絶滅危惧碗

そういえば、

気が付けば、

知らぬうちにそっと

姿を消してしまうかもしれない。

美しき絶滅危惧碗。

今日から弥生三月。

北国も日脚が伸びて・・・と、

うららか話をしたいところですが、

急速に発達した低気圧の影響で道内はこれから大荒れの予想。

今日から明日にかけて広範囲で暴風雪となる可能性があり、

気象台は「屋外での行動は危険で人命にかかわる恐れがある」と

外出は今日午前中に終えるよう呼び掛けています。

春の嵐には十分に警戒、ですね。

暴風雪警戒に東京五輪マスコット決定、

働き方改革法案から裁量制拡大の削除などなど

3月1日の朝刊を眺めていて、ある広告写真に目が留まりました。

やっぱりコレだわよね、お茶碗はこう持ってほしいものねぇ~。

「のりたま」でおなじみの丸美屋の全面広告で

「ごはんといっしょに、続いていく」というコピーと共に

ママ役の木村佳乃さんと二人の子役が微笑みながら

それぞれの手にのりたまごはんのお茶碗を持っています。

注目すべきはのりたま、ではなく、

3人のお茶碗の持ち方。

きちんと人差し指から小指でお茶碗の糸底を下から支え、

親指をお茶碗のふちにそっとかけています。

そうよ、そうよ、お茶碗は、こう持つのよねぇ。

理にかなった所作はやはり美しい。

今さら、お茶碗の持ち方になぜ感動したかというと、

小うるさい姑のようで誠に恐縮なのですが、

近頃どうにも気になるお茶碗の持ち方が散見されるのです。

外食先などで若い世代などを中心によく見かけるのが

お茶碗をコップのように横に持つスタイル。

糸底にはまったく触れず4本の指と親指で横持ちする持ち方、

けっこうな確率で発見することができます。

このコップ横持ちスタイルの変形ヴァリエーションとして、

コップ持ちをしながら人差し指だけお茶碗に触れず伸ばすタイプ、

さらにその人差し指をお茶碗のふちに引っ掛けてホールドする進化形も。

いずれも、お茶碗の糸底は、その存在すら認識されていません。

ある意味、下から支えずに、器用に持つものだなぁと感心しますが、

完全無視された糸底が、不憫でならない。

この現象、20代以下の若い世代だけかと思っていたら、

先日あるドラマの食事場面で主人公夫婦を演じる30代の俳優さんが

二人そろって、それは見事なコップ持ちで、ご飯を食べていました。

お洒落なインテリア、ランチョンマットも食器もいまどきな食卓で

美味しそうな和食の晩ごはんを仲良くコップ横持ちで食べている。

そのお茶碗の持ち方が気になって気になって、

ドラマの筋がまったく頭に入ってきませんでした(笑)。

そうか・・・30代にも拡大浸透中か・・・コップ横持ち派。

いつからだ、いったいいつから糸底を持たなくなってきたのか。

食生活の欧米化にともない白米を食べる頻度が減ってきたとか、

家族で食卓を共にする機会も減り次世代に継承されなくなってきたとか、

まあ、色々な理由が考えられますが、

ドラマの30代夫婦のコップ横持ちをガン見して、

はたと気づいたことがあります。

それは、二人が手にするお洒落なお茶碗。

いわゆるカフェ飯に使われていそうなオフホワイトのそれは

従来のご飯茶碗というよりもカフェオレボウルに近いフォルム。

ふっくらやや深めのそのお茶碗には、そもそも、糸底が、ない。

4本の指で下から支えようにも、支える糸底、高台が、ないのだ。

糸底がないからコップ横持ちになるのか?

いやコップ横持ちを前提に糸底がないデザインなのか?

糸底のある伝統的なご飯お茶碗は

もはや絶滅危惧碗となっていくのか・・・?

いやしかし、器を作る過程でろくろから切り離すときに糸を使うことから、

糸底と名付けられた器の底にある丸い支えには深い存在理由があります。

器を手に取って食べる日本の食習慣になくてはならないもの。

ご飯茶碗も汁椀も湯呑も中身が熱々でも

糸底があるから手に持つことができるのですから。

背筋をのばし、器を手に取って食事をする。

熱い器も糸底を指で支えることで持つことができる。

美しい日本の食習慣の所作は優れた実用性から生まれたもの。

お茶碗を美しく持つことは日本の食文化を下支えすることかも。

のりたまごはん食べる時も、糸底のこと、忘れないでね。

絶滅危惧碗を、守りましょう。

(写真は)

三月弥生。

我が家の豆雛さまもおでまし。

今日のおやつは桜餅、かな。