郷愁のオノマトペ
秋の雨がザーザー降る。
落ち葉がハラハラと散る。
雪がしんしんと降る。
季節をあらわす豊かなオノマトペです。
日本語にはほかの言語に比べて擬音語、擬声語、擬態語であるオノマトペが多いとされ、
四季折々の季節の移ろい、細やかな心情、心象風景など微妙な違いを言い表すために
表現応力の高い言語が発達したともいわれますが、沖縄の言葉もまたオノマトペ天国だと思います。
たとえば「にんじんしりしり」。

にんじんを「しりしり」する沖縄料理。
「しりしり」とは沖縄の言葉で「すりすり=すりおろす動作」を表す言葉で、つまりオノマトペね、
専用の「しりしり器」という大きな木製のおろし金をつかって、しりしりします。
沖縄の荒物屋さんで仕入れたコレね。

ふつうのおろし金とは明らかに違う形状。
おろす口金の部分が大きめで、ちょっとパイプオルガンにも似ている(笑)
このしりしり器でにんじんをしりしり、しりしりすると・・・

こうなります。
ね?独特の絶妙な「しりしり」加減になるのですよ。
少し粗めにしりしりされたにんじんを炒めて、ツナを加えて、基本的には塩、お好みで醤油をひとたらし、
最後に溶き卵を加えてざざっと炒め合わせたら、沖縄料理の定番「にんじんしりしり」の出来上がり♪

我が家の定番でもある「にんじんしりしり」。
これはにんじんが主役の、にんじんを最も美味しく食べられるお料理だと思う。
しりしり器でおろしたにんじんは火が通りやすく、ツナの旨みや塩味がよく沁み込み、
卵でまとめることでまろやかになり、にんじん独特の風味も適度に抑えられ、
にんじんが苦手な子どもたちでも食べられる、超すぐれもののにんじん料理なのです。
沖縄では「にんじんしりしりー」と伸ばして発音されるようですが、
「しりしり」って響き、めちゃキュートで愛らしいオノマトペだと思います。
沖縄のオノマトペはリズミカルでついつい口にしたくなる魅力があります。
「アチコーコー(熱々)」とか「チムドンドン(胸がドキドキする)」とか
そうそう「なだそうそう」も涙がほろほろこぼれるという意味のオノマトペといえます。
「アチコーコー=熱々」がよく使われるのは、お豆腐。
沖縄の島豆腐は昔からできたてアチコーコーの状態で売られているもので、
本土のように水に放した冷たいものではありませんでした。1972年の本土復帰で食品衛生法が適用され、
アチコーコーの販売方法が困難になりましたが、沖縄の独自の食文化を守ろうと国へ熱心な陳情を繰り返し、
1974年に水さらしをしない販売方法が例外的に認められたという歴史があります。
オノマトペはその土地の人々が大切にしてきた文化や歴史を物語る音なのかもしれません。
そういえば、ふと思い出しました。
亡き父は雪が静かにどんどん降り積もると、よくこう言ってました。
「おお、雪が、のっつのっつと降ってる」
雪がのっつのっつと降る。
まわりの誰からもそんなオノマトペは聞いたことがなかったので、長らく父のオリジナルかと思っていましたが、
今改めて調べてみると、「のっつのっつ」は青森や岩手などの東北地方で雪が重そうに降る様子を表す方言らしい。
確かに父方のルーツは青森県でありました。
ふわふわでもなく、しんしんでもなく、
のっつのっつと降る雪はいかにも重そうで、長い冬を耐える人々の心象風景も伝わってくる。
しりしりやアチコーコーにも、沖縄の歴史と文化と暮らしがしのばれる。
郷愁のオノマトペは心に沁みる。
★★★本日9月30日(水)HBC「今日ドキッ!」にコメンテーターとして出演させていただきます。
どんな話題に出会えるのか、今日もわくわくドキドキで行ってきまーす!


