カフカの初恋

39歳の大統領。

近代フランス史上最年少の

大統領誕生の影には

世紀の初恋があった。

そう海辺のカフカのような。

フランス大統領選の決戦投票の結果、

中道・独立系のエマニュエル・マクロン前経済相が

極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン候補を大差で破り、

史上最年少のフランス大統領が誕生することになりました。

「新たな1ページが開かれた」。

勝利を確実にしたマクロン氏の言葉です。

EU離脱を訴えたルペン候補との戦いを制し、

「欧州と欧州市民の絆を再建する」」と述べ、

EUと協調していく方針を鮮明にしたマクロン氏、

国内の分裂をどう修復し、国のかじ取りをしていくのか、

若き39歳の大統領の政治手腕に大いに注目されます、が、

あの世紀の初恋を成就させた強靭な意思の持ち主、

なせばなる、かも。

そう、25歳年上の「先生」との恋。

華麗な経歴とともに世間の耳目を集めたのが

夫の25歳年上の妻ブリジットさんの存在でしたね。

二人の出会いはマクロン氏が15歳のとき、

ブリジットさんは通っていた学校の国語教師でした。

当時40歳だった彼女には夫と3人の子供もいたのですが、

マクロン少年は情熱的な恋のアプローチを続け、

17歳の時に「あなたが何をしようと、僕はあなたと結婚する」と

宣言したというから、驚き。

周囲に反対され、一時引き離されたこともありましたが、

18歳から交際をスタート、彼女の離婚後2007年についに結婚。

今回の選挙戦でも妻を表舞台に立たせ、二人三脚で全国行脚、

知的で落ち着いたブリジットさんの笑顔はとても魅力的で、

年齢を重ねてこそ女性は美しくなるという、

フランス的価値観を象徴する存在に見えました。

15歳の少年が母親と変わらない年齢の女性に恋をする。

彼女は知的で美しく静かに彼の人生に運命的な示唆を与える。

う~ん・・・どこかで同じような場面を読んだような・・・、

そうだ、村上春樹の「海辺のカフカ」だ。

「君はこれから世界で一番タフな15歳の少年になる」。

啓示的な言葉に促され、15歳の誕生日に家出したカフカは

遠くの知らない街の小さな図書館の片隅で暮らすようになる。

そこで母のような(?)美しい50代の女性佐伯さんに出会う・・・。

カフカと佐伯さん。

その関係性の読み解き方は人それぞれだと思いますが、

ふとマクロン少年とブリジットさんの出会いと重なりました。

小説の中で自分のもうひとつの片割れを常に探し続ける15歳の少年は

小さな図書館の静謐な書斎でたくさんの書物に囲まれ、

黒い万年筆を静かに動かす美しい姿勢の佐伯さんに向かって

必死に答えを求めようとします。心身ともに距離を詰めようとします。

僕は、何者なのか、わかりますか?

マクロン氏にとってブリジットさんは

初恋の人であり、メンターであり、人生の伴走者でもあるのでしょう。

妻の存在感について選挙戦の演説でこう語っています。

「彼女は、私が私であることを助けてくれた」。

僕が僕であるために、あなたが必要だった。

探していた自分の片割れの在処を教えてくれた最愛の人。

カフカの初恋は実り、

24年後、彼は史上最年少の大統領になった。

事実は小説より、奇なり。

海辺のカフカはどう思っているかなぁ。

(写真は)

柏餅と桜餅が揃って

和菓子屋さんの店先に並ぶ。

北海道の初夏らしい情景だ。

五月も読書に最適の季節。

新緑が美しいから、本を読む。