スコールに濡れて
青い空に忍び寄る雲。
むくむく、もくもく。
オレンジ色のはずの夕暮れが
急にグレーに染まった瞬間、空が割れた。
南国のスコールはまるで電光石火。
夏の沖縄旅三日目は本島南部をドライブ。
朝一番で糸満市摩文仁の丘にある平和祈念公園を訪問、
沖縄戦の歴史を今に伝える祈りの地で平和への思いを新たにし、
糸満海人の伝統をモダンに継承する「糸満漁民食堂」で
朝獲れたばかりの絶品鮮魚(いまいゆ)料理で遅いランチ。
さらに知念半島の南、南城市にある木工工房へ足を伸ばし、
沖縄の木の美しさを再発見、さらに工房のお向かいに
王朝時代からの歴史を刻む清冽な井(ガー)を発見。
青い海と文化遺産と工房が点在する本島南部の
濃密な魅力にふたたび惚れこみました。
南城市周辺は世界遺産である琉球最高の聖地「斎場御嶽」をはじめ、
多くの聖地が存在することで知られています。
古くから東の彼方に理想郷ニライカナイがあるとされていて、
琉球王朝の都である首里から見ると東にあたるため、
ぶらり歩けば、聖地にあたる。万物全てに神が宿っている土地。
人々が古から大切に守り続けてきた心の拠り所に出会う喜び、
沖縄旅の楽しみは本当に一言では語れません。
気がつけば三日目もまた、あっという間に午後4時過ぎ。
南部名物、絶景海カフェにでも寄ろうかと思いましたが、
朝早くから動きまわっているのですから無理は禁物。
丘の上の工房から海沿いに降りてきて、
個人的に大好きな百名ビーチに立ち寄り、
美しく静かな青い海、真っ白な砂に再訪のご挨拶だけして
レンタカーは国道331号線を一路夕暮れの那覇へと帰りました。
う~ん・・・それにしても・・・雲が多いなぁ。
この時季特有の突き抜けるような青空とはちょっと違う。
先島諸島に接近中の台風3号の影響でしょうか。
気のせいか、いささか風も少し強くなってきたような。
那覇のホテルに着くころには薄曇りの空に。
でも、雨は、まだ大丈夫よね~。
台風、まだまだ遠いものねぇ。
ちょっと不穏な空は置いといて、まずは今夜の沖縄ごはん。
とはいえ、遅いランチに土鍋の芝麻醤風味のモダン魚汁や
本日のイマイユバター焼き特製アーサーソースに
さんぴん茶プリンまでがっつり頂いたもので、
ちょっと軽く、おつまみって感じかなぁ~。
う~んと・・・腹ごなしに歩ける範囲で・・・、
よ~し、ここ!そぞろ歩き圏内にいいお店発見。
久茂地川沿いの「隠れ家あっぱりしゃん」。
隠れ家?あっぱりしゃん?名前もそそられる。
風に吹くまま、気の向くまま、お腹すき具合のまま、
その日の気分で今夜のお店を決める幸せ。
買い物も行かなくていい、作らなくていい、片づけなくていい、
沖縄旅は主婦にとって究極の非日常、でもあるのです(笑)。
さあ、ひと休みしたら、早速夕暮れの街へでかけましょう。
ふと・・・灰色の空がいささか気にかかりますが、
傘は・・・いらないよねぇ・・大丈夫だよねぇ、
もし、雨降っても、南国だもの、あったかいよ。
行こう行こう、傘なし、身軽で行こう。
これが・・・甘かった。
めざすお店は昨夜の「まさら」とは久茂地川沿いの反対側。
ホテルを出て県庁前に差し掛かったあたりで
ぽつん・・・雨粒がひとつふたつ。
あれ?降ってきた?と思った瞬間、
ボツボツボツボツッ、バラバラバラバラッ、ザザッ、ザァー!!!
南国の夕暮れ灰色の空がパカっと割れたみたいに
強烈な雨が天から降ってきた。
南国のスコールは、電光石火。
雨宿りの猶予も与えてくれない。
地図上ではあと2~3ブロックなのに、
大水量シャワーのよう叩きつける雨、もう一歩も歩けない。
県庁前のロータリーに駆け込み、タクシーに飛び乗った。
「すみません!、物凄く近いんですけど、物凄い雨で」と
びしょ濡れの旅人に沖縄もタクシー運転手さんは優しい。
「ああ、台風近づいてるからねぇ~、急に来るのさぁ~」。
「あの、ここ、なんですけど」と地図を見せるものの、
本当に前が真っ白になるような雨で目印も何もわからない。
めざすお店がある久茂地川沿いへは
車だと一方通行の道を迂回しないとたどり着けません。
運転手さんは「う~んと多分、ここを曲がって
少し戻ったあたりだと思うけどね~」と慎重に走ってくれる。
「行きすぎちゃうと申し訳ないからねぇ~」と
料金の心配までしてくれる。こんな近い距離なのに。
「歩けばすぐなのに、ほんと、ごめんなさい」
「いやいや、歩けないさぁ、歩かないさぁ、沖縄の人でも(笑)」。
温かい。南国はスコールも人のこころも、温かい。
天が破れたような強烈の雨の中、
かすかに「あっぱりしゃん」と書かれた暖簾が見えた。
「あ、ここです!ここです!良かった~、ありがとうございます」。
「気をつけて降りてねぇ~、まだ凄い降りだからねぇ」。
どこまでも優しい沖縄のタクシーを降りて、
スコールの中「隠れ家あっぱりしゃん」へ駆け込みます。
ほっ。イイ感じ。
古民家風に心地よく年月を重ねた居酒屋さん。
カウンターにテーブル席、お座敷もあって
先客万来、観光客から地元のサラリーマン風の人まで
ゆったり楽しそうにくつろいでいます。
予約必至の人気店というのがよくわかります。
はじめてなのに「ただいま~」って言いたくなる。
「隠れ家あっぱりしゃん」は
石垣島出身の店主の島唄も聞けるまさに隠れ家居酒屋。
「あっぱりしゃん」とは八重山の言葉で
「可愛い、きれい」という意味。
ライブは毎日頃合いを見て開催されるらしく、
今は、皆さん、のんびり食事を楽しんでいるようです。
島唄を聴きながら八重山食材の料理を堪能できる。
一度で二度素敵な名居酒屋なのでした。
さ~て、軽く何をつまもうかな~。
カウンターに座り、忙しそうな厨房を眺めながら
まずは「自家製イカのチキアギ」にアレとこれと。
さくっとオーダーを済ませてほっと一息。
あれ?あれれ?・・・雨、あがってる?
いつのまにか激しい雨音はやみ
うっすら夕暮れの空が明るくなっている。
南国のスコールはいきなり来襲するけど撤収も早い。
ホテルを出てわずか5分間ほど、
本当にピンポイントの時間だけの激しい雨だったんだ。
気が付けば、
濡れた服もほぼほぼ乾いている。
南国の夏の夕暮れ。
スコールで濡れた思い出までが愛しい。
どんだけ、好きなんだ、沖縄(笑)。
島唄と八重山料理のお話は
また明日。
(写真は)
雨に濡れてでも
食べる価値あり。
石垣島自慢の揚げかまぼこ「チキアギ」。
イカを使ったお店の自家製。
熱々で、旨くて、オリオン生が進む~。

