完璧な大福

青々として丸々として

それでいて

慎ましく美しい。

「檸檬」に負けない完璧さ。

初夏の大福に感服。

しばし和菓子で諸国漫遊。

夫が仕事帰りに立ち寄ったデパ地下で

日本全国の銘菓をセレクトして買ってきてくれました。

さすが北海道つぶあん党党首、グッジョブ(笑)。

いそいそと漆のお盆に勢ぞろいさせてヴィジュアル鑑賞。

う~ん、お茶の間にいながら甘い日本一周だ。

まずは初夏らしいお菓子から。

爽やかな緑が美しい「青梅大福」。

栃木県足利市の和楽互尊というお店の季節限定和菓子。

葉桜の札幌で足利の青梅大福を味わう午後のお茶時間。

なんと贅沢な、なんと風流な、デパ地下さん、ありがとう。

さっそく、いただきま~す。

まあ、なんて爽やかな青梅色の大福でしょう。

爽やかな薄緑色した求肥生地のもっちり&柔らかな食感、

上品な甘さの白餡に包まれた青梅の甘露煮の瑞々しいこと。

ほど良い甘さと清々しい青梅の香りがたまりません。

気さくな大福なのにその味わいは上生菓子のよう。

青梅は和菓子の意匠のなかでも

特に職人心をときめかせる存在らしい。

あんこ好きのバイブル「事典 和菓子の世界」をひもとくと

第2部「モチーフ編」の冒頭に登場するのが「青梅」。

生では酸っぱくてとても食べられない青梅を

お砂糖を入れてじっくり炊き上げた甘露煮は極上の製菓材料。

爽やかな香りと後味はこの季節によく似合います。

味も香りもさることながら

和菓子職人の心を魅了するのはその完璧な造形。

求肥や外郎の生地を薄緑に染め、白餡を包み、

青々と丸々とした青梅らしく筋を入れたり、くぼみをつけたり、

繊細な工夫を施した美しいお菓子が初夏の店先に並ぶのですが、

かの有名な京都の老舗「末富」のご主人山口富蔵氏の

こんな言葉が紹介されていました。

「写実的に作るものの中では最も優れたもの」。

青梅のシンプルなフォルムは作り手の創作意欲を刺激するらしく、

「梶井基次郎の『檸檬』に負けない存在感のあるものにしたい」と

心を込めて青梅のお菓子を作るのだそうです。

梶井基次郎の「檸檬」。

青年の得体のしれない憂鬱な感情や心象風景が一個のレモンを通して

空想的に描かれるあの小説の一節を思い出しました。

「レモンイエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたような」

「丈の詰まった紡錘形の格好」をした果物。

その重さは「すべての善いものすべての美しいものを

重量に換算してできた重さである」。

「檸檬」に負けない「青梅」を作りたい。

すべての善いもの、美しいものが凝縮された完璧な造形。

初夏の青梅は菓子職人を魅了してやまない。

ああ、この話を知ったのは

和楽互尊の「青梅大福」をぺろっと平らげた後だった(笑)。

もっとしみじみ、慈しみながら、いただくべきでした。

檸檬に負けない完璧な大福だったのね。

とはいえ、和菓子で文学散歩もまた楽し。

さあ、次はどんな甘い旅かしら?

(写真は)

栃木県足利市和楽互尊の「青梅大福」。

檸檬に負けない造形美の断面(笑)

ぷにぷにもっちりの求肥生地と

上品な白餡と爽やかな青梅の甘露煮と

清々しい初夏の三重奏。