お盆と海

お盆です。円山のセミの鳴き声も心に染み入ります。
お空の上から懐かしい人、会いたかった人たちが帰ってきました。
お花やお菓子や果物を用意しましたよ。
ゆっくりご滞在くださいね。


ご近所の花屋さんの店先もお盆ヴァージョンになっています。
色とりどりのピンポンマムやリンドウ、白百合などなどが美しい。
ご先祖さまは、あの人は、あの方は、どんなお花が好きだったかしらと選ぶのもまた嬉しいもの。
お盆はお空の上からの帰省シーズン、あれこれおもてなししたくなりますね。


花屋さんの店先にあるPOPもまた素敵。
「OBON」。お盆をローマ字表記にするだけでなんかぐっとお洒落な雰囲気になりますね。
背景は胡瓜の馬と茄子の牛のイラストが描かれています。
お盆の時期にご先祖様をお迎えする供物「精霊馬」です。

胡瓜や茄子に割り箸の足を指して作る「精霊馬」。
胡瓜の馬は足の速い馬に乗って早く家に帰ってこられるようにと願う「迎え馬」、
茄子の牛はゆっくりあの世で戻ってほしいと願う「送り牛」と呼ばれます。
この世とあの世をつなぐ人々の思いが込められていますね。

子どもの頃、お盆明けに父に連れられて、室蘭のイタンキ浜に精霊馬を流しに行ったことがあります。
お供物などを海や川に流して祖霊を送り出す昔ながらの儀礼の盆送りです。
その日のイタンキ浜は曇り空で室蘭特有の夏のガス(霧)がかかり、
大きな荒い波がどどーんと押し寄せていたことをくっきりと覚えています。

胡瓜の馬と茄子の牛さんやお花を海に流そうとすると、
ちっちゃな自分もイタンキの荒波に持っていかれそうで怖かった。
父にしがみつきながら、鉛色をした大波に精霊馬が飲み込まれていくのを見送りました。
お盆の海は、怖かった。

先日、コメンテーターとして出演させて頂いたHBC「今日ドキッ!」の報道特集「北海道と戦争」シリーズでは
1945年7月の室蘭艦砲射撃を記録した新たなアメリカの映像と音声が放送されました。
その日、米艦隊から室蘭の街は暑い雲やガスがかかり視認ができないまま、1時間に渡って攻撃が続いたこと、
日本からの反撃はほとんどなかったこと、軍需工場を狙った砲撃は市街地に着弾し多くの民間人の犠牲が出たこと。
戦争末期の実相が記録から浮かび上がってきました。

「イタンキ浜でね、毎日のように亡くなった人たちが荼毘に付されていました」。
VTRの中には当時を知る市民の証言がありました。
イタンキ浜では強制連行による犠牲者のご遺骨が戦後、多数発掘され、慰霊碑も建立されています。
あの海は戦争末期の室蘭艦砲射撃を物語る歴史の証人でもあるのです。

高校のグラウンドから道路1本はさんだ向こうにあったイタンキ浜。
広大な太平洋が広がる浜は夏の晴天時は青く輝き、友と過ごした青春の思い出の場所でもある。
一方で日本が無謀な戦いに突き進んだ太平洋戦争を見つめ続けていた海だった。
鉛色の大波に飲み込まれていった精霊馬の記憶と戦争がどこかでつながっていくような気がする。

今日は8月15日。
81回目の終戦記念日です。
終戦。戦争は本当に終わったのか。世界では今も戦争は続いている。
安全保障環境が厳しい国際情勢の中、平和主義なんて理想論だと言われることがある。

「理想」を捨てた先に、何が待っているのか。
「きれいごと、じゃない。きれいなことですよ」
選挙を描いた人間ドラマ「銀河の一票」の台詞がよみがえる。
8月15日。きれいなこと、理想を、思う。
あの夏のお盆のイタンキ浜を思い出す。