弥生をちこち

遠く近く

彼方此方

あちらと

こちらが集う

弥生をちこち。

白い桜のように三月の雪が降る朝。

弥生のなごり雪はけなげに降ってはかなく消える。

な~んて詩人になっているヒマはあまりなかった。

遠くで暮らす息子が1年ぶりの超短期帰省、

2月生まれの息子と3月生まれの私のバースデーも兼ねて

おかえりなさい&またね(笑)パーティーの準備があるし。

お買い物にもいかなくちゃね~。

弥生は「をちこち」の季節。

我が家のホワイトデーの定番、両口屋是清の和菓子、

昭和天皇ゆかりの「旅まくら」や「志なの路」をつまみながら

ふと、そんな言葉が浮かびました。

このお店に「をちこち」という名前の棹菓子があります。

お菓子ももちろん美味しいのですが、

菓銘がなんとも味わい深い。

「をちこち」とは万葉集にも登場する古語で

「遠く近く」「あちらこちら」「将来と現在」を意味し、

「彼方此方」「遠近」とも書きます。

三月旅立ちの季節にぴったりの言葉かもしれませんね。

学び舎から希望を胸にそれぞれが「をちこち」に巣立つ春。

それぞれの「をちこち」に思いを巡らす弥生三月。

遠く近く、あちらこちら、将来と現在。

幾つかの春が過ぎて、

見た目はあまり変わらないけれど(笑)

社会人として1年を過ごし、少し大人になった息子が帰ってきた。

遠い街から懐かしい故郷へつかの間の帰省。

我が家もをちこちの春、であります。

なんともゆかしい響きの「をちこち」。

万葉集ではどんな歌に使われているのでしょうか。

ちょっと気になって調べてみると、あ~ら、びっくり。

巻四(六七四)大伴坂上郎女(おほとものさかのうえのいらつめ)

「真玉付くをちこちかねて言はいへど逢ひて後こそ悔にはありと言へ」。

2首続けて詠んだ相聞歌の一つ・・・と聞けば、

なんとなく状況が察しられるかもしれません。

その意味は「美しい玉のような言葉を重ねて末永くと言うけれど

結ばれた後にこそ後悔はあると言いますよ」。

最初は美しい言葉で僕たちの愛は「をちこち」なんて言うけれどね、

心変わりしない?後悔させない?ほんと、信じて言いわけ?

これは、チャラ男くんなどには、なかなかコワい歌(笑)

まあ、相聞歌ですから、恋愛途上の駆け引きというか、

恋愛の形を取った戯れ歌ともとれるわけで、

本気で後朝(きぬぎぬ)に脅している歌ではなさそうですが、

「をちこち」という言葉、口説き文句には使用上要注意。

彼方此方まで愛せる人にだけ、用いましょう(笑)。

春三月。

別れと旅立ちと出会いが交差する季節。

「をちこち」の思い出を大切。

弥生をちこち。

(写真は)

2019ホワイトデー。

札幌ブラウニーと

両口屋是清セット。

をちこちは、ありません(笑)。