マイライフ・アズ・ア・ハット

浅くも深くもない一番居心地の良い位置

絶妙ポイントで被り続けることで

自然に帽子が頭の形に馴染んでくる。

南米エクアドル生まれの人生の相棒。

マイライフ・アズ・ア・ハット。

朝からすっきり澄み渡る秋の青空。

この爽やかな秋晴れはまさに「インディアン・サマー」。

いまだ夏をあきらめきれない夏女にとっては

空の神様からもたらされたご褒美のような絶好の行楽日和。

ですが、ん?バルコニーの網戸に必死にしがみついているのは、

うひょ~、強烈な匂いで嫌われ者のカメムシ君ではありませんか。

外が冷え込んでくると家の中へ避難行動をとる彼らなりの秋支度。

健気とは思いますが、そ~っと乾いた雑巾に載せて、

速やかにお外にお引き取り頂きました。ごめんね~。

秋晴れの日曜日のひとコマに続いて、

夏の沖縄旅2016リポート、旅の後半・本島編の最終章。

明日は沖縄を離れる前日、ぶらり那覇散歩から宜野湾市へ。

普天間基地近くの食堂での琉米ミックスランチの後は

沖縄国際大学のグラウンドで大学ラグビーリーグ戦を観戦、

余りの暑さで前半のみで撤収、すごすご那覇へ舞い戻り、

沖縄旅で絶対にはずせない野宮的マストスポット、

県庁前の坂道にあるお気に入りの帽子屋さん「analogue(アナログ)」へ。

夏の沖縄で、パナマハットを買う。

正真正銘のパナマ草(トキア草)で手編みされた本パナマ。

一見それっぽい「なんちゃってパナマ帽」ではありません。

南米エクアドルで一から手作りされた本物のパナマハット、

某高級ブランドの製品を手掛ける工房で作られた本パナマを

オーナーの比嘉さんが直接仕入れてきた希少ハット。

原料も工程も同じなのに、工房直送ゆえの嬉しい価格設定、

ありがとう、帽子の神様。

パナマハットは赤道付近のエクアドルの人々が被っていた

トキア草で編まれた帽子がその起源。

16世紀以降のスペイン支配により、現地の帽子とヨーロッパ文化が融合、

現在のパナマハットに進化、その後の入植者たちにとっても

強烈な日差しを避ける必需品となっていき、

1914年、ルーズベルト大統領がパナマ運河を訪問した時に

この帽子を着用していたことから「パナマハット」の名が

世界中に知れ渡るようになったと言われています。

素朴なエクアドルの帽子は夏帽子の名品と昇華したのでした。

エクアドル発祥のトキア草は扇形の葉をした熱帯植物。、

その葉の内側のみを裂いて束にして大鍋で茹で吊るして乾燥、

すべて手作業の重労働、乾燥も太陽と風、自然の力だけ。

赤道付近の強烈な日差しで乾燥したトキア草は100%自然素材、

均等な人工素材ではないので、帽子製作ももちろん全て職人の手編み。

頭頂部から長い時間をかけて丹念に編みこまれた帽子は

更に大鍋で脱色、または染色、再び天日干しされ、型にはめて成形、

手作業で形を調整し、最後にベルトやリボンをつけて完成します。

ひとつのパナマ帽が出来上がるまでの果てしない工程、労力、職人技。

本物のパナマハットは、まさに芸術品なのです。

「そう、ひとつひとつ手編みですからね、

同じサイズでもひとつひとつ違います。全部被ってみて下さい」。

比嘉さんがストックから選んでくれた私のサイズのパナマハットを

そっと手に持ち、鏡の前で、仰せの通りひとつひとつ被ってみます。

本当だ、どれも美しいボルサリーノ型のフォルムをしていますが、

同じサイズなのに、トップとのバランス、プリム(つば)の幅、形などが

微妙にひとつひとつ違うのです。真のパナマハットは、人間と同じ。

ひとつひとつに個性がある。

また被る人の頭の形や顔とのバランスも大事。

う~ん、トップの高さはこっちがいいけど、プリムのラインはあっちかなぁ。

悩む私に「パナマ帽は一生物ですから、思う存分悩んで下さい」、

比嘉さんの力強い一言に安心して、さらに、悩む(笑)。

鏡の前であっちか、こっちか、相当悩み、プロ目線のアドヴァイスも頂き、

ようやく、究極のマイ・パナマハットをセレクト。

結局ね、一番最初に気に入った帽子だったのよね。

最後はファーストインプレッションに素直になるべし。

「これ、下さい」。

「うん、ベストな選択だと思います。これが一番お似合いです」。

選び抜いたパナマハットを受け取った比嘉さんがさらに続ける。

「そして、これからもっともっと似合っていきますよ。

帽子が被る人の頭の形に自然に合わせて馴染んでいくし、

時間がプリムの絶妙なカーブや落ち加減を作っていくんです」。

熱帯エクアドルで長い工程や時間の末に出来上がったパナマハット、

これが、本当の完成形ではないということなのですね。

「このパナマ帽、あるお客様が27年間愛用しているものです。

リボンを取りかえるためにお預かりしているんですけど、

最高にカッコいいですよねぇ~、被る人に馴染んだフォルムが」。

比嘉さんが見せてくれたのはほぼ30年物のパナマ帽は

白が程良いアイボリー色に変わり、まるでしなやかな絹のよう。

ご主人さまと幾つもの夏を過ごしてきた歴史が形作った

唯一無二、どこにもない、マイ・パナマ・ハット。

前面のプリムの下がり加減が絶妙なほぼ30年物に対して、

新品のパナマ帽は総じて、プリムの前後ろ、左右が

上に反り返っているものが多いのです。

これは帽子がまだ若く、暴れて、はねっかえているわけで、

この小生意気な若造の状態から、少しずつ被って、手で撫でて、

馴染ませるように、時間を共に過ごしていくと、

前のプリムが小粋に下がった円熟味あるパナマ帽に育つのです。

少しずつ、少しずつ、可愛がりながら、馴染ませていく。

真のパナマハットは、大切な人生の相棒なのだ。

はねっかえりの若者が人生を重ねて丸みを帯びる。

南米エクアドルからやってきた白い夏帽子は

まるで「人生」そのものを象徴しているかのようだ。

いきなり無理やり理想形を目指すことなんて必要ない。

少しずつ少しずつ時間をかけて愛情をかけて。

これからたくさんの夏を一緒に過ごしていこう。

夏の沖縄で出会った真っ白な私のパナマハット。

マイライフ・アズ・ア・ハット。

私と帽子の物語が始まる。

(写真は)

帽子好きの私の「師匠」。

那覇「analogue」のオーナー比嘉さんと。

お店滞在時間1時間半の末、

現時点で理想のパナマハットをセレクト。

これから人生をかけて真の理想形に育てていきます。

誓います(笑)。