思い出みかん

お煮しめ、太巻き

甘納豆のお赤飯に

豚肉のすき焼き、

そして、

思い出みかん。

懐かしいおいしさに、心がほっと温かくなる。

朝刊にはさまっていたミニブックの特集「思い出の味」。

いももち汁やほっけ団子汁などの故郷ほっこり系から

スパゲッティナポリタンやマカロニグラタンなどの昭和の洋食系まで「

読者アンケートをもとにした数々のお料理が紹介されていました。

う~ん、どれも郷愁をそそりますねぇ。

甘納豆のお赤飯や太巻き寿司なんて

子どもの頃、実家の母がよく作ってくれましたっけ。

太巻きをお稲荷さんがみっちり詰まった大きなお重箱は

運動会も紅白帽とセットで記憶に刻まれています。

そうそう、名もなき「思い出の味」もいっぱいあるなぁ。

キャベツと油揚げの炒め煮とか、いんげんと豚肉と白滝の炒め煮とか、

セロリと人参と豚肉の炒め煮とか、なんか炒め煮ばっかりだけど(笑)

こうした特定の組み合わせのお惣菜は、特に教わったわけでもないのに、

娘の私も自然と作るようになり、我が家の定番になっています。

味のDNAはかくして受け継がれていくのでありましょう。

さらに、忘れられない「思い出の味」の風景があります。

本当に小さかった子供の頃の大晦日、

使い勝手の良くない昔の家の台所で

母は一生懸命、年越しのご馳走を作っていました。

奮発して子供たちが大好きな特大エビフライを揚げてくれて、

銘々の白いお皿に緑のパセリとともに横半分に切ったみかんを添えて

それは大事に大事に盛り付けてくれたのでした。

昭和のあの頃、レモンなんか手に入らなかった時代だったけれど、

「ハレ」の気持ちを身近なみかんで代用してくれた、

心尽くしの「思い出の味」の風景。

お皿を食卓に運ぶ途中、ぱかっと横に切られたみかんが

エビフライの横でゆらゆらと照れくさそうに揺れていた光景を

妙にはっきり、くっきり、覚えています。

まさか、みかんも、いきなり横半分に切腹されて(笑)、

こんな晴れがましい場に抜擢されるとは思ってなかっただろう。

思い出の味は、

人の数だけ、お皿の数だけ、愛の数だけ、無限にある。

なんでも手に入らなかったからこその、思い出みかん。

白いお皿に照れくさそうなみかん色が鮮やかだった。

昭和のエビフライにとって最高の付け合わせだ。

(写真は)

小粒で甘い

令和のみかん。

横半分に切腹は、

されない(笑)