琉球香り草

夏至南風が吹く頃、

年に一度、わずかな期間にしか収穫できないという。

琉球王朝時代から愛されてきた香り草。

幻の「ヤマクニブー」。

エキゾチックでスパイシーな琉球アロマだ。

十五夜は見逃したけど、

昨夜の十六夜の月は美しかった。

ほぼまんまるお月さまの下にかかるかすかな雲が

まるで天空の羽根布団のように見えました。

秋の夜空の居心地がとても気持ち良さそう、

一日遅れの仲秋の名月も、いとおかし。

さて、季節をちょっと巻き戻し、

沖縄の梅雨明け、夏至南風の吹く頃に戻りましょう。

夏の沖縄旅2016リポート、旅の後半・本島編の最終章。

明日は札幌へ帰る前日、とことん那覇の街歩き中。

朝一番で再開発が始まった「農連市場」の今を目撃した後は

うちなんちゅー99%の昭和レトロな太平通り商店街をぶらり散歩。

活気あふれる「奥間商店」で新鮮な島野菜を「下見」し、

沖縄独特の祭祀用品や仏具用品が並ぶ「高良商事支店」を眺め、

浮島通りを渡って、観光客の姿も増えてくる市場本通りへ。

いつもの「山本鰹節店」で沖縄料理のコアをなす「カチュー」、

沖縄式かつお節の大容量パックをゲット、下半期のカチュー確保(笑)

一安心しながらぷらぷら歩いていくと・・・、

ん?むむむ?見慣れない草の束が売られていました。

農家のお母さんらしき女性が小さな木の台に並べているのは

50cmくらいの乾燥した草を無雑作に束ねたもの。

ドライフラワーにしてはちょっとそっけないヴィジュアル、

いったい、この謎の草の束は何?

「あの、これは、何ですか?」

旅の謎はまず聞いて解決、店先のお母さんに直撃質問すると

「これね、ヤマクニブー」

「・・・ヤマ・・・クニ・・・ブー???」

「そう、虫除けになるの、香りがいいんだよ、昔からあるさぁ」。

無造作に束ねられた乾燥した草はタダものではなかった。

王朝時代から愛されてきた琉球香り草、

「ヤマクニブー」でありました。

小満芒種(すーまんぼーすー)の梅雨が終わり、

夏の訪れを告げる心地よい夏至南風(かーちーべー)が吹きぬける頃、

昔から沖縄の市場に出回るのが「ヤマクニブー(山九年母)」。

和名で「モロコシソウ」と呼ばれるサクラソウ科の植物で

甘くスパイシーな独特の香りを放ちます。

琉球王朝時代から衣服の防虫や芳香のために用いられ、

女官たちに愛されてきたと伝わりますが、文献資料はわずかしかなく、

成分はじめ解明されていない点が数多いミステリアスな琉球香り草。

う~ん、何ともロマンをそそられますねぇ~。

戦前、戦後も沖縄の家庭では

ヤマクニブーの香りと防虫効果が親しまれてきたそうですが、

1年にうち夏のこの時季しか市場に出回らないことや、

栽培家が少なくなったこともあり、年々希少性が高まり、

今や幻となりつつある琉球香り草。

現在、県内で栽培しているのは唯一、本部町伊豆味で

以前は7、8軒で2万束ほどのヤマクニブーを作っていましたが、

今ではたった2軒、生産も2千束に減っているそうです。

この日、市場で実物に出会えたのは本当に幸運。

夏至南風が吹く頃、刈り取られたヤマクニブーは

大型の蒸し器で蒸され、軒下で2日間ほど干して乾燥させると

鮮やかな緑色から枯れた茶色に変わり、

独特の甘くスパイシーな香りを放つようになるそうです。

昔から部屋に吊り下げたりして使っていましたが、

貴重な琉球香り草の魅力を伝えていこうと、

匂い袋のように美しい布や紙で包んだりして、

若い世代にも親しんでもおうという取り組みも始まりました。

その昔、琉球の女性たちは

身にまとう衣服にこの香りを移し、美しさを競い合ったのでしょう。

マリリン・モンローはシャネルの5番を、

琉球の女性たちはヤマクニブーをまとっていたのですね。

古の琉球の香り文化を今に伝える「ヤマクニブー」。

市場の片隅にそっと並んだ草の束には

素敵な香り浪漫物語が潜んでいたのでした。

う~ん・・・スパイシー。

(写真は)

琉球香り草「ヤマクニブー」。

見た目は地味ですが、

謎とロマンあふれる伝統アロマ。

五感で感じる沖縄。

だから市場は面白い。