まちぐゎー憧憬
狭い路地にはみ出す看板。
沖縄そばと赤提灯と珈琲の香りが
亜熱帯のけだるい空気に溶け込む。
まるで異国のようでどこか懐かしい。
ああ愛すべきまちぐゎー憧憬。
夏の沖縄旅・最終盤7日目リポート。
沖縄を離れる前日は朝からお買い物三昧。
首里の「新垣カミ菓子店」で伝統の琉球菓子を購入後は
庶民のおやつタンナファクルーを長田の丸玉製菓工場でゲット。
帰り道に通りかかった開南「仏壇通り」の照屋漆器店に立ち寄り、
沖縄の暮らしに息づく祈りの心に触れることができました。
さあ、そろそろ中心部に戻りましょう。
いつも賑やかな国際通りまで戻り、
近くのパーキングにレンタカーを停め、買い出しの総仕上げ。
お気に入りの沖縄食材を色々仕入れなければなりません。
毎度、帰る前の日は仕入れ業者と化す旅人(笑)。
観光客で賑わう市場本通りのアーケードをぷらぷら進むと
ああ・・・聞こえてきました、癒しの三線の音色。
公設市場入り口近くの三線屋さんの主が奏でるライブBGM。
この三線を聞くたびにほっとする、
旅人だけど、勝手にただいまって思ってしまう。
しばし立ち止まり音色に身を任せていると、
時間や空間の感覚が心地よくぼんやりしてくる。
狭い路地が迷宮のように広がる市場界隈は
どこか熱帯アジアの異国に迷いこんだようだ。
肩が触れ合うような狭い筋道に看板がせり出し、
沖縄そばやチャンプルーや自家焙煎珈琲の香りが
亜熱帯の昼下がりの気怠い空気に混在している。
ああ、愛すべき、まちぐゎー。
「小」と書いて「ぐゎー」。
小さいものや可愛いものに
親しみを込めて呼ぶときに使われる沖縄の言葉。
「イン(犬)グヮ」とか「サーター(黒砂糖)グヮ」とか
身近な愛すべきものにつける愛称のような言葉で、
昔ながらの細い筋道は「スージ(筋)グヮ」、
暮らしに欠かせない市場(マチ)は「マチグヮ」。
市場がどれほど愛されているかよくわかります。
その愛すべきマチグヮーも
時代の変化と無縁ではいられないようで、
那覇市は老朽化が進む牧志第一公設市場を
現在地で建て替える方向で再整備計画を決定、
2019年度に着工、22年度供用開始をめざしているそうです。
建て替えの噂はずっと耳にしていましたが、
そうか・・・既に工事が始まっている農連市場に続いて
牧志公設市場の風景も変わっていくのですねぇ。
その歴史が始まったのは戦後の混乱期。
街の再建を目指して壺屋の陶工たちが許可を得て住み始め、
自然発生的に闇市が形成され、1950年那覇市が公設市場を設立。
69年に木造4棟の長屋形式の建物が火災で焼失、3年後の72年に
現在の4階建ての第一牧志公設市場が再建されたのです。
1階には肉、魚介、かまぼこなど生鮮類が並び、
外周には野菜や果物の店がひしめきあい、
2階にある飲食店、土産物店、衣料店など150店ほどが
寄り添って商いを続ける市場は那覇のシンボル的存在。
そして公設市場の建物周辺には
さらに700店舗ほどの小さなお店が並んでいて、
熱気と活気と混沌あふれる無数の小さなスジグヮを含めて
まるごとで愛すべき「まちぐゎー」を形成しているのでした。
再整備計画の詳細までは旅人にはよくわかりませんが、
公設市場が新しいビルに建て替わった後、
小さなスージグヮはどうなるんだろう・・・。
でも戦後の混乱期から
那覇の人々が力を合わせゆいまーるの心で作り上げたきたマチグヮ、
また新たな時代に向かって、たくましく協同していくに違いない。
小さくて愛すべき存在に親しみを込めてこめる南の島。
旅人を魅了するまちぐゎー憧憬よ、いつまでも。
(写真は)
熱帯アジアの異国に
迷いこんだような景色。
ローカルでノスタルジックでエスニック。
愛すべきまちぐゎー。

