素顔の器
南国の強烈な日差しを浴びて
素顔の器たちが整然と並ぶ。
たくさんの陶工が働く里は
静かなエネルギーが満ちている。
日と火が作る用の美。
夏の沖縄旅2016リポート、旅の後半は本島編。
充実の八重山旅を終えて、石垣島から本島へ。
那覇初日の夜は市場の路地裏名店ビストロで
力強い沖縄食材を使ったお料理とワインを堪能。したのですが、
その「プチット・リュ」で運命の器に遭遇。
沖縄県立博物館の古陶を復元したという花型皿に
やちむんラブの旅人は大興奮。
旅のモチベーションが一層高まりました。
実はこの「プチット・リュ」、ある陶芸家との出会いがきっかけで
1年ほど前からお店の器をすべて
沖縄の焼きもの「やちむん」に入れ替えたのだそうです。
確かに、マンボウフリットが盛りつけられた花形皿も
伊江島小麦のガレットのお皿も
沖縄のハイビスカスや月桃のハーブティーを入れた片口も
あの晩楽しんだお料理のすべては
個性あふれるやちむんの器で供されておりました。
長年、公設市場の路地裏で美味しい料理を出してきた
名ビストロの器がすべてやちむんに入れ替わったことは
地元ファンの間でも話題になっているようです。
かつて柳宗悦はやちむんについて著書「手仕事の日本」の中で
「その形において、釉において、色において、模様において、
皆沖縄であることを語ります」と記していますが、
器まるごとで沖縄を表現するやちむんのエネルギーは
シェフの創作意欲をさらにかきたて、
お料理もさらにパワーアップしているのでありましょう。
器と料理の熱いマリアージュ。
旅の後半、那覇初日の夜から素敵な発見に恵まれ、
心もおなかも大満足して爆睡、翌朝はすっきり目覚め、
常宿ホテルのいつもの素敵な朝食ブッフェで爆食い(笑)。
新鮮サラダにアーサー入りオムレツ、島野菜チャンプルー、
クロワッサンにそうそう、ここのチョコデニッシュがまた旨いのよね~。
昨夜あんなにビストロフレンチ食べたのに、
どうしてこんなに入るのか?旅は最大の食欲増進剤だ。
南国フルーツ&グラノーラ&ヨーグルトもしっかり食べて、
さあ、沖縄本島2日目、本格スタート。
目的地は、まず、何はなくとも「やちむん」。
もはや聖地巡礼ともなった(笑)読谷村やちむんの里へ。
那覇からレンタカーで小一時間のドライブです。
八重山旅も毎日青空でしたが、本島の夏空も超ご機嫌。
石垣島に負けないくらい強烈な夏の日差しが朝から照りつけます。
那覇中心地のホテルを出発、通い慣れた道を走ります。
かつての栄華を誇る首里城を遠目に眺め、
やがて左手に青い青い大海原が見えてきます。
大きな観覧車や英語の看板がアメリカンな北谷町を過ぎ、
嘉手納基地を右手にさらに北上するとめざす読谷村です。
今回もやってきました、やちむんの聖地巡礼。
ここ読谷村「やちむんの里」は沖縄陶芸の中心地。
本土復帰した1972年に人間国宝となる陶芸家金城次郎が
米軍基地の跡地利用として文化村構想のあった読谷村に移住。
続く78年、山田真萬、大嶺實清、玉元輝政、金城昭光の4人の陶芸家が
共同窯「読谷山焼(ゆんたんざやき)」を築き、
さらにそこから独立した與那原正守、松田共司、米司、宮城正享の4人が
「読谷山焼北窯」を開窯、今では60もの窯元が自然豊かな丘に集まり、
工房や売店、ギャラリーやカフェも点在、
一日いても飽きない人気の観光スポットにもなっています。
やちむんの里」は駐車場も完備、案内の看板も充実、
確かに歩きやすい人気の観光地でもあるのですが、
いつ来ても作業場は静寂なエネルギーに満ちていて、
この場所はあくまでも陶工にとっての仕事の場であることを実感します。
陶芸体験ができるようないわゆる観光施設とは別物、
普通の販売店や土産店では見ることができない創作の現場を
垣間見ることができる貴重な場所なのであります。
おおお・・・いつ見ても勇壮な「北窯」の登り窯が見えてきた。
16世紀に朝鮮半島から伝わったとされる連房式登り窯。
火入れの日にはやんばるの琉球松を燃やし、
1日かけて1300度まで窯の温度を上げ、
60時間から80時間かけて器を焼き、窯出しまでに1週間。
やちむんは沖縄の土と火と人が生み出す「用の美」なのだ。
いや、もうひとつあった「日」だ。
工房の前には成形された器が
木の板の上に整然と並べられている。大好きな風景。
沖縄のやちむんは「素焼」をしません。
普通は水分を抜き、型崩れを防ぐために素焼きしますが、
気温が高い沖縄では強烈な日差しで天日干しするのです。
まだ釉薬もかけられず、下絵もほどこされていない器が
沖縄の強い太陽の光を受けて白く輝いています。
それはここでしか見られない器の素顔。
バナナの葉蔭で昼寝する陶工、熱く静謐な作業場、
やがて器になるこの島の土、そしてすっぴんの器たち。
沖縄を旅するならぜひ読谷村まで足を伸ばしてみてください。
土と火と人と日が生み出す「用の美」を
目の当たりにできます。
聖地巡礼。
やっぱり大好き。
読谷村「やちむんの里」。
(写真は)
沖縄の太陽を浴びる素顔の器たち。
たくさんの陶工たちが美しい汗を流す。
美しいモノが生まれる現場は
いつも静かなエネルギーに満ちている。

