春なのに
音の春だ。
窓の外から除雪機が空き地に積もった雪をかきだす音がごぉーごぉーと聞こえる。
カツンカツンと雪割をする音、ポツポツ、ピシャピシャと屋根の雪が解けて流れる音。
光の春から音の春へと移ろう札幌の空を見上げる。

少し物憂げな曇り空が広がる朝。
この空は、中東までもつながっている。
春を待つ週末、テレビ画面に突如ニュース速報が流れた。
「アメリカとイスラエルがイランへの攻撃を開始」
え?・・・どういうこと?・・・?
アメリカとイランは核協議続行していたよね?
3回目の協議後、3月2日にもIAEA交えて実務者協議を始める予定とニュースで言っていたよね?
戸惑いながら、各局のニュース番組を息をのんで見つめることになった。
春なのに。春を待つ柔らかな気持ちが吹っ飛んだ。
アメリカ東部時間の2月28日午前1時頃、日本時間の午後3時頃、アメリカとイスラエルが軍事作戦を開始、
イランを武力攻撃、首都テヘランなど全31州のうち24州が被害を受け、イランは湾岸諸国の米軍基地に報復攻撃を開始、
イラン全土、湾岸諸国のあちらこちらでミサイルやドローン攻撃による爆発、黒煙が上がる映像が画面に映し出される。
つまり、「戦争」が始まってしまった。
イランの最高指導者ハメネイ師が殺害され、1979年のイラン革命以来の重大局面となりました。
トランプ大統領は「史上最も邪悪な人物の一人」と非難、「イラン国民が自国を取り戻す最大の機会だ」と
体制転換を意図していますが、一方的な武力による主権侵害行為は国際法違反であり、
アメリカの議会も承認しておらず、戦後に築かれた法による国際秩序がまたも大きく揺らいでいます。
攻撃開始直後は空に黒煙が上がる遠い映像でしたが、徐々に入ってくる地上の映像に慄然とした。
イランの学校もミサイルの直撃を受け、100人以上の子どもたちが犠牲になったという。
報復攻撃を受けた湾岸諸国でも被害が出ている。ホルムズ海峡は航行停止となり、
石油の9割を中東に依存する日本にとっても重大な事態です。
決して遠い国の出来事ではないんだ。
3月の曇り空を見ながら思った。
この空は中東につながっている。
そうなのだ、中東は、近い国々なのです。
今回の攻撃で世界と中東を結ぶ航空路線も影響を受けました。
成田空港で中東経由でヨーロッパへの卒業旅行に出発予定だった大学生が欠航で茫然としていました。
カタールのドーハや世界最大のハブ空港であるドバイはアジアと欧州路線を結ぶ重要な拠点となっており、
つまり、日本から見ると、中東はヨーロッパよりも地理的にずっと近いのです。
以前、エジプトへ行った時、カイロへ向かう機内のモニター画面で
地図上を飛行機のマークが航路を進む様子をず~っと眺めていたのですが、
日本を出て、中国、中央アジア、延々と続く広大なゴビ砂漠の上空を通過すると、
もう、すぐにアフガニスタン、イラン、アラビア半島などの中東に到達するのです。
感覚的に身近なヨーロッパはさらにその先にあり、
中東は地理的にはヨーロッパよりもずっとずっと近いことを改めて実感しました。
中東情勢は歴史的にも複雑で多様な民族、宗教があり、どこか「遠い国」と思いがちですが、
地理的にもイギリスやフランスよりずっと近い、石油の9割を頼っている、
つまり、とても「近い国」なのです。
軍事攻撃が続く中東。
黒煙が上がる空の青さが、辛い。
遠い国の出来事じゃない。
ニュースから目が離せない。
春なのに。

3月の空。
少しだけ青空がのぞいた。
希望に見えた。


