やさしい食パン
ふわとろ。
もちとろ。
耳まで柔らかい。
誰にもやさしい食パン。
食べさせてあげたかった。
夏の沖縄旅リポートは本日日曜休み。
この週末のご近所ニュースをご報告。
あれは9月1日金曜日の午前10時半ごろのことでした。
何気にマンションのバルコニー越しに外に視線を向けると、
ん?何あれ?・・・住宅街の路地に見慣れぬ行列が出現。
幹線沿いから角を曲がり、住宅街の小道に続いています。
9月1日・・・あ、そうか!生食パンだ!
数日前に開店のお知らせチラシが朝刊に挟まっていたっけ。
全国で大注目の高級「生」食パン専門店、
「乃が美 はなれ」札幌店、本日オープンだったわねぇ~。
「パン・オブ・ザ・イヤー2016金賞」受賞、
「日本のおいしい食パン名品10本」にも選ばれた、
大阪発の行列のできる超人気の生食パン専門店、
いよいよパンの激戦区札幌円山地区に進出であります。
そうだったか~、早くも開店30分前に立派な行列。
今か今かとオープンを心待ちにしている様子が
窓越しの遠目からでもびしびし伝わってきます。
私もパン好きではありますが、行列は苦手の根性なし(笑)。
まあ、超ご近所だし、ほとぼり冷めた頃に
ひょこっとゲットできればいいわよねぇ~。
な~んて高みの見物を決め込んでいたのですが、
開店2日目の昨日土曜日のお昼頃、「はい、お土産」。
噂の生食パンの現物が思いもよらず目の前に。
午前中から用事で出かけていた夫が帰り際、
なんと1時間ほど並んで入手してきたのでした。
妻同様、行列苦手のはずなのに、まあ珍しいこと。
「ま、ブログのネタにもなるでしょ?」
なんと妻思い、ブログ思いの夫でしょう(笑)。
ありがたく、さっそく、書かせて頂いておりますよ。
さあ、さっそく1時間待ちでゲットしたレア生食パンを賞味。
上品な和菓子屋さんのような手つき紙袋からそろそろと
税込み864円也の生食パン一本を取り出します。
おおお~、ずっしり持ち重りのある手応え。
透明袋をそ~っと開けると、う~ん、魅惑的なパンの香り・・・。
まるごとちぎって食べたい誘惑を何とか抑え、
まずは超超厚切りにした一枚を半分にカットします。
が、ナイフを入れるのもためらわれるほど柔らかく、
そっと触れているのに絹のような断面に指の跡がつきそう。
はぁ・・・取り扱い要注意、がさつ禁物(笑)。
慎重に切り分けた分厚い一枚を夫と分け合い、
いざ、乃が美の生食パンを実食。
超柔らかな食パンを両手でそっとちぎる、うっわぁぁぁ・・・。
シルクのような超きめ細やかな断面に驚愕。
パンというよりも・・・つきたてのお餅を連想する。
たまらず大きな塊をお口いっぱいに頬張る。
ふわ・・・とろ・・・もち・・・とろ・・・。
口に入れた瞬間に溶けていきそうな食感。
それでいてふわふわでもちもち。
小麦の香りとほのかで上品な甘さが口いっぱいに広がる。
真っ白な中身と同時に、特筆すべきは黄金色の耳。
角ばった食パンの形を保ってはいますが、
耳までとろとろ柔らかく、角までふわとろ柔らかい。
なるほど、これが、「生」食パンね。
食べるというより、溶ける?飲む?
プリンかわらび餅のようにお口の中で優しく溶けていく。
これは誰もが笑顔になる、幸せになる食パンだ。
「卵を一切使わないのに
ちぎってそのまま食べられるほど柔らかくて
ほんのり甘い究極の食パン」をめざし、
粉の種類、配合、ミキシング、焼く温度、時間などなど
数え切れないほどの試行錯誤を結果、生まれた奇跡の生食パン。
HPに創業者がその誕生秘話を紹介していました。
生食パン誕生のきっかけになったのは二つのこと。
一つは卵アレルギーの我が子が食べていたパサパサのパン。
もう一つは老人ホーム慰問中に聞いたおばあちゃんの言葉。
「食べているときと笑っているときが一番の幸せ。
でも朝食に出るパンは耳が固くて食べられない」。
ならば、卵なしのふわふわ柔らかい食パンを作ろう。
このエピソードに亡き父を思い出してしまいました。
晩年、お世話になっていた施設では当時、
誤嚥防止のためかメニューにパン食が出されず、
「たまに、パン、食べたいんだよなぁ・・・」と
コーヒーとパン好きだった父がぽつんと漏らしていました。
そのため、父のところへ行くのはもっぱらお昼時。
焼きたてのパンを近所のベーカリーでどっさり買って、
家族同席ならば大丈夫かと一緒に食べたものです。
パンは日常の象徴。
私は息子の出産時くらいしか入院経験はないのですが、
わずか1週間程度の病院生活で一番飢えたのが、パンとコーヒー。
売店の菓子パンと缶コーヒーは非日常そのものに思えたものです。
朝一番の芳しいコーヒーの香りとパンの匂い。
心身共に老いて弱った父はかつてのように
自分でコーヒーを淹れる自由も
朝刊めくりながらパンをかじる選択も残されていなかったのだ。
だから、せめて、焼きたてパンを届けた通ったあの日々。
耳まで、角まで、ふわふわ柔らかい生食パン。
父が生きていたら、まっさきに食べさせたかったなぁ。
行列苦手な娘もパン食出ない毎日を過ごす老いた父のためなら、
きっと1時間でも並んで手に入れていたかもしれない。
卵アレルギーの子供にも、固い耳がつらいお年寄りにも
誰にでも、やさしい食パン。
ちょっとデカいけど、
今度お仏壇にお供えしよう、かな。
ふわふわ柔らかい生食パンに
ちょっと切ない秋のはじめ。
(写真は)
上品な紙袋は
ちょっとしたお持たせにも。
「乃が美 はなれ」の生食パン。
誰もが笑顔になれる幸せな食感。

