音の翼
空は青く、緑が輝き、風は薫り、
鳥が歌い、人が集い、舞台が始まる。
すべてが愛おしくなった。
音の翼。

昨日5月31日の日曜日、夏のような日差しに包まれた中島公園。
札幌コンサートホールKitaraで「雪の翼リサイタル」が行われました。
左手のフルーティスト畠中秀幸さんとシンガーソングライター小川紗綾佳さんによる音楽ユニット「雪の翼」。
建築家・音楽家である畠中さんの人生は今年HBC制作TBSドキュメンタリー映画祭「矛盾に抱かれて」でも描かれています。
広島県生まれの畠中さんは京都大学工学部建築学科大学院修了後、建築家として数々の建築賞を受賞する一方、
北海道吹奏楽プロジェクト設立など音楽家として幅広い活動を続けていたさ中、2011年に脳卒中を患います。
手や肺などの右半身の機能を失いながらも建築家・左手フルーティスト、指揮者として活躍中、
その姿はHBC「今日ドキッ!」の報道特集で何度も紹介されました。
そのご縁で今回の「雪の翼リサイタル」に伺わせていただいたのです。
「カッチーニのアヴェ・マリア」で始まったリサイタル。
もう最初の一音から心が揺さぶられました。
右の肺が機能しないので、左の肺にいっぱい空気を送り込んで演奏するため身体は右に傾く、
「僕の中に、右と左と、二つの僕がいて、対話しながら音を出しているんです。
元気な左が右をいじめると、フルートは吹けない」。
演奏の合間の畠中さんの言葉が沁みた。
畠中さんのフルートと小川さんのピアノ・マリンバ、奥様のさおりさんのクラリネット、
倒れる前からずっと吹奏楽仲間だったHBPアカデミーバンド、HBC少年少女合唱団シニアクラスの歌声。
そして会場を埋め尽くしたたくさんのお客さん、
みんなが、対話して、紡ぎあげた音がKitaraのホールを温かく包んでいた。
白い鳥が懸命に空をめざして羽ばたく。
時折疲れて羽を休める。さまざまな映像が心の中に投影された。
空、緑、花、海、森、人や生き物、地球のすべての存在と対話することで音は生まれる。
強い力でねじ伏せたり、他者を疎外する分断からは、音楽は生まれない。
なんだかね、すべてのものが、愛おしくなった。
キミはどうだい?ボクはこんなだよ。あなたはどう?私はこうよ。
ちがうからこそ、話したい。ちがうあなたを知りたい。
そんな力を与えてくれたリサイタルだった。
「音の翼」をもらった。

リサイタルの帰り道。
中島公園の藤棚、藤の花が満開だった。
青い空と緑と藤の花の紫と。
地球のすべてが、愛おしい。


