花の夢
力強く、おおらかで、
そして優しい。
器は人、人は器。
やんばるの森の中に
やちむんの桃源郷があった。
夏の沖縄旅2016リポート、旅の後半は本島編。
自然・歴史・文化に触れる本島中部・南部ドライブに続き、
本島旅4日目は幻の陶器を求めて、
亜熱帯の大自然に抱かれた本島北部「やんばる」へ。
那覇初日の夜に市場ビストロで出会ったやちむん、
県立博物館所蔵の琉球王朝時代の古陶を再現した花形盛皿、
その美しさと愛らしさにノックアウトされた旅人は
器を作った陶芸家を訪ねて大宜味村までやってきました。
めざすは「陶藝玉城」、ご夫婦で作陶されていて、
花形盛皿は奥さまの作品らしい。
「遠いですよ、ナビも役立ちませんよ」と
ビストロのマダムに気遣われていたのに、
事前の電話アポで「大保ダムまで来たらもう一度連絡を」と
「陶藝玉城」のご主人に教えられていのに、
変電所前で中途半端な「勘」に頼って迷子になった旅人。
ご主人へSOS電話を入れ、無事、大保ダムでドッキング。
やんばるの山の中、ダム祭りでそこだけ賑やかな会場に
トコトコ、白い軽トラックがお迎えに来てくれました。
「やあ、遠いところまで、ようこそ~」。穏やかな笑顔にほっ。
やんばる迷子の旅人、ちょっと泣きそう(笑)。
勝手に迷子になった旅人をお迎えにきてくれたのが
「陶藝玉城」のご主人、玉城望さん。
奥さまの若子さんとともに、壺屋で修業後、2000年に独立。
大宜味村にご夫婦で5連房の登り窯を構え、
2014年には9連房の共同登り窯を築窯。
ご夫婦共々、沖展など数々の受賞、表彰されていて、
やちむん界で今注目の作家のお二人なのであります。
作陶中のお忙しい中、お迎え、ありがとうございます。
「え~っと、じゃあ、僕の後をついてきて下さいね~」。
「はい!」。
お祭り会場を後に軽トラは山道をさらに登って行きます。
ダム湖を見下ろす素晴らしい景観ですが、標識ゼロ。
ナビなど、確かに、全く役に立たない。
ガイドブックの地図にも載っていない陶房。
コンビニはもちろん、共同売店も何もない山の中。
玉城さんご夫婦は普段のお買い物どうしているんだろうと、
余計な心配をしながら、ひたすら軽トラの後をついていく。
しばらくして、亜熱帯の森がぽっかり切り開かれた場所に
赤瓦が美しいそれは勇壮な9連房の登り窯が現れました。
おおお・・・・・まさに大自然に抱かれたやちむんの桃源郷だ。
青い空と濃密な緑と野生動物の天国に築かれた創作の現場。
いったいどんな作品が生み出されているのでしょう。
登り窯の前にシンプルな作りの陶房がありました。
ようやく辿り着きました。
大宜味村の「陶藝玉城」であります。
「まず、登り窯、見てみますか?」
「あ、はい!」
人っ子一人いない緑濃い亜熱帯の森の中に
突如やちむんの神様が降臨したかのような登り窯。
青い空に向かって天をつくように9つの房が連なる様子は圧巻。
「ちょっと離れた場所に僕たちの5連房の登り窯があるんですが、
おととし、仲間たちとこの9連房作ったんですよ。
共同窯は共同窯の良さ、魅力があるんですよね」。
「作る」って玉城さんは何気なく仰いますが、
森を切り開き、土地を整備し、煉瓦を積み上げ、
陶土でつなぎ、屋根を作り、窯を作り、火入れし・・・。
説明を伺っているだけで、その大変さに素人はくらくらしてくる。
「どうして、大宜味村のこの場所だったんですか?」と聞くと
「昔と今は違いますからねぇ、煙の問題とか色々あって
どこでも窯を開く訳にはなかなかいかないんですよ」。
窯入れとなれば三日三晩夜通しの作業、
周囲に気兼ねなく窯を維持し、静かに作陶できる環境を求めた結果、
本島北部やちむんの森の中に行きついたのだそうです。
「ヤンバルクイナもよく遊びに来ますよ」。
シダやへゴなど亜熱帯の原始の森が広がる陶房。
天然記念物の幻の鳥がご近所さんなんて素敵過ぎる。
「ちょうど、おととい、窯出ししたばかりなんですよ」。
「え、ええ~!ホントですか?ラッキーーーー!」。
「見ます?」
「見ます!見ます!」。
窯出し直後の窯元を訪れるなんて、何という僥倖。
やちむんの神様のお導きに違いない。
「どうぞ、どうぞ、ゴロゴロ色々置いてますけど」。
うわぁ・・・・・!大好きだぁ~~~、この器たち。
窯出しされたばかりの玉城さんご夫婦の作品が
陶房の床の上にざくざく、ざくざく、宝の山のように置かれている。
どれも力強く、ダイナミックで、大らかで、それでいて優しい温もりがある。
やちむん好きの旅人は昂奮で鼻の穴が膨らむ(笑)。
ツタンカーメンの黄金の墓を発見した探検家のような気分だ。
あれもこれも手に取りたい誘惑にかられましたが、
まず、あれだ、あの作品だ、花形盛皿だ。
「あのぉ、那覇のプチット・リュさんで花のお皿を拝見して、
もう一目惚れで、あのお皿はありますか?」
「ああ、あれはね、奥さんの作品、ねぇ~、ちょっとぉ~」。
ご主人の望さんが奥に声をかけると、「あ~ら、いらっしゃぁ~い!」。
これまた素敵な笑顔の奥さま若子さんが登場。
「どうぞどうぞ、お座り下さい、暑いでしょ、ひと休みして下さいねぇ」と
冷たいさんぴん茶と手作りのぜんざいをささっとテーブルへ。
目の前には玉城さんご夫婦がにこにこと座っている。
初めての訪問なのに、おなじみのご近所さんのお宅に伺ったみたい。
和む。お茶とぜんざいも美味過ぎる。
「花形盛皿はこれが元なんですよね」。
知性派アーティスト風の望さんが分厚い美術書の頁を開いてくれた。
「そうそう、これこれ、私も一目で魅かれたんだけど、
何の目的でどんな風に使われたのか、文献は何もなくてねぇ~、
でも、どうしても、自分で作ってみたいっって思ったんです」。
大らかで優しい笑顔の若子さんが制作秘話を語る。
「で、これを作ったんだよね」。
さらに望さんが陶房の奥から美しい緑釉の花形盛皿を出してきた。
琉球王朝時代の古陶にインスパイアされ、
現代に蘇ったやんばる生まれの花の器の物語。
美味しい手作りぜんざいをいただきながら
500年に渡る花の夢を聞く。
詳しくは、また明日。
(写真は)
本島北部、山原と書いて「やんばる」。
そのやんばるの森の中、
大宜味村の陶房「陶藝玉城」にて。
望さんと若子さんご夫婦。
作品も素敵、笑顔も素敵。
器は人なり。人は器なり。

