ノートルダムの桜

パリが燃えた。

世界が哀しみに沈んだ。

でも

大聖堂の焼け跡には

桜が咲いていた。

嘘でしょ・・・?

まさかの映像に思考がフリーズした。

ノートルダムが・・・燃えている。

真っ赤な炎に包まれた尖塔が・・・崩れた・・・。

パリの魂・・・パリの心臓・・・が炎上している。

神様は・・・どこにいるの・・・?

世界文化遺産のノートルダム大聖堂で

現地時間の昨日午後7時頃、火災が発生、8時間以上に渡って炎上。

大半の屋根の部分が焼失し、高さ96mの尖塔が焼け落ちました。

火の粉が降り注ぐ大聖堂の中央に白い十字架が浮かび上がる。

なんと傷ましい光景だろう・・・。

言葉がない。

パリの街のどこからでも見えるノートルダムは

フランス国民の心の拠り所。

革命でも戦争でも燃えなかったのに、

ずっと、いつも、永久に、そこにあるはずの象徴が炎に包まれている。

なすすべなく消火作業をみつめる多くの人々はスマホを向けるのではなく

ただ静かに手を取り合って讃美歌を歌い続けることを選んだ。

ただ祈り続けた。

17、8年前のパリ旅行で訪れた時、

壮麗な佇まい、薔薇窓の美しさなどに圧倒された記憶がありますが、

特に印象に残ったのは、ノートルダムの寛容さであります。

あれだけの歴史的、宗教的、文化的な価値がある世界遺産ですが、

入場料や拝観料はなし、誰でも無料で自由に大聖堂に入れるのです。

フランス国民でもカトリック教徒でもない東洋からの旅人にも

美しいノートルダムは大らかに両手を広げて迎えてくれた。

世界に開かれたノートルダムに

早くも世界中から支援の声が沸きあがっています。

法隆寺や金閣寺炎上の経験を持つ日本もお手伝いできることがあるはず。

自分には文化財や復旧工事の専門知識もないけれど、

遠い北の地から祈ることはできる。

今朝の中継映像ではようやく鎮火した後の

ノートルダムの全景が映し出されていました。

高い尖塔を失い、黒く焦げた薔薇窓が痛ましいファサード。

「白い貴婦人」と称された美しい大聖堂から

悲し気な啜り泣きが聞こえてきそうな気がした。

・・・と・・・その時、

モノクロームの視界に一瞬、鮮やかな色が映りこんだ。

大聖堂の手前に色濃いピンク色の花をつけた木がある。

・・・まさか・・・桜・・・?

そうです、そのまさかです。

ノートルダムの桜、です。

ノートルダム寺院の南側とセーヌ川にはさまれた

ジャン・ヴァントロワ公園の八重桜が満開になっていました。

実はノートルダムはパリの桜の名所のひとつ。

1884年に造られた公園には日本種の八重桜が植えられていて。

セーヌ川を行く観光船から眺める白い貴婦人の桜の競演は

春のパリの美しい風物詩となっているのでした。

雪が降ろうと、

凍える寒さにさらされようと

春になれば、桜は、必ず、美しい花を咲かせる。

大丈夫だ。世界中の人々が、白い貴婦人の復活を手助けする。

黒く煤けた大聖堂は、必ず蘇る。

ノートルダムの八重桜が教えてくれた。

桜は、必ず、咲く。

ノートルダムは、必ず、立ち直る。

(写真は)

札幌にも春が来た。

ジャンプ台の雪も消えた。

桜並木は小さな小さなつぼみをつけた。

遠い北の街で、ノートルダムを思う。