くこと10分、お店に到着した頃に
「65番のお客様~」とベストタイミングで番号を呼ばれる。
ネット時代万歳!(笑)。
「あらあら、画面で注文できるの、面白い~!」。
めったに回転寿司に来ることのない母が
最新式回転寿司スタイルに目をまんまる、大ウケ。
平均年齢のかなり高い(笑)三人連れにとっては
お寿司のテーマパークに来たような楽しさがあります。
このエンターテインメント性が魅力なんですよね~。
いざいざ、オ~ダ~!
よし、お誕生日だもん、
キンキラキンの高いお皿から注文するぞぉ~(笑)。
「遠慮しないでどんどん、食べてね~」と
太っ腹な母の言葉に背中を押され、いや押される前から(笑)、
入店直後から目をつけていた本日のお薦めネタを注文。
本鮪の二種盛りに春のヤリイカ三種盛り、
そして今が旬、ぷりっぷりの大ボタンエビ豪華二貫盛り、
ホントに遠慮なく(笑)オ~ダ~!
まずは本鮪、美しい赤身とローズ色の中とろが
口の中で魅惑の協奏曲を奏でる。
春のヤリイカは大葉の緑が透けるほどの活きの良さ。
そして、圧巻が豪華大ボタンエビ。
まさに鮮やかな牡丹色に輝く海老がど~んと一皿に。
頭から尻尾まで20cm超えの巨大ボタンエビまるまる一尾の握りに、
つやつやの卵と海老味噌を載せた軍艦巻きの二種盛り。
堂々のヴィジュアルに圧倒される。
「一口で入らなぁ~い」なんて言いながら
大口開けて巨大ボタンエビの握りをパクリ。
舌や口腔を跳ね返すかのようなプリップリ感ののち、
じゅわぁ~と広がる甘みと旨みがたまらない。
とその瞬間、私の脳裏に遠い記憶の森からある場面が蘇った。
「こ、これは・・・あのときの・・・室蘭の・・・輪西町の・・・」。
強烈な美味しさに思わずタイムスリップ。
傍らの母に思わず問いかける。
「このボタンエビ、あれ、あそこの、輪西の、あれ?何寿司だったっけ?」
もぐもぐ、ウンウンとうなづく母も同じ思いだったようですが、
「そうそう、あのお店のね、あれ、思い出せない、何寿司だった?」。
子供の頃、お給料日などによく連れていってもらった近所のお寿司屋さん、
そこで食べた噴火湾産のボタンエビを2人同時に思い出したのですが、
肝心のお店の名前が思い出せない。
美味しい記憶がしっかり舌に刻まれているのに。
そうだった。
子供の頃、生の握り鮨が苦手で
折角お寿司を食べに行っても、玉子や干瓢巻きしか食べられなかった。
でも、そのお寿司屋さんで生のボタンエビを恐る恐る食べ、
あまりの美味しさに仰天、以来、他のネタも克服、
生の握り寿司を食べられるようになったのでした。
私にお寿司の美味しさを開眼させてくれた大切な店。
なのに、すっかり母娘して名前を忘れてしまった・・・。
う~ん、う~ん・・・家に帰ってからも気になって、
記憶の森を捜索しているうちに、あ、思い出した!
こ・・・こう・・・幸・・・幸寿司だ!
今もお店があるのかなぁ。
ネット検索してみると、室蘭の地元紙の記事を発見。
「輪西最後の寿司屋が閉店」。
2011年秋の記事だった。
そうか・・・なくなったのか・・・思い出の幸寿司。
輪西町の4条通り、46年続いた老舗。
腕の確かなご主人と奥さんが始めた幸寿司は魚は目利きで仕入れ、
穴子に干瓢、椎茸、玉子、そぼろまで一から手作り。
江戸前の基本にこだわったニキリにツメも抜群だった。
素材に胡坐をかかない誠実な「仕事」をしたお寿司は
子供の舌にも本物の味を優しく教えてくれたのです。
室蘭が好景気だった時代は7、8人の職人を抱えていましたが、
元号が平成に変わる頃にはご主人一人になり、
そのご主人も体力気力の限界を迎え、
5年前の秋にひっそり暖簾を下ろしていたのでした。
「室蘭の損失だ」。
閉店を伝える当時の記事にはある客のそんな言葉も。
製鉄会社の城下町だった輪西町、かつては10店以上あった寿司屋も
時代の趨勢とともに一店また一店と姿を消し、
気はつけば幸寿司は輪西最後の寿司店になっていた。
そのお店も、今は、ない。
豊かな噴火湾で獲れた美しいボタンエビ、
甘いツメがつやつや輝いていた穴子、
しっかり煮含められた干瓢に椎茸、
お弁当のとは全然違うお寿司屋さんの玉子焼き、
無口なご主人と愛想のよい女将さんの笑顔、
でっかな湯呑でふぅーふぃーしながらすすった上がり。
お店はもうないけれど、私の記憶の森にしっかり刻まれている。
お寿司の美味しさを教えてくれた幸寿司さん。
ありがとう。
バースデーランチ。
一番のご馳走は
追憶のボタンエビだった。
(写真は)
思い出の幸寿司を彷彿とさせた
昨日の巨大ボタンエビの雄姿。
美味しくて・・・やがてちょっと切ない味。
時の流れを思う春

