黒衣のぽうじし

まるで黒衣の貴婦人。

漆黒のベルベットドレスをまとった

中華料理でも日本料理でもない一品。

世にも美味なる沖縄料理の名品。

その名は「ミヌダル」。

まずは勝利の朝、喜びの報告から。

昨夜の札幌ドームは19時キックオフの「仕事人ナイト」、

首位コンサドーレ札幌は8位町田を3-2で下し、ホーム10連勝、

ファイターズはオリックスに4-3で競り勝ち、とうとうM1、

今晩にもリーグ優勝が決まりそうです。

思わず「ファイターズとコンサ、アベック優勝だね!」と口走った妻に

「アベックって・・・(笑)久しぶりに聞いた」と夫のツッコミ。

確かに、アベックって・・・昭和過ぎた(笑)。

ま、とにもかくにも、北海道のスポーツファンにとって最高の秋。

ということで、元気に夏の沖縄旅2016リポート・最終章、

那覇ラストナイトを彩る沖縄料理のお話を続けましょう。

那覇は久茂地川沿いに佇む古民家居酒屋「抱瓶」。

県産素材を生かした沖縄料理と40種類以上の泡盛が揃う人気店は

日曜日の夜も満員御礼。活気あふれる店内を

イケメン揃いのおにいさんたちがテキパキと動き回り、

厨房のおにいさんたちの手際もスピーディーで無駄がなく、

カウンターから眺めていても実に気持ちがいい。

お店のにいにいのレベルが高い居酒屋は間違いなし。

沖縄最後の晩餐の場所に選んで良かった。

さぁ~て、何を頼もうかな~っと。

琉球王朝時代の宮廷料理から沖縄の家庭料理まで

メニューの豊富さにどれにしようか迷ってしまいますが、

そんな時は黒板に勢い良く手書きされた「抱瓶のおススメ」。

お刺身や一本魚などなど本日のお薦めが旅人を誘惑します。

え~っと、おっ、「オオタニワタリのおひたし」がありますよ。

今回の旅の前半に訪れた八重山諸島ならではの島野菜。

本島の居酒屋さんで見かけることは珍しい、まず、これね。

それから・・・おっ、「奥武島のトビイカあぶり」とな。

本島南部にある海人の島、奥武島(おうじま)、

今回も青い海を眺めながら名物天ぷらをハフハフしましたっけ。

それじゃこのトビイカと、「島ゴボウも天ぷら」も頼んでと・・・。

本日のお薦め料理に食欲と旅の思い出がフラッシュバック。

そしてメインはもう、決めてあります。

沖縄でしかお目にかかれない伝統的な料理「ミヌダル」。

ここ「抱瓶」のミヌダルは定評があるのです。

緑鮮やかなオオタニワタリ、軽く炙ったトビイカ、

そして香り高い島ゴボウに舌鼓を打っていると、

「お待たせしました、ミヌダルです」。

目の前にインパクト抜群の真っ黒な一皿が登場。

琉球王朝の宮廷料理を彩った豚肉料理の名品です。

漆黒のベルベットドレスのような見た目の正体は黒ゴマ。

「ぽうじし」と呼ばれる豚のロース肉に

黒ゴマペーストをのせてじっくり蒸し上げたお料理です。

「ミヌ」は「蓑」、「ダル」は「たれ」の意味だそうで、

黒ゴマのたれを蓑のようにまとっていることから名付けられたとか。

なるほど、琉球伝統の黒衣のぽうじし、なわけね。

さあ「抱瓶」の「ミヌダル」を早速ぱくり。

う~ん・・・なんと上品なお味でしょう。

豚肉の深い旨みと黒ゴマの香ばしい香りがお口の中でマリアージュ。

丁寧にじっくり蒸しあげられているので、余分な脂がきれいに落ちていて、

お肉料理というよりも京都の精進料理のような深い滋味さえ感じます。

見た目のインパクトとは全然違う淡麗な味わいが印象的。

首里城の宮廷で愛されたお料理だというのがよくわかります。

「ミヌダル」は琉球王朝料理の「東道盆」の中のひとつ。

「東道盆(とぅんだーぶん)」は「東道(遠方から来た客)」を

おもてなしする際に使われた「盆(器)」のこと。

中国からの御冠船一行を接待するために発達した宮廷料理で

六角や八角型をした朱色の豪華な琉球漆器の大盆に

趣向をこらした華麗な前菜料理が彩りよく盛られました。

花イカやカステラかまぼこなどの華やかな色彩が並ぶなか、

黒一点の「ミヌダル」の存在感は視覚効果も抜群。

名実ともに琉球料理を彩る名品なのであります。

丁寧に蒸しあげられた「ミヌダル」は冷ますことで

黒ゴマと豚肉がなじみ、味により深みがでます。

ゆっったり杯を重ねる宮廷のご接待にはぴったりの前菜。

現在では宮廷料理の枠を飛び出し、沖縄料理の店や

一般家庭でもお祝い事の際に作られるようになりました。とはいえ、

大変手間がかかるので毎日のお惣菜というわけにはいきません。

もちろん県外でお目にかかることはほとんどない沖縄料理の逸品。

豚肉を醤油、泡盛、ざらめ、味醂などに漬けこみ、

黒ゴマを丁寧にすったペーストに漬け汁を加えたたれを載せ、

中火から弱火へ、黒ゴマの風味を飛ばさないように

じっくりと慎重に蒸し上げる加減が腕のみせどころらしい。

そうして出来上がった「ミヌダル」は

色々な文化の影響を受けたようでいながら、

中華料理でも日本料理でもない、まごうかたなき沖縄料理。

黒衣のぽうじし「ミヌダル」。

琉球の歴史、豚肉文化、チャンプルー精神。

漆黒の一皿が沖縄を饒舌に語る。

最後の晩餐のメインに相応しい味わいだ。

旅の余韻と逸品をかみしめる。

(写真は)

ね、インパクト抜群のヴィジュアル。

イカ墨パスタも真っ青(笑)になる漆黒っぷり。

世界で一番黒いお料理かも。

しかして、その味わいは、典雅にして淡麗。

琉球料理は奥深い。