やさしい言葉

いよいよ夏が遠ざかっていきます。
北海道は前線を伴った低気圧が発達しながら通過するため、
昨日から風や雨が強くなり、札幌も夜中に強い雨が降り、小雨模様の朝。
素早く動く分厚いグレーの雲の向こうに青空がわずかにのぞいています。


こういうお天気って、一番悩ましい。
さて、洗濯物を外干しできるか、できないか・・・?
お天気アプリで雨雲レーダーなど見ているうちに、あれよあれよ空が暗くなり雨が強くなってきた。
う~ん、今のところ、本日は部屋干しなり。

かと思えば、あらら、日が差してきましたよ。
移り気な初秋の空をチラ見しながら、朝刊に目を通す朝、ちょっと気になる記事がありました。
「『徘徊』『妄想』言葉が偏見強めていませんか」
認知症にまつわる言葉が先入観や偏見を強めているのではという指摘です。

北里大学北里研究所病院精神科部長の大石智さんは
医療や介護、家庭などケアの現場で聞かれる「ニンチ(認知)が入ってる」「〇〇妄想がある」などの言葉は、
認知症へのスティグマ(負の烙印・偏見)につながると問題提起をしています。
大石さんは診療の中で本人や家族にもケアする人にも、自分自身にも
そうした先入観があることが気になっていたといいます。

「〇〇さんはニンチっぽい」「ニンチが入っている」
ニンチとは認知症を省略した言葉で、使っている人に悪気はないけれど、
「もう、私たちとは違う世界に入っている」と蔑むようなニュアンスを感じてしまう。
言葉がスティグマを媒介し、さらに強めてしまう危惧があるのですね。

本人にも「認知症になったら終わり」という先入観があり、こうした言葉を聞くと
スティグマが強まり、不安が増し、心の重しになってしまうそうです。
「物盗られ妄想」や「徘徊」と言われる現象も本人の切実な心の動きなどその人なりの理由があっての行動で
単純に「妄想」「徘徊」と表現してよいのかとも指摘しています。

こうした言葉を言い換えることで本人の苦しみを理解することにつながる。
大石さんは病棟で「帰宅願望がひどいんです」と言われたら「家に帰りたいと落ち着かない様子になるんですか」、
「迷惑行為」と言われたら「まわりの人が嫌がることをしてしまうんですね」と言い換える表現を使って、
ケアの現場でコミュニケーションを続けているそうです。

言葉は、人を勇気づけることもあるけれど、人を傷つけることもある。
困ったことに、悪気なく、自覚なく、そうした言葉を日常的に使ってしまうリスクは誰にでもあると思います。
たとえば、「○○ファースト」。
「『○○ファースト』使い方再考を」。

同じ朝刊の読者欄にこんな投稿が載っていました。
「レディファースト」など相手を思いやる印象のある言葉だったが、
最近は「アメリカファースト」「日本人ファースト」などの「○○ファースト」には
尊重されるべきは自分だというような違和感を感じてしまうというのです。

なんか、わかる気がします。
「○○ファースト」と声高に言われると「○○」に属さない人はファーストしません、ファーストされませんと、
なんというか、区別、もっと言えば分断されているようなニュアンスを感じるのです。
社会の中でファーストされるべき人間を選別しているような、そんな寂しさを感じる。

「○○ファースト」のファーストは英語由来ですが、
そうだ、英語には、こんな言葉もあるではありませんか。
「アフター・ユー(After you)」
ドアの開閉やエレベーターの乗り降りの際に使われるやさしい言葉。

直訳すると「あなたの後で」、つまり「お先にどうぞ」。
相手を思いやり、尊重する、とても素敵な英語表現です。
「After you」と言われたら、「Thank you」または「No,After you(いいえ、あなかからどうぞ」と返す。
さらに「Please go first」という丁寧な表現もあるようです。

同じ「first」でも、全然ニュアンスが違って聞こえます。
自分本位か、相手を思いやるかで、言葉は武器にも救いにもなる。
日本語の「お先にどうぞ」も素敵な言葉だと思う。
ドアの前で、エレベーターで、今日もやさしい言葉が聞かれますように。


週末の夏仕舞いのインド料理ランチ。
夏の疲れを癒すビタミンB補給。カリカリのローストポーク。
豚さんだけに「ビタミンぶー、だね」と夫が言った。
座布団、3枚(笑)