シネマの歴史

はじめての

LPレコード

はじめての

サントラ盤

シネマの歴史

バレンタインが過ぎてお雛さまを飾る頃になると

話題になるのがアメリカ映画の祭典アカデミー賞であります。

今年も3月2日に華やかな第97回の授賞式が開催されますが、

朝刊土曜版に興味深い読者アンケートが載っていました。

「あなたの好きなアカデミー賞作品は何ですか?」

数々の名作の中から堂々1位に輝いたのは「サウンド・オブ・ミュージック」、

2位は「風と共に去りぬ」、3位「タイタニック」4位「ウエストサイド物語」

5位「ベン・ハー」という結果となりました。

いずれ劣らぬ歴史的超大作が並びましたが、

1位2位とも女性が主人公の作品がランクインしたのも印象的。

揺れ動く時代の波に抗いながら自分らしく生き抜く姿が共通していて

公開から半世紀以上経った今でも新鮮な感動を呼び起こす力があります。

特に1位の「サウンド・オブ・ミュージック」は思い出深く、

第37回(1965年)受賞のミュージカル映画の金字塔のような作品です。

母に連れられて映画館で観た時の記憶は今でもはっきり残っています。

主人公の見習い修道女マリアが緑の草原で美しく歌い上げる冒頭シーン、

「なんて、歌の上手いおねーさんだろう・・・」とびっくらこいた。

そして映画全編に登場する「ドレミの歌」や「私のお気に入り」、

「エーデルワイス」「すべての山に登れ」などなど名曲の数々に魅せられて

映画館を出た後もそれらの余韻がいつまでも続き夢心地だった。

多分、記憶に残る中で一番先に大好きになった映画だろう。

ゆえに「サウンド・オブ・ミュージック」は

私の人生で初めて買ったLPレコードとなったのであります。

自分のお小遣いで買ったのか親が買ってくれたのか、

予算の出所は覚えていませんが(笑)、

人生初の自分だけのレコードはこの映画のサントラ盤なのでした。

何度も聴いたな~、小さなプレイヤーで。

マリア役のJ・アンドリュースのあまりに美しい歌声に没入し、

歌詞カードを見ながらテキトーな(笑)英語で声を合わせて歌い、

なんだか自分も天才的に歌がうまくなったような幻想に浸っていたなぁ。

しかし、1965年公開の「サウンド・オブ・ミュージック」、

私が室蘭の映画館で観た時はまだ小学生で、

その素晴らしい映像や楽曲に魅せられながら

当時はストーリーの進行に理解が追いつかない箇所が多々ありました。

物語は1938年、第二次世界大戦直前のオーストリア。第一次世界大戦後、

中世から650年以上続いたハプスブルク家による帝国が崩壊、

革命によって第一共和国が樹立した時代、マリアが妻を亡くし7人の子どもを

育てていたトラップ大佐の邸宅で家庭教師として修道院からやってきます。

大佐の軍隊式教育でカチコチだった子どもたちは愛情深いマリアの歌によって

心を開き、やがて大佐も彼女と気持ちが通じ合い、結婚式を挙げますが

幸せもつかの間、一家は激動の時代の波に飲み込まれていくのです。

当時、子どもだった私は、なんか急に終盤に映画のトーンが暗くなって

なんだかけわけがわからなくて、戸惑い不安になったのでした。

大佐は深刻な表情、とにかく家を出て山を超えなきゃいけないらしい。

なんで?何が起きたの?当時はよくわからなかったけれど、

トラップファミリーは歴史上の転換期となる激動の時代にあったのです。

第二次大戦直前、オーストリアはナチスドイツに併合され「第三帝国」が成立、

反ナチス派だった大佐は召集令状に背き、愛する家族と生きるため、

一家でアルプスを越えスイスへ亡命することを決心したのでした。

ハプスブルク家の終焉、オーストリア第一共和国成立、ナチスドイツの台頭、

第三帝国誕生、世界中を戦火に巻き込んだ第二次世界大戦へ。

美しい緑の草原から始まったミュージカル不朽の名作は

世界の近現代史の大きな転換期を描いた映画でもあったのです。

さらに7人の子育てをしていたシングルファザーとしての大佐、

修道院という閉ざされた世界から恋を知り家族を持ち

やがて亡命を決意するマリアという一人の女性のライフストーリー、

7人の子どもたちのそれぞれの個性、その選択などなど

公開から60年経った現在の視点からも実に示唆に富んだ作品と言えます。

はじめてのLPレコード

はじめてのサントラ

美しい映像と楽曲だけが魅力ではなかった

半世紀経ってもなお色褪せないシネマの歴史がある

(写真は)

アルプスの山を越え

新しい人生へ踏み出したマリア

「すべての山に登れ」

モンブランも山の名前