しあわせの記憶
はじめて出会った
あのおやつ、
あのお菓子。
いくつになっても忘れない
しわせの記憶。
幼い頃にはじめて口にした
甘い記憶は忘れないもの。
作家の芦沢央さんにとっての特別なお菓子は
北海道の六花亭バターサンドだったと
朝刊の土曜版エッセイに書かれていました。
4歳のころ、三時のおやつとして出されたのが始まり。
「甘くてうっとりしするような味わいとほんの少しの甘酸っぱさと
苦みが混じったような不思議な香り」に魅せられたことを
鮮明に覚えているそうです。今思えばかなり贅沢な思い出ですが、
百貨店のバイヤーをしていた父親が北海道限定のお菓子を
本州で販売させてもらおうと足繁く通っていたからこそのことだったと、
大人になってから知ったそうです。
そんな「しあわせのはいけい」についての文章を読んで、
ふわぁ~っと様々な甘い記憶が蘇ってきました。
小さな頃に衝撃的な出会いをしたお菓子たち。
東京出張帰りに父が「これが日本一なんだ」と
鞄の中から大事そうに取り出した木箱入りの虎屋の羊羹。
それから、おそらく頂き物だった不思議な棹菓子。
口に入れる消えてしまう夢のような食感のお菓子が
富山銘菓の「月世界(つきせかい)」だと判明したのは
芦沢さん同様、大人になってからのことでした。
あまりにはかない食感に、あれはもしかして
本当に夢だったのかもと思っていたものです。
そして泉屋の缶入りクッキー、であります。
創業者の泉園子が夫婦で通っていた教会のアメリカ人宣教師の家庭で
出会ったホームメイドクッキーがきっかけで、
大正6年、海を渡って外国製のオーブンが泉家に届いたのが
日本発のクッキーの始まりでした。
14種類のクッキーが詰まった青い浮き輪マークの缶は
子供時代の甘い宝箱、宝石箱のように記憶の中に君臨しています。
泉屋のシンボルマークになっている
浮き輪型のクッキーも、小さなココア味も、ひし形のクルミ風味も
ちょっと苦みばしったチョコクッキーも生姜風味のフィンガークッキーも
どれも甲乙つけがたく、何を食べようか、いつも迷ったものですが、
一番好きだったのが、サクサク、というか、ザクザクした食感の
軽くて甘くて口に入れるとす~っと溶けていく、
長方形の上品なラスクのようなクッキー。
いつも一番最後にお楽しみで残しておいたものですが、
はたして、あれは、クッキーだったのか?
クッキーというにはあまりに軽く、小麦粉の存在を感じなかったなぁ。
で、今さらですが、調べてみましたよ。
あの長方形の名前は「サボイフィンガー」、でありました。
泉屋のHPによると
新鮮な卵を使ったスポンジケーキを
サックリした食感に焼き上げた優しい甘さのクッキー、だそうです。
そうか、スポンジケーキを二度焼きした、クッキーだったか。
スポンジケーキとラスクのハイブリッド系クッキー、
多分残ったケーキを美味しく食べる工夫で生まれたお菓子、かもね。
何故、サボイ、なのかまでは調べはついていませんが(笑)、
しあわせの記憶のひとつの名前が分かって、
なんとなく、すっきりしたような気もします。
う~ん、何だか無性に懐かしく、食べたくなってきたな~。
今度デパ地下で買ってこようかな。
軽くて甘い長方形。
秋は紅茶とクッキーがお似合い、よね。
(写真は)
今朝の明け方。
朝日と秋の雲がお洒落にコラボ。
美しいピンクとグレーの競演に
しばし見とれました。
一瞬の芸術。



