僕らの時代

「難しいんだよぉ・・・」。

市場の雑踏をBGMに

三線と格闘していた

小さな背中が蘇る。

大きくなったねぇ。

夏の沖縄旅2017・最終盤7日目は朝からお買い物三昧。

首里や那覇の老舗で伝統の琉球菓子を買い求め、

開南「仏壇通り」では沖縄の祈りの心に触れ、

伝統保存食「スーチカー」に沖縄の食の基本の「き」、

薫り高い鰹節「カチュー」を専門店でゲット、

午後の公設市場界隈はますます賑やかになってきました。

「ありがとうございました~」。

気持ちの良い声に送られて松本商店を出ると、

どこからか伸びやかな三線の音色が聞こえてきます。

ああ、お向かいにある三線専門店ね~。

ここのご主人は三線の名手で

店先で気さくにつま弾く三線は沖縄の市場ならではのBGM。

思わず立ち止まるお客さんの姿が絶えません。

ああ、ご主人がお店にいるのね~と思って、

店先を覗くと、あれ・・・?若い!

達者に三線を奏でていたのは中学生くらいの少年。

店の留守番を任されているのでしょう。

黒いTシャツに短パン姿の彼が三線をつま弾く姿に、

ふと、数年前、同じ場所で見かけた小さな男の子が蘇りました。

もしかして、君は、あの時の男の子?

あれはもう何年前になるでしょう。

いつものように買い出しの袋をぶら下げて、

この三線専門店の前を通りかかったときのこと。

店先に並べられたたくさんの三線に埋もれるように、

小さな背中を丸めて一生懸命三線を練習している男の子がいました。

練習曲の楽譜を前に少し進んでは止まり、進んでは止まり。

その懸命な背中がいとおしくて、つい見守っていると、

「はぁ~」小さなため息の後、

「もう・・難しんだよぉ・・・」。

思わず口をついて出た可愛い泣き言にほっこり、

うなだれた頭をぐりぐり撫でてあげたくなったことを

鮮明に思い出しました。

あの時小学生くらいだったから、

そうか、そうか、そうよね~、こんなに大きくなったのね~。

すっかりお兄ちゃんになったキミがつま弾く三線は

お父さん譲りの才能を受け継いだ立派な音色。

「難しんだよぉ」と泣き言を言いながらあきらめずに

ずっとずっと練習に励んできたんだね。

良かった良かった、よう頑張ったね~、未来の名手だね~。

何だか親戚のおばちゃんみたいに旅人は嬉しくなってしまった。

すっかり成長したおにいちゃんの三線の音色を聞きながら、

市場のアーケードを奥へ奥へと歩いていく。

観光客が途絶え、ローカル色が色濃くなったあたりに

もう一軒、めざすお店がありました。

ジーマミー豆腐の名店「花商」。

落花生の豆乳で作るジーマミ―豆腐は

元は宮廷料理の一つだった手間のかかる一品です。

数あるジーマミ―豆腐の中でも「花商」はピカいちの存在。

機械を使わず昔ながらに手搾りを貫く専門店の味は

一度食べるともう浮気できなくなります(笑)。

もちもち感ととろける感の絶妙なバランス。

濃厚で薫り高い落花生の香りがもうたまりません。

以前は空港にも少し置いていたのですが、

今はアーケードの奥の奥の本店のみ。

ローカル&ディープな奥まで歩いてくる価値ありの名品です。

小さなお店の工房では今日も白い制服姿の職人さんたちが

練りたてのジーマミ―豆腐を羽窯から小さなカップに

ひとつひとつ丁寧にすくい入れています。

店先に出した小さなテーブルにはいつものマダムが

「はい、いらっしゃいませ~!」とびきりの笑顔で迎えてくれる。

「あの、小さい方のカップを6個、ください」。

「はい、小6個ですね~、ちょっと持ってきてくれる~?」

マダムが店の奥に声をかけると、

美人のママによく似た若いイケメンが商品を持ってきた。

まだ10代か20歳そこそこか、慣れない手つきで袋詰めする彼をみつめ、

「息子なんですよ」マダムが嬉しそうに言った。

「まあ、いいですね~、母子でお店に立つなんて、素敵ですね~」。

毎年、このお店に通っていましたが、

こんなイケメン二代目がいるとは知らなかったわ、うふふ。

沖縄に恋して

沖縄のお気に入りを求めて

沖縄の市場に通い詰めて早6年。

時の流れと共に店じまいするところもあれば、

すくすく若い世代が育つ店もある。

那覇の市場で若い僕らの時代を予感する。

(写真は)

手搾りにこだわる「花商」。

イケメン息子君がお手伝い中。

まるでデザートのようなジーマミ―豆腐。

皇室の晩餐会から注文が入ったこともあるらしい。

花商を食べずしてジーマミ―豆腐は語れない。